PR

 「Excelを企業の情報システム基盤として使いこなせない情報システム部門やITベンダーはSOA(サービス指向アーキテクチャ)も使いこなせない」。

 この一文を見たITの専門家で、「Excelとあるのは誤り、正しくはUMLかBPMあるいはJavaや.NETだろう」と思った方は多いのではないか。しかし誤記ではない。そうすると今度は「表計算ソフトとSOAに何の関係があるのか」と首をひねる向きもあろうが、大いに関係がある。

 まず、「Excelを企業の情報システム基盤として使いこなす」とは何か、説明する。言い換えると「Excelを使って企業の事業部門が利用する情報システムを用意すること」だ。ここで重要な言葉は、「企業」「システム」「用意」である。Excelを使ってエンタープライズ・システムを「用意」する話であり、個人の文房具の話ではない。

 あえて「用意」と言っているのは、一からプログラムを記述するのではなく、出来合いのソフトウエア製品を理解し、使えるところは極力使って、現場が必要とする機能を実現する、という意味である。用意を開発と言い換えてもよいが、企業情報システムを開発するといった途端、事業部門から要求を聞き、エンジニアを動員し、プロジェクトとして位置付け、プログラムを徐々に作っていく、従来のやり方が頭に浮かんでしまう。

 出来合いの製品といった場合、一つは業務パッケージを指すが、ミドルウエアや開発支援ツールを使う方法もある。Excelの利用は後者である。企業情報システムの基盤として、Excelはどのような思想と機能を持っているのかを理解し、Excelを基盤に使う情報システム全体の絵を描き、使いこなすための規則あるいは作法を決める。Excelでやれることは極力、Excelに任せ、手組みでごりごりと開発するのは避ける。

 以上の一文にあるExcelを「SOA(を実現するソフトウエア製品)」に入れ替えて読み直して頂きたい。こうなる。「企業情報システムの基盤として、SOA(を実現するソフトウエア製品)はどのような思想と機能を持っているのかを理解し、SOAを基盤に使う情報システム全体の絵を描き、使いこなすための規則あるいは作法を決める。SOAでやれることは極力、SOAに任せ、手組みでごりごりと開発するのは避ける」。

 お分かりのように、SOAを成功させる勘所と、Excelをシステム基盤として使う勘所は同一と言ってよい。「Excelを企業の情報システム基盤として使いこなせない情報システム部門やITベンダーはSOAも使いこなせない」と冒頭で述べた所以である。

 さらにExcelをシステム基盤に利用することとSOAの導入は目的も同一である。頻繁に変わる事業部門の要請に即応できるように、企業情報システムの柔軟性を高めるとともに、システムを実現する期間を短縮することだ。しかもExcelの場合、表という一種の共通言語によって、事業部門と情報システム部門を結びつけられるという強みを持つ。事業部門は仕事を進めるために、予算実績管理をはじめとする各種の管理資料を表形式で作っている。これらの表をたたき台として議論すれば、情報システム部門が事業部門の要求をより正確に汲み取れるようになる。

 ここ5~6年にわたって話題になっているにも関わらず、SOAはなかなか進展しない。進まない理由は色々考えられるが、ここでは「事業部門の協力が得られないこと」を挙げておく。本来、SOAは事業部門の要望、事業の構造に合う形で情報システムを用意するための方法なのだが、事業部門にSOAを説明し、「必要なサービスを定義して下さい」と依頼しても目を白黒させるばかりである。といってシステム部門の中だけでSOAを進めようとすると、「何のためのSOA」といった視点が抜け落ち、SOAへの取り組みが頓挫してしまう。

 以上は、情報化のコンサルティングやグランドデザインの支援を手掛けている札幌スパークルの桑原里恵氏の意見をまとめたものである。桑原氏は「情報システム部門がExcelを使いこなせるかどうかは、システム基盤というアプローチを使いこなせるかどうかのリトマス試験紙」と仰ったのだが、筆者の独断でSOAと言い換えてみた。

注)本コラムはITproメール2007年9月18日に掲載された「ExcelとSOAの意外な関係~Excelを使えないIT部門はSOAにも取り組めない~」の再掲です。