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最も広く利用されている商用Linuxディストリビューションの一つ「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)の新版が登場した。新版のRHEL5には,企業システムや大規模システムでの実用を前提にした最新技術が盛り込まれている。その全貌をPart1とPart2の2回に分けて解説する。

 米Red Hat社は商用Linuxディストリビューションの新版「Red Hat Enterprise Linux 5」(以下RHEL5,写真1)を出荷した(関連記事)。現行版のRed Hat Enterprise Linux 4が出荷されたのが2005年2月であり,約2年ぶりの新版だ。2年間に及ぶLinux/オープンソース・ソフトウエア(OSS)の開発成果が反映された製品になる。

写真1●Red Hat Enterprise Linux 5
写真1●Red Hat Enterprise Linux 5
写真は,2006年11月に公開された,開発途中のバージョン(ベータ2)のデスクトップ。

 2006年末に来日した米Red Hat社上級副社長のTimothy Yeaton氏によれば,RHEL5で特に注目すべき新機能は,「仮想化によるサーバー統合を実現する『Xen』と,クライアントやサーバーの管理負担を軽減する『Stateless Linux』の2つである」という。後述するように,いずれも統合管理による運用コストの軽減を目的に開発されたソフトウエアであり,企業システムや大規模システムので利用が前提だ。

 ただし,RHEL5に搭載される新機能は,これまで日経Linuxで紹介してきたXenの利用法*1や,後述するCompizとAIGLXによるデスクトップ環境のように,個人のパソコンや小規模ネットワークにおいても,大きな導入メリットが期待できる。また,RHEL5を入手しなくても,RHEL5のベースになったFedora Core 6を用いて同等の機能を使うことも可能だ。

商用ディストリビューションの代表格

 RHEL5の新機能を解説する前に,「RHELとは何か」を簡単におさらいしよう。

 RHELは,2002年5月に最初のバージョン2.1*2が出荷された,商用Linuxディストリビューションである。“商用”とは,利用料が必要という意味であり,日経Linuxの付録メディアに収録している,フリーに(自由に,無償に)入手して使用できるLinuxディストリビューションとは一線を画す*3。商用Linuxディストリビューションの多くは,企業システムでの使用を前提に提供されている。

 RHELの場合は,RHELを提供するディストリビュータ(Red Hat自身)やコンピュータ・メーカー,システム・インテグレータなどと,RHELに関するサブスクリプション契約を結ぶことで利用できる。ここでのサブスクリプション(予約購読)とは,ソフトウエアのサポート(アップデート提供や技術支援など)を一定期間受けられるサービスである。

 RHELは,(1)その前身の「Red Hat Linux」(後述)のシェアを引き継いだ,(2)多くのベンダー(提供者)が存在する,(3)対応するハードウエアやアプリケーション・ソフトウエアが豊富である,などの理由から,企業システムで広く使用されている*4

 RHELには用途によって4種類の製品が用意されている。大規模サーバー向けの「RHEL AS」,小規模サーバー向けの「RHEL ES」,ワークステーション向けの「RHEL WS」,企業内クライアント向けの「Red Hat Desktop」である。主な違いは対応するCPUアーキテクチャ,利用可能なCPU数やメモリー容量,付属するソフトウエア,サポート範囲であり,基本機能は同じだ。

Fedoraの完成形に位置付けられる

 Red Hat社は,RHELを提供する以前には,「Red Hat Linux」というフリーのLinuxディストリビューションを提供していた。Red Hat Linuxは,最新のLinux/OSSで構成され,主にインターネット系のサーバーOSとして広く利用されていた。Red Hat社はその後,企業システム向けの商用LinuxディストリビューションRHELの提供に伴い,開発を支援するFedora Coreに最新のLinux/OSSをいち早く盛り込むようになった。

 こうした経緯から,RHELは企業システムでの利用を前提に安定性や信頼性を重視した商用Linuxディストリビューション,Fedora CoreはRHELに盛り込む最新機能をテストするためのフリーのLinuxディストリビューションという位置付けになる。いわば,Fedora Coreの完成形が,RHELになるわけだ。このたび登場するRHEL5は,Fedora Core 6をベースに開発されたものである。RHEL5の新機能のほとんどは,Fedora Core 6で先行して実装されている。

RHEL5に盛り込まれた新機能

 それでは,2006年11月に提供されたRHEL5の開発途中のバージョン(ベータ2)や,先行開発版とみなせるFedora Core 6に基づいて,RHEL5の新機能を見ていこう*5

 なお,REHL5に関する国内でのサービス内容については,日経Linux2007年11月号特集2「最強のサーバー・ディストリビューション決定戦」に,Oracleのサポートと対比する形態で詳しくまとめた。