PR

 「はい,喜んで!」「あなたのおかげで助かりました」「ありがとうございます」「~ならできます」---。こうした前向きな言葉が相手から返ってくるのは気持ちが良いものです。相手のちょっとした言葉で,私達のモチベーションは高まるのです。

 前回は「アサーション(主張的)」という考え方をベースに,自分も相手も「OK」となるようなコミュニケーションをとるためのコツを紹介しました。

 今回は,よりポジティブ(肯定的,前向き)な言葉を用いてコミュニケーションするためのポイントを,紹介していきます。ポジティブな言葉を“意識して”使うことで,自分自身も前向きな気持ちになれますし,相手のモチベーションを上げたり心地よくさせたりすることができます。

■ポジティブな表現とは

 ポジティブな表現とは,会話の中で「アサーティブな言い方」(前回の記事参照)を心がけながら,より肯定的で前向きな言葉を意識して使用していくことを指しています(図1)。

図1●ポジティブな表現とネガティブな表現
図1●ポジティブな表現とネガティブな表現

 礼を言うときに「すいません」とついつい言ってしまうことはありませんか?無意識に謙遜したり,恐縮したりして使ってしまいがちな言葉のひとつです。しかし,せっかくなら「ありがとうございます」と言った方が,相手にも,よりプラスでポジティブな印象を与えます。

エピソード1
「すみません」
 つい先日,休暇中に私の業務を代行してくれた先輩に対し,「いろいろとすいませんでした」とお礼のつもりで述べたところ,「別に謝らなくてもね」と半分冗談で言われました。感謝の気持ちには変わりないのですが,どうせなら「私の休暇中に対応してくれて大変助かりました。ありがとうございました」と,素直によりポジティブな言葉を使用した方が相手にとっても気持ちよいものなのだな,と改めて思いました。

■参考になる「ストローク」の考え方

 ここで,意識してポジティブな表現を使ううえで,非常に参考になる「ストローク」という考え方について紹介しましょう。

 ストロークとは,精神科医であるエリック・バーンによって提唱された「交流分析(Transactional Analysis)」の中で扱われる用語です。交流分析とは,よりよい人間関係を築く中で,個人が成長し,変化するための心理療法です。

 交流分析の中でストロークとは,「相手を認める様々な言動」のことを指しています。このストロークの出し方や受け取り方によって,人間関係も変わってきます。ストロークの概要を以下に示します。

●ストロークの手段
 ストロークの手段には,(1)スキンシップによるもの,(2)バーバル(言葉)によるもの,(3)ノンバーバル(非言語)によるもの---の3つがあります(表1)。

表1●ストロークの手段
スキンシップによるもの
接触を伴うもの
・抱きしめる
・撫でる
・握手する
・肩をたたくなど
バーバルによるもの
相手に話しかけるなど言葉を用いて相手の存在を認める
・あいさつする
・励ます
・ほめる
・叱る
・責めるなど
ノンバーバルによるもの
言葉以外のストロークを用いて相手の存在を認める
・ほほ笑む
・にらむ
・うなずく
・返事をしない


●ストロークの種類
 ストロークには「肯定的(ポジティブ,プラスの)ストローク」「否定的(ネガティブ,マイナスの)ストローク」があり,それぞれ条件付き(なんらかの条件を満たすと得られるストローク)と条件なし(存在,人格そのものに対するストローク)の2種類があります(表2)。

表2●ストロークの種類
  肯定的(ポジティブ,プラスの)ストローク
(もらうと快適な気持ちになり,成長や自信につながる)
否定的(ネガティブ,マイナスの)ストローク
(もらうと不快感や嫌な気持ちになり,自信喪失や不愉快な気分をもたらす)
条件付き
(何かの条件を満たすと得られるストローク)
お礼など
「いつもきちんと納期を守ってくれて助かっているよ」
「こんな複雑なプログラムが素早く書けるなんて素晴らしいね」
指導,しつけ,叱るなど
「いつも進捗報告が遅れ,だらしない」
「社会人としての基本が守れないなんて君は駄目な人だ」
条件なし (存在,人格そのものに対するストローク) あいさつなど
「おはよう」
「あなたがいてくれて嬉しい」
「あなたは私達にとって必要な人なのです」
存在の否定
「あなたのことは嫌いだ」
「あなたは信用できない」
「あなたなんていなくてもいい」

●ストローク経済の法則
 ストロークには,まるで経済学のような,「貧しいものはさらに貧しく,富めるものはますます富を増す」という法則が当てはまります。これは,「出し惜しみをせずにプラスのストロークを他人に与えていけば,回り回って自分にもプラスのストロークが返ってくる」ということです。つまり,できるだけプラスの言い方をした方が,相手にとっても自分にとっても,より良い人間関係の構築につながるのです。

 日々のコミュニケーションを振り返ってみてください。ポジティブな表現が多い人と,そうでない表現(否定的,後ろ向きな表現)が多い人とでは,どちらのコミュニケーションの方が受け取りやすく,気持ちよいでしょうか?また,良い印象を持つのはどちらでしょうか?やはり,ポジティブな表現が多い人ではないでしょうか。