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 「“見える化”を支えるシステムを、ベンダーに丸投げするなんて考えられない。それは、会社の経営を他人に任せないのと同じ。自分のことは、自分でなんとかするのが鉄則だ」ーー。徹底的な「見える化」で躍進する中堅・中小企業の社長は、こう口をそろえる。

 余分な人員を抱えられない中堅・中小企業の多くは、社内にシステム部門やシステム専任者を置けないのが実情だ。ところが、本誌が探し出した10社の躍進企業のうち、実に7社が社内にシステム部門を設置し、自前で「見える化」する情報を収集・分析するシステムを開発している(表1)。残り3社についても、社長自らが地域のIT勉強会に参加しながら、「見える化」を支えるシステムを企画している。

表1●「見える化」を極める躍進企業10社のIT推進体制
表1●「見える化」を極める躍進企業10社のIT推進体制
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 高度な専門知識が必要なプログラミング作業や、サーバーやソフトの調達・導入作業をベンダーに依頼している企業はあるものの、システムの企画や上流設計は、ほとんど自社内で行っている。「ITのことは分からないから、ITベンダーに任せている」「ITベンダーがシステムの提案を持ってくるのが当然」といった言葉は、どこからも聞こえない。

 「社内ネットワークくらいなら、工場長や社員と一緒に敷設できる」(山陽鉄工の賀谷社長)、「アイデアを素早く実現したいなら、ITベンダーから優秀なエンジニアを引き抜くくらいの心意気が必要」(ハッピーの橋本社長)、「ITベンダーの売り込みを待つのではなく、自らITベンダーに提案するくらいでないと、一歩先のシステムは作れない」(宮豪の的場社長)など、躍進企業の社長は、システムの内製化に積極的に取り組んでいる。

価格決定プロセスを「見える化」

 家電製品やパソコンの価格比較サイト「価格.com」で、いつも安値の上位に名前を連ねているネット通販専業の「ECカレント」。この通販サイトを運営するストリームは、無店舗型の家電販売で急成長し、この5年で売上高は約10倍、209億円(2007年1月期)に成長した。

 同社もシステムを内製化している躍進企業の1つだ。もともとは、ITベンダーにシステムの構築を委託していたが、「価格.com」を活用した販売戦略を強化するため2004年にシステム部を社内に設置した。現在は、社員4人とITベンダーから派遣されている5人が、システムを開発・運用している。

 システム内製化の狙いは、開発スピードの強化だ。「外部に委託していたときは、ちょっとした変更でも2週間近く待たなければならなかった。今では、最短2時間でシステムを変更できる」と劉 海涛社長は語る。「ベンチャー企業は、スピードが命。わずか1週間でも無駄にできない。立ち止まっていると、あっという間に競合他社に追い抜かれてしまう」と続ける。

 ストリームの競争力は、単なる安値販売ではない。最低限の利益を確保しながら、価格比較サイトの上位につけるための価格決定プロセスを「見える化」し、システムで自動化した点がポイントだ(図1)。同社では、商品の販売価格を約90種類あるパターンに沿って決めている。

図1●利益を確保しつつ安値で売り切る価格決定プロセスを「見える化」
図1●利益を確保しつつ安値で売り切る価格決定プロセスを「見える化」
ベンダー依存から自社開発のシステムに切り替えることで、機能強化やシステム修正の時間が最短2週間から2時間に短縮
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 商品の仕入れ・販売担当者は、パソコンや家電製品の卸やメーカーと取引契約を結んだ段階で、仕入れ値と適用する価格決定パターンを、販売管理システムに登録する。あとは、30分に1回のタイミングで自動的に競合他社の価格を調べ、常に安値上位を維持するよう販売価格を変えていく。

 例えば、ある商品を10万円で仕入れ、最安の11万円(粗利10%)に値付けしたとする。もし、競合他社が10万9000円に値下げすると、その30分後には自動的に10万9000円に値下げし、最安値1位を追随する。だが、粗利5%を切らない別のルールも設定してあるため、10万5000円以下には自動的に値下げはせず、販売担当者に警告を出し、「さらに値下げして売るべきか」「競合が品切れになるまで価格を据え置くか」といった判断を促す。

 さらに、「10万円の商品を10円で売る」といった価格設定ミスによる損失を防ぐ仕組みも、システムに作り込んである。社員が手作業で値下げする場合、アルバイトは「100円単位」、課長職は「1000円単位」のように1回単位の値下げ幅が決まっている。

 こうした緻密な仕組みは、パッケージ・ソフトを買ってきて、すぐに導入できるものではない。「トライ&エラーを繰り返すことで、やっと今のシステムになった。自社にシステム部門があるからこそ、会社の機動性を高められる」と劉社長は強調する。