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デビッド・E・ケプラー氏
デビッド・E・ケプラー氏
正式社名は「The Dow Chemical Company」。1897年に米国ミシガン州ミッドランドで創業。2006年の売上高は491億ドルで、高機能プラスチックなどを製造する世界最大級の化学メーカー。従業員数は約4万3000人。環境保護活動にも積極的に取り組んでおり、2015年までの10年間で同社のエネルギー消費量を25%削減するなどの目標を発表している。

 世界各地に多数の製造拠点や営業拠点を持つダウ・ケミカルだが、1990年代前半まではグローバルに全社を統括するIT(情報技術)リーダー職を設けておらず、各地にITリーダーを置いて自由にシステムを開発していた。95年から98年までは、私が全社のアプリケーションサービスの責任者となり、別の者が全社のネットワークやハードウエアの責任を担った。98年にこの2つの役割を統合してCIO(最高情報責任者)職を作り、私が就任した。背景には、当社が90年代にグローバルに様々な業務の生産性を高めることに注力して大々的な組織改革を断行し、様々な業務を標準化してきたという事情がある。グローバル戦略を推進する要素としてITの重要性が増したのだ。

 こうして私たちは、米国でも日本でもドイツでもブラジルでもどの地域の拠点でも、同じITのサービスとシステムを提供できるようにしてきた。同時に、競合他社よりもかなり早い段階から次々と新しい技術をグローバルに導入してきた。例えば95年には全社員のパソコンのOS(基本ソフト)をウィンドウズに統一した。最新のITを早期に導入することにはリスクもあるが、事前にサプライヤーと試験を何度も重ねることでリスクを回避できる。VoIP(ボイス・オーバー・アイピー。音声をIPネットワークでやり取りする技術)の導入に先立ち、通信機器大手の米シスコシステムズや米IBMと数年間にわたって試験をした。

 私は新技術の導入を恐れない。しかし、まずはダウ・ケミカルの一従業員という立場に自分を置いてみて、その新技術を導入したら組織や業務プロセスがどう変わり、会社の収入がどう増えるかをじっくり考えてみる。始めに技術ありきでものごとを考えてはいけないということだ。新技術を導入する価値をきちんと理解できれば、新技術を導入することに対するリスクは低減できる。


CIOとして25億ドル以上の効果を出した

 グローバルに様々な戦略を素早く実行できるようにするために、ウェブをベースとしたeラーニングシステム「Learn@dow.now」を99年に開発し、提供するトレーニング項目を充実させてきている。全世界の4万人以上の従業員が利用できる。例えば、シックスシグマ手法や職種に応じたスキルアップのためのトレーニングを受けられ、社員一人ひとりがどんなトレーニングを受ければどんなキャリアプランの可能性が開けるかが分かる。

 私はCIOという役割以外に、シェアードサービス責任者と、CSO(最高サステナビリティー責任者)を兼ねる。世界中の拠点に共通の社内サービスを提供するシェアードサービスの範囲は、顧客サービス、資材などの購入、サプライチェーン、シックスシグマ手法を用いた製品やサービスの品質改善活動、全社的な業務プロセス改善活動である。CSOとしては、当社が世の中とともに発展し続けられるよう、環境や社会、生活などにどう配慮するか考える。これだけ多数の業務を兼務しているのは、ダウ・ケミカルにおける30年以上の勤務経験があり様々な知識を持っているから。さらに、組織とITと業務プロセスの改革は同時に行ったほうが、得られる効果が大きいからだ。

 98年にCIOになって数年間がたつが、IT投資によって25億ドル以上の生産性向上やコスト削減などの効果を生み出してきた。CIOやIT部門の業績を測定可能にするのはとても大切なこと。社内で規定した独自基準と、調査会社による競合他社との比較によって、測定している。ITによる適切な業務の標準化や組織改革などのおかげで、化学業界でダウ・ケミカルの従業員1人当たりの収益はトップクラスにある。この10年間、当社の生産性は毎年8%以上ずつ向上してきているのだ。

 90年代の改革を経て、いまやIT部門はダウ・ケミカルにとって不可欠な部門。ITスタッフのモチベーションを維持向上させることはとても大切だ。CIOとしての私のビジョンは、ITを駆使して当社の収益性を高めること。ITスタッフたちがこのビジョンをしっかり理解していれば、企業価値を高めようと挑むはず。そして実際に企業価値を高める活動をすれば、IT部門は他部門からコストセンターとして見られるのではなく、価値を生み出す部門と見てもらえる。それがITスタッフのモチベーションにつながる。

デビッド・E・ケプラー氏 米ダウ・ケミカル上級副社長、CIO、CSO兼 シェアードサービス担当
1975年に米ダウ・ケミカルに入社以降、米国やカナダなどで多様なIT業務を経験。98年2月に副社長に昇格すると同時に、同社初のCIO(最高情報責任者)に就任。2004年1月からシェアードサービス責任者を兼務。2006年3月に上級副社長となり、CSO(最高サステナビリティー責任者)も担当。