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エス・アンド・アイ 伊藤 英啓


 前回までに挙げてきたポイントが押さえられていれば,仮想化導入のための基本的な関門はクリアーしたと言える。実際に検討されている方も,改めて仮想化の導入をどういう方向に進めるべきか,問題点と課題が整理されたのではないだろうか。ここから先は,仮想化の導入までは決まったという前提で,より具体的な注意点を紹介する。

落とし穴4

サイジングで見切り発車をしないこと

 これまでに数多くの仮想化関連の案件を手掛けてきた中で,導入を成功させるために特に重要と感じているのが仮想化システムの「サイジング」である。本来,仮想化に際して実際に必要なハードウエアやネットワークなどのインフラをサイジングすることは必要不可欠なプロセスであり,実施して当然だと思うだろう。仮想化導入計画の妥当性を検証するには,ディスクやネットワークといった基本的なI/Oの状況,CPUの使用率やシステム稼働のピークなど,システム全体を精査してみなければ分からないからだ。

 しかし,仮想化の導入においてはサイジングの手法が十分に確立しておらず,実際には簡略化されてしまうことが多い。このため,現状の運用状況の把握すらできていないユーザー企業も見受けられる。ここで“見切り発車”してしまうと,後工程で大きな手戻りが発生するか,要件を満たせないシステムを生み出しまう。

 仮に見切り発車したとしても,段階的に仮想化を導入して様子を見ることができればよい。だが,さまざまな事情により,そうできないことが往々にしてある。

 適切なサイジングをするためには,きちんと現状調査とアセスメントを実施するのが最も近道である。ユーザー企業の要望と実際の計画や製品・技術が合致しているか,潜在的なリスクはないか,などの調査・評価を通じて,計画の妥当性を検証する。

 このプロセスの進め方にはさまざまな方法があるだろうが,私たちが手掛けているアセスメント・サービスでは2週間ほどの詳細な調査を実施している(図2)。事前のヒアリングに始まり,実際のシステム環境でVMware Capacity PlannerやIBM CDAT(Consolidation Discovery and Analysis Toolset)などの専用アセスメント・ツールを使って現状を把握・分析する。その結果,当初の計画を大幅に見直さざるを得ないケースもあったが,案件全体の作業期間から見れば最小限の手戻りで抑えられた。

図1●仮想化の導入時に不可欠なアセスメント・プロセスの例
図1●仮想化の導入時に不可欠なアセスメント・プロセスの例
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落とし穴5

簡単すぎて油断するゲストOS環境設定

 仮想環境におけるゲストOSの作成は,ある意味,仮想化導入作業の中で最も簡単に済ませられる作業の1つかもしれない。なぜなら,ゲストOSのテンプレートを1つ作成すれば,あとはコピーするだけで,仮想環境上に複数のシステムを簡単に作れるからだ。ゲストOSの環境設定は基本的に何もしなくてよい。

 だが,簡単すぎて安易にゲストOSを作成すると,仮想化の特徴である「リソースの拡張性や構成変更に対する柔軟性の高さ」を損なうことがある。最も顕著な例としては,仮想環境側のディスク領域を安易に設定してしまうことが挙げられる。仮想化ソフトによっては,1つの仮想ディスクでゲストOSが複数ボリュームを使う場合,ボリューム容量の増減や増設などを構築後に変えられない場合がある。その後の運用でディスク領域が不足したら,手間をかけて環境を再構築しなければならない(図2)。

図2●ディスクを増設しても,特定ドライブ領域を拡張できない
図2●ディスクを増設しても,特定ドライブ領域を拡張できない
1つのディスク上に複数のドライブを連続して定義すると,後で領域を拡張できないドライブがある。各ドライブを別々の「仮想ディスク」上に定義すれば,どのドライブも拡張できるようになる。
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 設計・導入段階でこの制約を考慮したキャパシティ・プランニングと環境設定をしておけば,ゲストOSが使うボリュームごとに適切な仮想ディスク領域を確保できる。簡単なようだが,こうした問題を避けて設計するには,導入する仮想化ソフトの設定や運用手法の“実際のところ”について,ノウハウが必要になる。仮想化ソフトのデフォルト設定でも“とりあえず動く”セットアップは可能だが,後々の運用コストに大きな差が出る可能性があることを覚えておきたい。

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