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営業では様々な知識を身に付けることは重要だが、それだけでは顧客の心は動かせない。知識を土台に知恵の領域にまで高めることで、初めて顧客に対する価値になる。価値創造型の営業とは、いかに知恵を生み出すかが重要であり、単なる知識だけでは価値にならない。

 自社が販売するソフトやハード、サービスなどのほか、顧客の業務や業界など様々な知識を身に付けることは、ソリューションの営業として非常に重要なことです。ただし、それだけでは顧客の心は動かせないでしょう。業務や業界の知識なら顧客も十分に持っていますし、他のITベンダーの情報でも顧客の方が良く知っている場合があります。このため、営業は顧客と知識で“戦う”ことは避けなければなりません。では、どこで勝負すべきでしょうか。それは「知恵」です。単なる知識だけでは顧客に何も付加価値を与えません。顧客も気が付かない知恵を創造することが付加価値であり、私が提唱している価値創造型の営業になるのです。

 顧客が必要としているのは、「どうすれば自社の問題を解消できるか」といった解決策であり、そのための知恵を持つ頭脳プレイヤーです。顧客の言われたとおりに行動するだけの営業や、質問されたことに答えるだけの営業には何も価値を感じないでしょう。豊富な知識を持つことを、知恵があることと勘違いしている人も多いようですが、それは違います。ベテランとか資格保持とも関係ありません。いくら豊富な知識を持っていても、知恵を出せない営業は顧客に価値を提供できませんし、顧客の心を動かせません。

 もちろん解決策と言っても、ソリューションプロバイダの視点では最終的には自社が販売する商品やサービスに結び付けなければ利益になりません。顧客の問題と自社の商品やサービスの間を埋めるもの、そこに知恵が要求されるわけです。当然、経営や拡販の手法、市場の読み方など生きた知恵が求められるわけで、従来のような営業スキル、SEスキルだけに頼った方法だけでは限界といえるでしょう。

情報を知識にすることから始まる

 では、どうすれば知恵を創造できるようになるのでしょうか。図1にプロセスを示しました。知恵とは単なるひらめきではなく、情報を集めて知識として蓄え、それを基に自分の考えを加えることで、導いていくものだと思っています。知識と知識の組み合わせとも言えるかもしれません。

図1●情報が「知識」となり「知恵」となるまでのプロセス
図1●情報が「知識」となり「知恵」となるまでのプロセス
暗黙知を形式知にするだけでなく、形式知と形式知を組み合わせて、また新たな形式知を生み出すことも「知の循環運動」の1つ
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 中には天才的なひらめきを持つ人もいるかもしれませんが、多くの場合は先天的なセンスと知恵の創造には関係がないでしょう。知恵は普段の努力から生まれるものです。知恵がないという営業は単に努力が足りないだけです。マニュアルや他人が作成した営業手順を何も考えずに実行しているだけでは、知恵を出していることにはなりません。

 知恵は知識から構成されるので、最初の段階としては情報を積極的に収集することが重要になります。自社の商品やサービスはもちろん、業界や業務など幅広い情報も必要です。日常の仕事や業務だけにこだわらず、様々な知識を身に付けることで発想の柔軟性や新しい角度からモノを見られるようになります。

 では、どんな情報を集めるべきか。そのためには、普段から情報に対する感度を鍛えることが重要になります。同じモノを見ていても、あることに気付く人もいれば気付かない人もいます。こうした違いは情報に対する感度によるものでしょう。

 一般に情報とは、「その情報に興味を持っている場合」「その情報を必要としている場合」そして「ある目的のために情報収集している場合」などでなければ、記憶に残らないばかりか、たとえ役に立つ情報であっても、その情報の存在にも気が付かないということもあります。情報の感度を鍛えるということは、情報の存在に気が付くという能動的な活動なのです。

 例えば、会社の研修などで知識を得ようとするケースもあるでしょうが、いくら一生懸命に勉強しても、これだけでは受動的な行為に過ぎないので、情報の感度を鍛えることになりません。このケースで能動的な行為とは、例えば、ビジネスに有効な書籍やツールなどの情報を自分の足で探し出すというものです。自主的に情報収集するという能動的な姿勢が、情報感度を鍛える第一歩になるでしょう。

 書店やインターネットだけではありません。ランチを食べに行くレストランでも情報感度を鍛えることができます。「こだわりの店」であれば店主がどこにこだわっているのか、料理はもちろんメニューやインテリア、接客方法など店主が伝えたいメッセージを「読む」ことが情報感度を鍛えます。とにかく考え抜くことです。様々な場面で発信されている情報が持つメッセージを読み取る習慣をつけることが情報感度の向上につながるのですから、どんなテーマであれアンテナを張り巡らしましょう。

 最大のコツは、仕事と遊びの境界をなくすことだと思います。遊ぶことで打算と無縁になるからこそ、無心になっていろいろなものを受け入れられるのではないでしょうか。システムだけでなく音楽や自動車、スポーツなど様々な分野に目を向けましょう。情報収集のノウハウは、あれこれ考えながら情報を入れるのではなく、無心になることです。情報の精査は後で行えばよいのです。顧客が発言した言葉も自分の既成概念のフィルターで通して聞いてしまうと、本当に重要な情報が残らないということもあるからです。

 情報収集は知恵を創造するためのベースになるものです。情報収集もせずに、ひらめきを待っていても天から降ってくることはありません。情報は多ければ多いほど有利になりますので、能動的に収集するようにしましょう。そして顧客との商談の場面をイメージしながら記憶しましょう。「場面」「状況」「相手」などに応じ、どんな情報をいつ選択するかを意識しておくことが肝要です。そうすることで知識として記憶されるのです。知識の引き出しを多く持つことで、商談で相手が興味を引くような例え話もできます。分かりにくいITの世界が顧客にとって身近になるでしょう。