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 Webが当たり前の時代になって,「知識」の習得方法は変わったのでしょうか。特に「Web」に関わる情報については,そう見えます。大抵の技術情報は,ネットさえあれば,自席や自宅で好きな時に参照できるようになりました。ツール等を使って適時保存さえしておけば,ネットさえ不要です。パソコンというか,外部記憶装置のようなものさえあれば,事足りるような気さえしてきます。これは,頭の中に格納しておくことの価値が変化してきているようにも思います。知るべきは,「どこから辿れば良いか」であって,知識やノウハウそのものではない,ような感さえあります。

 基本的には,理系の専門書のような扱いの書籍に,情報が蓄積されていたことの反動もあるかもしれません。技術革新が速すぎて,書籍化するまで待てないことや,書籍化できる人材が「開発現場」にしかいないという事情もあるでしょう。

ネットで探れば充分か:暗黙知と形式知

 用語の定義や,アプリケーションの使い方,TIPS(ちょっとしたテクニック),簡潔で有用なアルゴリズムなど,Webで事足りることは確かに多くあります。それをWeb越しに独学することは,いつでもできるという時間の拘束も外れ,とても力強い支援です。実際,これがなければ立ち行かない場面も多々あります。

 多くの情報がWeb越しに入手できるようになった現時点でも,私は時間が許す限り,リアルのセミナーに参加しています。結論から言えば,そこに,モニター画面で見える以外の情報があるからです。

暗黙知重視のセミナー方式と,形式知重視のWeb独学方式

 仮にセミナーに参加することで得られる知識を「暗黙知」,独学で得られるものを「形式知」と呼んで話を進めます。前者は,話し方,熱意,プレゼン資料の作り方と見せ方,会場の呼吸の読み方,など様々な講演者独自の方法に触れることができます。後者は,Web画面のレイアウトなどは統一されていないとしても,文書を読ませるという点で多くの共通点があり,かなり多くの方が適応可能で,習得可能な「基盤」的なものが提供されていると考えられるでしょう。

暗黙知と形式知の交互の波

 この「暗黙知重視型」と「形式知重視型」とは,どちらが重宝されるかという点で,時代的な波があるように思えます。大規模な「EXPO」が次々と開催されていた時代から,それが徐々に中小規模のプライベートセミナーやWebベースのセミナー中心の時代へと,私たちはその動きを目の当たりにしてきました。

 Appleが「MAC WORLD EXPO」への参加を辞め,プライベートセミナーに流れて行ったのは,その代表的な例でしょう。幕張メッセに,毎年のように通っていた歴史が,参加者の興味が失せる前に,行き先のほうから無くなってしまった衝撃は,決して小さなものではなかったはずです。

ソフトウエア・エンジニアリングの目的

 今後どちらの方向に進んでいくのかは,まだまだわかりませんが,セミナー参加型が廃れないだろう,あるいは廃れてほしくないという理由があります。

わざわざ会場に集う意味

 それは,Webサイト開発者の仕事と関係しています。Webサイト開発者の仕事は,一般的には,HTMLやイメージ(絵)を最終納品物とすると考えられているかもしれませんが,実態は少し違うといって差し支えないでしょう。

 HTMLやイメージは,最終的なエンドユーザーが目にするものです。しかし,その前に,Webサイト開発者が相手にする方々がいます。クライアント(発注者)です。その人たちに,これから作るものを説明し,了解を得て,納品時のチェックを行ってもらいます(最終確認は発注者責任ですので)。

 そのためには多くの,非常に多くのプレゼンの機会があるのです。時間と足を使ってセミナーに参加する理由は,ここにあります。自分が自分の設計したものを「伝える」方法を見に行っているのです。

プレゼンは総力戦

 Webで情報を発信するのに比べれば,実際のセミナーは,非常に労力が必要です。でも,もしかしたら,それは「本番(セミナーの場合は当日,Webの時には入稿)」までは,実は余り変わらない手間隙かもしれません。ただ「本番」は大きく違います。決められた時間内に,伝えたいことをキチンと伝えることが必要とされます。しかも,大きなものになるほど,会場にいる多くの方々とは一期一会なのです。

 クライアントへのプレゼンも基本的には一期一会です。重役プレゼンともなれば,全く同じ状況です。チャンスは一度きりしかありません。それは,大きな会社では,社内プレゼンでも言えることでしょう。その時に,キチンと伝えたいことを伝えることができること。それはどこかで訓練するしかありません。