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いったん提案書を渡すと、見知らぬ人にも読まれてしまう。面識がある顧客は提案内容を中心に読んでくれるが、そうでない顧客は営業担当者の人となりまで勝手に判断しがち。場合によっては、これがマイナスに働くこともある。今回は見知らぬ顧客からも信頼を勝ち取る秘訣を紹介する。

 提案書を渡して口頭で説明した時、お客様が怪訝な顔をすれば、再度、繰り返すことで、お客様の理解度を格段に高めることができます。それにひきかえ、口頭で説明するチャンスがないお客様は提案内容の良しあしを提案書だけで判断します。お客様が抱えている課題、それに対する解決策、改善策のヒントとなる要素がない提案書や、単にシステムの機能紹介にとどまったりしている提案書であれば、お客様は「このソリューションプロバイダに任せてよいだろうか」と不安感を抱きます。

営業担当者の人となりも判断する顧客

 お客様が開発パートナーを選定する際に判断材料とするのは提案内容だけではありません。面識があるお客様は営業担当者の人となりを知っているので、これまでの付き合いから「彼に任せても大丈夫だ」という信頼感を持っています。しかし、営業担当者と面識がないお客様は提案書だけから人となりを判断してしまうことがあるので、信頼感を得られないような提案書を提出すると、取り返しがつかないことになります。

 現在、私は営業担当者やシステムエンジニア(SE)を対象に提案力の向上を目指した勉強会を開いています。参加者が作成した提案書の感想をよく求められますが、その象徴的な事例として次ページにある改善前の提案書を作成してみました。デザインの好き嫌いは別として、何か気付いたところはないでしょうか。

図●提案書
図●提案書
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 改善前の提案書で最も気になるのは、右下にある営業担当者の所属部署、氏名の並び方です。私なら左か右のどちらかのラインをそろえるようにします。理由はきっちり仕事をするという安心感を伝えたいからです。改善前のものは字が雑然と並んでいるため心理的に不安を与える可能性があります。

 提案書で最も大切なのは内容ですから、ラインをそろえるのは些細なことだと反論する方もいるでしょう。その気持ちは理解できます。確かに仕事を発注してくれたことがあるお客様なら「この営業担当者は大ざっぱな性格だけど、ここぞという時に徹夜も厭わずやってくれる」などと評価してくれているので、ラインの不ぞろいに目くじらを立てることはないでしょう。

 しかし、面識がないお客様だと話は違います。神経が細やかなお客様だと「この営業担当者はいい加減なヤツに違いない。このプロジェクトを任せても大丈夫だろうか」という不安感を抱くに違いありません。そうなると、どれだけ提案内容が良くても受注に失敗してしまう可能性が大きくなってしまいます。

 営業担当者と面識がないお客様は提案書だけを読んであれこれ考えます。提案内容の良しあしだけでなく、仕事に対する営業担当者の姿勢なども勝手に判断することがよくあるのです。提案書を作成する際、最大限、神経を使わなければならない理由がここにあります。

 改善前の提案書をもう一度ご覧ください。修正したほうがよいと思うのはラインの不ぞろいだけではありません。私なら担当者の氏名が営業担当者1人であることも気になります。これではお客様はソリューションプロバイダの意気込みを感じません。

 幸い、提案書を渡した時にお客様から指摘を受ければ、「御社を担当する営業担当者の氏名だけを記載しました。もちろん、プロジェクトがスタートすれば、プロジェクトマネジャー(PM)やSEを中心に万全の態勢で臨みます」と説明し、理解を得ることはできるでしょう。しかし、決定権を握っているお客様にまで口頭で説明した内容が伝わる保証はありません。ですから、私ならチームで対応することをさりげなく示すために「事業支援プロジェクト」という言葉を入れ、PMとSEなどの氏名も記載します。

 提案書にお客様が想像を膨らます余地を残すべきではありません。お客様が悪く解釈すれば、受注できる可能性が低くなります。反対に、良く解釈してくれたおかげで、受注できることもあるでしょう。しかし、受注にこぎ着けても、プロジェクトがスタートすると、過大な期待を抱いたお客様から「話が違うじゃないか」というお叱りの言葉を受けます。長い目で見ると、やはり営業活動にはマイナスです。

串戸 一浩 アイル ソリューション本部長
専門商社で海外向けマーケティング業務を担当。97年4月に中堅ソフト会社に転職し、大手鉄道会社や流通会社などにソリューションを提案、そのうち9割近くを受注。現在、アイルで人材開発ソリューションに注力