PR

 IPパケットの旅の出発点はパソコンだ。IPパケットはパソコンの中で生まれ,そして外部へ旅立っていく。

 IPパケットの元になるのは,通信アプリケーションが作り出したデータである。プロローグでも述べたように,インターネットでやりとりされるのはIPパケットだけ。つまり,インターネットを利用する通信アプリケーションは,そのデータをIPパケットに運んでもらうことになる。

 インターネットを利用する通信アプリケーションはさまざまだ。Webアクセスや電子メールのほかに,チャット,P2Pファイル共有,IP電話,FTPなど,列挙していくときりがない。これらの通信アプリケーションのデータは,すべてIPパケットが運ぶ(図1-1)。今回は,その中でも,もっとも頻繁に使われているWebアクセスを例に,IPパケットの旅を追っていくことにしよう。

図1-1●どんなアプリケーションのデータもIPパケットで運ぶ
図1-1●どんなアプリケーションのデータもIPパケットで運ぶ
インターネットでは,どのようなアプリケーションのデータも,必ずIPパケットに詰め込んで運ぶというのが大原則である。 [画像のクリックで拡大表示]

通信アプリのデータを細かく区切る

 では,IPパケットは,どのようにして通信アプリケーションのデータから作られるのだろうか。Webブラウザの送信データがIPパケットに詰め込まれて,パソコンの外に送り出される過程を見てみよう(図1-2)。

図1-2●IPパケットの誕生と旅立ち
図1-2●IPパケットの誕生と旅立ち
IPパケットはOS内の「TCP/IPソフト」によって作られる。アプリケーション・データを小分けにし,それにIPヘッダーを付けて,IPパケットが完成する。そして,IPパケットはMACフレームに格納され,LANアダプタからLANケーブルへと送り出される。 [画像のクリックで拡大表示]

 アプリケーションは,用意した送信データをOSに渡し,送信を依頼する。アプリケーションの処理はここまで。あとはOSの仕事となる。

 OSの中でも,IPに関連した処理を行う部分は「TCP/IPソフト」と呼ばれている。TCP/IPソフトは二つの作業をこなすことで,通信アプリケーションが受け渡した送信データからIPパケットを作り出す。

 まず最初の作業は,送信データをIPパケットに入れられる大きさに細かく区切ること。次の作業は,その送信データの前に「IPヘッダー」という情報を追加することである。IPヘッダーの中には,インターネット上でIPパケットをうまく転送するためのさまざまな情報が入っている。

あて先を示すのはIPアドレス

 IPヘッダーの中にある情報のうち,とくに重要なのが「IPアドレス」だ。これは32ビット長の情報で,インターネット上の住所のようなもの。サーバーやパソコンを含む,インターネット上のすべてのコンピュータに,IPアドレスが重複しないように割り当てられている。

 IPヘッダーには,「あて先IPアドレス」と「送信元IPアドレス」という2種類のIPアドレスが書き込まれている。

 あて先IPアドレスは,IPパケットの最終目的地を示すIPアドレスである。今回は,ここにWebサーバーのIPアドレスが入る。これから長い旅に出発するIPパケットは,このあて先IPアドレスを手がかりにして,最終目的地まで中継されることになる。

 送信元IPアドレスは,送信元となるパソコンに割り当てたIPアドレスになる。この送信元IPアドレスは,IPパケットを送り届けるときには直接使われない。パソコンからのIPパケットがWebサーバーに到着し,Webサーバーがデータを返す場面で使われる。つまり,Webサーバーの返信パケットでは,パソコンが出したIPパケットの送信元IPアドレスがあて先となり,WebサーバーのIPアドレスが送信元となる。