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 ダウンロードしたクライアント・アプリケーションを,あらかじめインストールしたプラグイン・ソフト上で動作させるのが,[タイプ3]プラグイン型である。こう書くと[タイプ2]のプラグイン+サーバー型と同じになるが,違いは,サーバー側のフレームワークが無いことだ。あらかじめ用意した作成済みのクライアント・アプリケーションを,そのままダウンロードする(図1)。サーバー側のフレームワークが無いので,プラグイン+サーバー型の特徴であるリアルタイム通信には向かない。

図1●[タイプ3]プラグイン型の仕組みと特徴
図1●[タイプ3]プラグイン型の仕組みと特徴
[タイプ2]と同様にクライアント側にプラグイン・ソフトを必要とするが,サーバー側にフレームワークが存在しない。あらかじめ実装したアプリケーションをサーバーからダウンロードして実行するだけの単純な仕組みである。上に図示したのはアクシスソフトの「Biz/Browser 2.0」の場合
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 代表的な製品は,Adobe Systemsの「Flash」,アクシスソフトの「Biz/Browser」,米Curlの「Curl」である。このタイプは最初期のリッチクライアント製品・技術であり,稼働実績が多い。リッチクライアントの中では歴史が古いこともあり,製品・技術を取り巻く環境はほかのタイプと比べるとやや充実している。例えば,開発支援用のフレームワークがそろっていたり,機能テスト・ツールと連携できる製品があったりする。

 特定のリッチクライアント製品に特化してシステム構築を請け負う中小SIベンダーが散見され,それら企業に開発ノウハウが集約される傾向がある。

画面1●旭化成メディカルの透析医療施設向けパッケージ
画面1●旭化成メディカルの透析医療施設向けパッケージ
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画面2●ネクサスの経営情報ポータル・システム
画面2●ネクサスの経営情報ポータル・システム
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 プラグイン型は製品ごとに固有の特徴があり,適応しやすい業務特性が個々の製品で比較的はっきりしている。例えばFlashの特徴は,豊富なアニメーション機能。そうした機能が必要なケースで多く採用されている。そのほか,旭化成メディカルの常盤正樹氏(透析事業部 課長)は透析医療施設向けパッケージ「eカルテ棚@透析」(画面1)にFlashを採用し,その理由の一つにコスト負担が軽いことを挙げた。ただ,[タイプ2]であるFlex 2.0の中核機能が今では無償利用できるので,業務アプリケーションにFlashを採用するケースは減りそうだ。

 Biz/Browserの主な特徴は,事務処理を効率化できること。第一生命保険の事務系システムにBiz/Browserが使われているが,その製品選定に携わった第一生命情報システムの岡崎宏昭氏(基盤システム本部 基盤開発グループ コンサルタント)は,「マウスレスで書類を持ちながら片手で操作を完結できること」を重視して選んだ。

 Curlは,CADデータを取り扱えるなど,図表関連のライブラリが充実している。デジタル関連機器などを販売するネクサスのシステム担当者は,経営情報ポータル・システムの構築にCurlを利用した。その採用理由の一つとして,ウインドウのサイズに合わせてグラフを自動的に縮小・拡大できることを挙げる(画面2

 プラグイン型を敬遠したエンジニアの多くは,プラグイン・ソフトの導入の手間を嫌った。ほかに,「特定企業の技術にロックインされることを避けたい」(野村総合研究所 開発技術部 情報技術本部 グループマネージャー 並河英二氏)という思いもある。

更新機能付きファットクライアント

 [タイプ4]インストール型は,ファットクライアント(一般的なクライアント/サーバー型アプリケーションのクライアントのこと)と同様に,ローカル・マシンにクライアント・アプリケーションをインストールする(図2)。クライアントにランタイム・ソフトが必要だ。

図2●[タイプ4]インストール型の仕組みと特徴
図2●[タイプ4]インストール型の仕組みと特徴
初回アクセス時にサーバー上にあるクライアント・アプリケーションをダウンロードしてインストールする。必要なファイルをすべてインストールしておけば,オフライン環境でも使える点が特徴。図示したのは米Microsoftの「ClickOnce」の仕組み
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 従来のファットクライアントとの違いは,クライアント・アプリケーションをバージョンアップしたときに自動更新する機能を備えている点である。これにより,クライアント・アプリケーションを配布するという問題がクリアされる。

 インストール型には,ファットクライアントと同様の長所がある。オフライン環境で使えるし,ローカル・マシンのリソース(ディスクや外部デバイス)を活用できる。

 インストール型の稼働例は少ないが,環境が整ってきたので注目したい。これまで稼働例が少なかった理由の一つとして,クライアントにランタイム・ソフトを導入しなければならなかったことがある。例えばMicrosoftのインストール型技術「ClickOnce」の場合,Windows XPまでのOSにはランタイム・ソフトが標準搭載されていないが,Windows Vistaにはランタイム・ソフトが標準搭載される。今後はClickOnceの動作環境が整うことになる。

画面3●中央大学のSNSプロトタイプ・システム
画面3●中央大学のSNSプロトタイプ・システム
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 また,Windows Vistaに標準搭載されるランタイム・ソフトの「.NET Framework 3.0」には,Windows Presentation Foundation(WPF)と呼ばれるライブラリが含まれる。このライブラリを使用すると,XAML(Extensible Application Markup Language)と呼ぶXML形式言語で二次元/三次元の描画表現を統一したAPIで記述できる。手軽にリッチなUIを実装できるので,この点も利用を促す要因の一つになる。すでに国内では,NHK,インプレスジャパン,ウェザーニューズなど10社がWPFアプリケーションの提供を表明済みだ。中央大学のSNSプロトタイプ・システムは,試験的にWPFアプリケーションとして実装された(画面3)。

 また,Adobe Systemsが2007年上期に出荷予定のランタイム・ソフト「Apollo」(コード名)は,Flash/Flex/Ajaxアプリケーションをインストール型で利用できるという。