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アクセンチュア 代表取締役社長兼通信・ハイテク本部統括本部長 程 近智氏
アクセンチュア
代表取締役社長兼通信・ハイテク本部統括本部長
程 近智氏

 日本社会は労働人口の減少や高齢化など大きな転機を迎えているが、世界ではもっと大きな変化が起きている。過去50年間が日米欧の3極を中心としたグローバリゼーションの時代とすれば、今後50年は「多極化した世界」の時代と言える。

 特にエマージングカントリー(新興国)の躍進が著しい。世界のGDP(国内総生産)の過半を占めるようになり、世界の購買パワーの主役を担う時代が到来する。

 この多極化した世界の出現を主導するのが、情報・通信技術の急速な進化、規制緩和政策の高まり、多国籍企業のグローバル化の拡大という3つのトレンドである。これまでは先進国から新興国に人・モノ・金を一方向に供給していたが、多極化した世界では先進国と新興国、新興国同士が相互供給・相互依存の深い関係となる。

 「多極化した世界」の潮流は、5つの軸でとらえることができる。日本企業は、この潮流に乗れば持続的成長が可能だが、逆に一つでも欠けると成長は難しくなるだろう。

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人材・資本・資源はグローバルな獲得合戦へ

 第1の潮流は「優秀な人材の獲得合戦」である。2050年までに輩出されてくる労働人口の97%は発展途上国が占める。新興国の大卒労働者が現在3300万人であるのに対し、先進国の大卒労働力は1400万人。新興国のグローバル人材を巡る争いが激化する中で、日本企業は、単純な労働力の確保にとどまらず、世界のトップクラスの優秀な人材の確保を考える必要がある。そのためには、企業内のカルチャーを維持しながら、地域を越えたスキルによる人材の組織化や、地域の特性に応じた人事政策などのマネジメントが重要だ。

 第2の潮流は「資本の新たな流れ」である。新興国のグローバル企業が資本力を増大させるにつれ、先進国市場のグローバル企業との間で資本の取り合いが激化する。このとき、税制など資本市場の開放度が国の魅力・競争力を決定する大きな要因となる。

 第3は「資源を巡る争い」。2005年までの10年間で世界のエネルギー消費は23%伸びたが、うち85%は発展途上国による増加分だった。エネルギー効率が非常にいい日本は、それを切り札に、多種多様なエネルギーで勝ち馬に乗る手段を講じる必要がある。

新興国に新しい消費者イノベーションも多極化

 第4の潮流は「新しい消費者の誕生」だ。新興国の消費が爆発的に伸び、全く新しい価値観で物を買う「新しい消費者」が誕生する。日本企業は、価格が重要な低所得者向けと、優良ブランドの獲得など高所得者向けの2つを両立させ、新たな生産体制、商品開発のライフサイクル、サプライチェーンを構築していくことがカギとなる。

 第5の潮流は「新興イノベーション勢力の出現」である。多極化した世界では、国単位ではなく、さまざまな極で多くのクラスターが生まれ、それぞれが役割を持って競争・協調する。クラスター化に伴いイノベーションの新興勢力が出現する中で、日本企業もクラスターをつくり、世界の1つの極として活用される発想が必要だ。クラスターをうまく使いこなして企業活動を高めなければならない。

ITでは事業との融合や柔軟なガバナンスがカギ

 では、ITの観点ではこうした潮流にどのように乗っていけばいいのか。

 1つは、ビジネスとITをダイナミックに融合させること。企業活動では、地球規模で起きるバリューチェーンのリバランシング、つまり役割分担のダイナミックな変化をITが下支えする。そこでは日本企業は、生産性向上へのITの寄与やIT投資と経営目標の整合性といった、米国企業とのギャップが大きい点を改善していく必要がある。

 2つめは、柔軟かつ強固なITガバナンスである。業界や自社の変化のスピード、競争優位の源泉など、状況に応じてガバナンスの型を変化させることが求められる。日本企業では、戦略分野への投資、過去のシステムの統一・標準化、IT部門によるITインフラ予算の集中管理が課題となる。

 3つめは、IT人材ポートフォリオの再構築だ。IT人材ポートフォリオには3段階ある。第1段階はコスト最適化を目的としたオフショア化。第2段階はスキル蓄積のためのセンター・オブ・エクセレンス化(特技を持った海外拠点の設置)。第3段階は、コスト/スキルの最適化を目指しオフショア間で相乗効果を生み出すこと。IT人材は非常に不足しており、人材ポートフォリオの再構築は急務である。

 多極化は10年、20年と続いていく。前述した5つの軸に対して企業競争力を持続させる観点からITの活用策を考えていただきたい。