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米野 宏明 日本CFO協会 主任研究員
マイクロソフト
インフォメーションワーカービジネス本部
IWソリューションマーケティンググループ
エグゼクティブプロダクトマネージャ

 「これからExcelを使ってデモをします」。

 たった一言の発言を機に、総勢500人もの出席者が一斉に顔を上げ、食い入るようにプレゼンテーションのスライドを見始めた。仕事柄、プレゼンテーションの機会は多いが、こうした経験は滅多になく、あの時の聴衆の姿が目に焼き付いている。

 500人の聴衆とは、企業のCFO(最高財務責任者)や、その予備軍である経理・財務部門の部課長であった。私は日本CFO協会の主任研究員として、企業経営の新潮流などについて研究し、その成果を協会のフォーラムで定期的に発表している。冒頭の光景は、フォーラム会場でExcelのデモを披露したときのことだ。

 担当した講演では、まずスライドを使って研究成果を発表した。熱心に耳を傾けてくれたのは年配のCFOや役員クラスの方々である。若手の部課長クラスは、もっと実務的な話を聞くために参加されたのか、下を向いて机の上で作業をしていたり、中には新聞を読んでいる方もおられた。

 会場の雰囲気が一変したのは、前半の成果発表が終わり、「後半はExcelを使ってデモをします」と言ったときである。下を向いていた人が一斉に顔を上げた。新聞を読んでいた人もスクリーンをじっと見て、デモが始まるのを待っている。デモを始めてからも500人は画面を凝視し、時折うなずいたり、首をひねったりしていた。

 講演を終えて、あの雰囲気は何だったかと考えて、合点がいった。CFOを筆頭とする経理・財務部門の担当者にとって、Excelは「いつも一緒にいる我がツール」なのである。彼らは経理・財務部門にずっと所属しているプロフェッショナルであり、Excelを日頃から駆使している。例えて言えば、CFOにとってのExcelは、武士の太刀のような存在なのである。彼らは「ITを使っている」という認識はまったく持っていない。ひょっとするとOfficeを使っているつもりもないかもしれない。ひたすらExcelなのである。