PR
写真3 改善活動の舞台であるヨコオ中国工場(東莞友華汽車配件有限公司)
写真3 改善活動の舞台であるヨコオ中国工場(東莞友華汽車配件有限公司)
[画像のクリックで拡大表示]

 車載通信機器などを製造・販売するヨコオが、日本での成功体験をもとに中国でトヨタ流改善を始めたのは2006年。その中心人物である多胡 一男氏に、取り組みの詳細をほぼリアルタイムでメルマガに寄稿してもらった。1年前の話ではあるが、現地に改善活動を根づかせるためには何が課題となるのかなど、中国で改善に取り組もうとする企業にとっては大いに参考になるだろう(日経情報ストラテジー編集部)。

多胡 一男
東莞友華汽車配件有限公司(ヨコオの中国法人) OJT-Sプロジェクト 経理担当


 皆さん、こんにちは。中国からの第3回目となります。
(原文は2006年9月6日付け日経情報ストラテジー・メール)

 前回はカイゼン活動の概要がメインでしたので、今回からはもう少し具体的にお話します。私たちの活動で最初に行うのが「職場診断」と「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)チェック」です。この2つはそれぞれの結果から課題点を見いだし、これからのカイゼン活動のテーマ選定に役立てるものです。

■カイゼン活動

【1】職場診断と5Sチェック

 まず、モデル職場として選定したAM/FM受信用マイクロアンテナ生産課の27ライン(前工程15・組立12)について、全体の「職場診断」「5Sチェック」の結果からお話します。

職場診断
 次の(1)~(4)の4区分を管理する上で、必要な「仕組み」の有無と「活用状況」を診断します。

(1)生産: 必要な物を必要な時に、必要な量だけ作る生産体制の構築
(2)品質: 安定した品質保証できる体制を構築し、高い顧客満足の実現
(3)原価: 職場一丸となって継続的な原価低減活動により、強いコスト競争力の実現
(4)職場: 全員の能力が高いレベルで発揮され、環境変化に前向きに対応できる風土の実現

 この各項目を3段階評価した結果は、4区分とも決めごとはあるが、活用し結果を評価する仕組みが不足、または有効に機能していないことが分かりました。OJT-S(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成)プロジェクトの活動は基本を作り、職場に展開し定着されることが一番の目的なので、非常にやりがいのある場所へ赴任してきたと思います。

5Sチェック
 目指す姿は「快適な職場環境」「工場のショールーム化」「現場主体での2S活動の定着」です。<5Sチェック>は27ラインを11区分34項目で評価するもので、初回は9項目が70点以下で<職場診断>同様に、「ルールはあるが守られていない」あるいは「中途半端な実施レベル」といえるというものでした。特に気になったのは治具などを収納する棚の状態で、重なっていたり、表示が中身と違っていたりしていて「常時使用しないもの」「不要なもの」をいかに整理・整頓(以下2S)するかが課題です。また、予備スペースがあまり無いので、使う身になって効率のよい整頓と収納が求められます。

【2】モデルライン選定

 モデル職場全体の2Sを進めながら、全27ラインの中からモデルラインの設定をします。初めは顧客の監査が迫っているA社向けの2ラインを、モデルラインとして活動を展開することにしました。まずメンバーを「作業時間の基準づくり」と「前後の物の流れ把握」に分け、現状確認のスタートです。

時間測定と標準作業の設定
 工程が正常に可動しているかをみる上での基礎となる標準作業の設定です。作業そのものに大きなムダはありませんが、作業分担や部品の置き方などに問題があり、標準作業の設定と平行して工程改善に取組むことにしました。

物の流れ
 職場全体のレイアウトから見ると、部品倉庫から工程までの通路や生産課内の部品置場などに使いづらい点が多々あり、最終的には全体のレイアウト変更もしなければなりません。

作業者のレベル
 モデルラインは新人がいないため安定した生産をしていますが、誰にでも同じ作業ができる標準と指導方法の設定が必要です。

【3】活動の進ちょく

 コラムへの連載スタートと中国工場でのカイゼン活動報告がズレているため、話が少し飛びますが、7月末でモデルラインであるA社向けの取り組みが80%ほど進みましたので、現在は対象ラインをB社・C社向に拡大して基準づくりに取組んでいます。

 それでは、ここまでの活動で感じたことに触れたいと思います。

言葉の壁
 OJT-Sプロジェクトのメンバーである現地スタッフ4人の日本語には個人差があり、私の考え方のすべてが理解できる訳ではありません。ましてや対象職場では日本語は全く通じません。通訳を介しますが、微妙なニュアンスが伝わらないのが一番の悩みです。

従来からの習慣
 OJT-Sの考え方は従来と少し異なり、一人ひとりがそれぞれの立場でカイゼンができる職場づくりを目指しています。この実現にはかなり時間がかかりそうです。また、決めごとをキチッと守る職場風土を作ることにも相当なパワーが要りそうです。この点は焦らず、じっくり構えて取組んで行きたいと考えています。

■生活環境

 工場から車で7~8分のところに、普段食事や日用品を買いに行く寮歩という町がありますが、7月中旬に集中豪雨があり、広い範囲で床上浸水(天井近く)にみまわれました。

 もともとこの地域は湿地帯で海抜も0mに近いことから、雨が多めに降ると道路が水に浸かることも珍しくありません。雨が上がった後、道路(?)で子供が泳いでいた、という話も聞こえてきました。この時は工場周辺も排水溝から雨水が噴き出していました。寮でニュースを見ていると、日本で台風による被害が多く報道されていますが、私は家屋への浸水の経験は無く、とにかく驚くばかりです。

 そうそう前回お話した通り、このところの暑さで蚊はほとんど出なくなりました。蚊も活動しない暑さに、人間は耐えていけるのでしょうか?

 では、次回をお楽しみに!


多胡 一男(たご かずお)
1981年、株式会社ヨコオ(車載通信機器・無線通信機器などの製造・販売)入社。2006年6月より同社中国工場である東莞友華汽車配件有限公司にてOJT-Sプロジェクト 経理担当。ヨコオでは、人事部門にて、人事システム革新テーマ等に取り組む。その後、車載通信機器生産部門責任者に就任。2004年には韓国での合弁会社の製造立ち上げ責任者として駐在。2005年からはOJT-Sプロジェクト(トヨタ生産方式に基づく職場改善・人材育成プロジェクト)に参画し、製造現場のものづくりシステム改善に取り組み、現在同社中国工場への展開で奮闘している。同社のWebサイトはこちら