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 この連載を始めるに当たって,最初の課題は「タイトル」でした。Web(デザイン)について書く,ということだけが決まっていて,編集者の方と随分やりあった記憶があります。最終的に,「デザイン」と「エンジニアリング」の間に「半角スペース」を入れる,という点で合意に達し,スタートしました。随分と細かな部分にこだわって始めたものです。

 十数年前,社会人になったばかりの頃,私はソフトウエア・エンジニアリングの現場にいました。主にデータベース製品の開発や日本語化作業をしていて,本当に多くの「考え方」を学びました。要求は絶えず増加し,技術も進歩します。その中で工期と予算を守りつつ,最高の品質での開発を目指す。さらに,それを継続する。そのために常に新しい考え方が導入され,実施しては評価し,改良していました。それが「エンジニアリング」という言葉に対する畏敬の念ともなって,今に至っています。

 そして,それをWebデザイン(あるいは,Webサイト構築)の場に持ち込みたいと思ったのでした。今回は,このエンジニアリングという言葉から,Webサイト開発の現場を見てみたいと思います。

ソフトウエア・エンジニアリング

 まず,「(ソフトウエア)エンジニアリング」とは何でしょう。様々な説明がありますが,榊原彰氏の「Part1 ソフトウエア・エンジニアリングとは」の説明が非常にわかりやすいと思います。エンジニアリングと呼ばれるものは,ただソフトウエアを生産する方法論ではありません。あくまで現場で実践的に活用できるものであり,それ故に,品質・コスト・納期というビジネス的な基本三要素を高めていくものでなければなりません。

ソフトウエア・エンジニアリングの目的

デザイン・エンジニアリング

 同じ絵を用いて,「デザイン・エンジニアリング」を説明してみましょう。上図の「ソフトウエア」を「デザイン」に置きなおしてみます。

デザイン・エンジニアリングの目的

 ほとんど違和感なく,説明になっていると思います。特に持続(継続)的にWebサイトを開発している方々にとって,この絵はかなりスンナリと受け入れられると思います。

 ユーザーからの要求も,品質・コスト・納期の三視点から吟味され,取り入れられます。迷いやすくないか,デザイナの独りよがりにはなっていないか,という「デザインのバグ」の検証も,同様に三視点から吟味されます。そして,Web開発者が単なる「一発屋」に成らないがために,継続的にデザインの開発を効率的に進めていく必要があります。

デザイン=問題解決(法)

 この絵を,もう一つの表現で現してみましょう。「デザイン」を「問題解決法」に置き直してみるのです。私の所属するbAでは,基本的に「デザイン=問題解決」という理解が浸透しています。「デザイン」が情報システムをどのように支援できるのかを,考えた結果だと思います。どうでしょうか。これもしっくりと当てはまっているように感じないでしょうか。

デザイン(問題解決)・エンジニアリングの目的

 当然ながら,「問題解決」と呼ぶ以上,誰にとっての問題であるかという定義が必要になります。ここで「対象ユーザー」が決まります。そこが決まれば,何が「バグのある問題解決」かも見えてきます。対象ユーザーを喜ばさない機能や見た目です。さらに,保守作業も考えなければなりません。継続的にWeb開発プロジェクトに関わっていくのであれば,効率的に問題解決法も提案できなければなりません。そう考えると,これはまさにWebサイト開発そのものです。

 「デザイン」の解釈を,「グラフィック・デザイン」に限定しないことで,こうした言葉のうえでの展開が可能になってきます。そして,この形こそが,クライアント企業(発注者)も,ユーザー(利用者)もが,Web開発者に望んでいるモノなのだと思えるのです。

 クライアントは何かしら(もう少し商品の認知度を上げたいなど)の問題を抱えていて,Web開発者に,表現やデザインを通じた何かしらの問題解決法の提案を望んでくるのです。ですので,何が問題なのかを突き詰めるという作業が必須になります。これが,Webデザイン業務に「コンサルティング」の香りが含まれる所以です。そして,Web開発者は,そのクライアントの問題点と,それを利用するユーザーとの接点を探ります。わかりやすいか,受け入れられるか,動作環境の設定は妥当か,それまでの経験と知識からそれを割り出し,「形(Webサイト)」にしていきます。