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 米国政府といくつかの州を相手とする,Microsoftの反トラスト法をめぐる歴史的な戦いは,ソフトウエア界の巨人の決定的な勝利で幕を閉じた,というのが一般的な認識である。2002年の和解は,Microsoftにとって有利なもので,同訴訟の和解命令で要求された事柄の中に,重要なものはほとんどなかったようである。しかし,この戦いの結果,Microsoftが別の会社に生まれ変わったことは,今でははっきりしている。そして,近年における同社の,昔よりも親切で優しい姿は,先述した訴訟の和解が期待通りの成果を上げていることを示唆している。

 最近では,Windows Vistaがそのことを示すわかりやすい例だ。2006年に同OSが完成する前の数カ月間,Microsoftは裁判所から要求されたわけでもないのに,多くの点でライバルたちに譲歩した。こうした傾向に関して驚かされるのは,Microsoftが今日でも,Vistaに関して譲歩し続けているということだ。つい先日も,同社はインターネット検索界の巨人Googleの不満を鎮めるために,VistaのSP1アップデートでInstant Search機能に変更を加えることに合意した。MicrosoftがVista SP1でInstant Search機能に加える変更について,知っておくべきことを以下に紹介する。

Googleの訴え


 Googleは2004年10月に,同社のデスクトップ検索製品であるGoogle Desktop Search (GDS)の最初のベータ版リリースを発表した。それは,2003年のProfessional Developer Conferenceで,MicrosoftがVistaにInstant Searchを組み込む考えを明らかにしてから約1年後のことだった。

 Google Desktop Searchは,インターネットの世界におけるGoogleの人気をPCデスクトップにまで拡大して,ローカル・ファイル検索でもGoogleのインターネット検索のような体験を提供するために設計された (Googleはつい最近,Google Desktop SearchのMac OS XとLinux向けのバージョンを,それぞれ出荷したところだ)。その一方で,他の多くの企業も,同様のデスクトップ検索製品を出荷した。Mac OS X 10.4に搭載されているAppleのSpotlight機能は,おそらくその中でも最もよく知られているものの一つだろう。Microsoftまでもが,この競争に参戦した。Vistaが繰り返し延期されたため,同社はWindows XP向けにWindows Desktop Searchと呼ばれる無料のインスタント検索アドオンを出荷したのである。

 2006年11月にMicrosoftがVistaを完成させてから1カ月後,GoogleはInstant Search機能に関して,米司法省(DOJ)に不満を訴えた。この訴えで興味深いのは,DOJがその事実を公にせず,(非常に憂慮すべきことに)反トラスト法訴訟でMicrosoftと争っている米国諸州に対して,その訴えを無視するように強制しようとしたことだ。結局,諸州はこの要請に反発した。この訴えには意義があり,Microsoftはまたしても常套手段を駆使しようとしている,と判断したからである。Googleの訴えは,2006年中期に公開されていた。

 なぜDOJは,Googleの訴えをもみ消そうとしたのだろうか? 今日のDOJは,1990年代にMicrosoftを訴えたクリントン政権の頃の組織とは全く違う,ということを思い出してほしい。今日のDOJは企業寄りで,Microsoftは米国の輝かしいサクセス・ストーリーの一つとみなされている。特に,Microsoftの共同設立者であるBill Gates氏が行っている慈善活動は,その大きな要因だ。Googleの訴えには意義があると感じた諸州,そして何人かの州検事総長は,DOJが彼らに加勢しなくても,自分たちだけでMicrosoftと戦う覚悟でいた。反乱に直面したDOJは方針を180度転換し,諸州と協力して,Googleの訴えに対応するようMicrosoftを説得することを約束したのである。

 Googleの訴えは,率直でわかりやすいものだ。Windowsにおけるデスクトップ検索機能は,Microsoftの和解命令が定義している他のミドルウエア(すなわち,メディア・プレーヤーや電子メール・クライアント,Webブラウザ,IMソリューションなどのアプリケーション)と同じように扱われるべきだ,と同社は考えているのである。消費者やPCメーカーが,Microsoftの内蔵アプリケーションの代わりにサードパーティのソリューションを使うことを認めるべきだ,というのがGoogleの主張だった。その変更を加えることで,ユーザーやPCメーカー,そしてサードパーティの開発者にあまねく利益をもたらす,今よりも自由競争的な環境が生まれるだろう,とGoogleは話している。

 さらにGoogleは,VistaのInstant Search機能はGoogle Desktop Searchのようなサードパーティのソリューションが,XPのときほど能率的に機能できないように設計されたものだ,とも指摘している。例えば,Instant Searchのインデックス作成機能は無効にすることができない。そして,Google Desktop Searchをインストールすると,二つのインデックス作成機能が同時に作動するため,システムのパフォーマンスが低下するのだ。XPのときは,Google Desktop Searchをスタート・メニューやWindows Explorerのウィンドウといった様々なUIポイントに統合することが可能だったが,Vistaではそれができなくなっている。Microsoftは競争相手に損害を与えるという明確な目的の下にVistaを開発した,とGoogleは語った。