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携帯電話事業への参入を目指していたアイピーモバイルが,サービス開始にこぎ着けられるか不透明な状況だ。筆頭株主が二転三転したうえ,株式の行き先を巡り経営陣の間で内紛が発生。最終的に杉村五男氏が筆頭株主に落ち着いたが,免許返上のタイムリミットまでの事業化には課題が残る。

 アイピーモバイルは10月2日に開催した臨時株主総会で,竹内一斉代表取締役社長など4人の取締役の退任を決めた。後任の社長には,前取締役会長の杉村五男氏が就いた。このほか元森ビル専務取締役で佐藤勝久事務所代表取締役の佐藤勝久氏とアイピーモバイルの元社員で現ワッショイ取締役の梶谷農氏が取締役に就任した。アイピーモバイルは,杉村新体制の下でサービス開始を目指す。

 ここに至るまで,アイピーモバイルを取り巻く環境は二転三転してきた(図1)。発端は,資金不足から事業の継続が困難になった4月。免許返上までを検討していたアイピーモバイルの救世主となったのが森トラストだった。4月10日に,親会社だったマルチメディア総合研究所が保有する全株式(発行済み株式の69.23%)を森トラストに譲渡することで合意したと発表した。

図1●二転三転したアイピーモバイルの筆頭株主
図1●二転三転したアイピーモバイルの筆頭株主
杉村五男氏への株式異動を巡っては,アイピーモバイル経営陣が一時内紛状態に陥った。10月2日に森トラストが召集した臨時株主総会で,経営陣から杉村氏に反対する勢力を一掃。直後の取締役会で杉村氏への株式の異動が確定した。

 当初,森トラストは「長期保有を前提とした投資」としていたが,実際の役割は「アイピーモバイルが次の株主を見つけるまでの時間稼ぐこと」(森トラスト関係者)。その狙い通り,7月13日に米ネクストウェーブ・ワイヤレスに全株式を譲渡することを決めた。

 ところがネクストウェーブは,米国の金融不安から資金調達で苦戦。9月19日に,全株式を森トラストに返却することを決めた。森トラストは,その株式をそのままアイピーモバイルの杉村氏に譲渡する契約を締結した。

 これに対し,杉村会長を除くアイピーモバイルの経営陣が猛反発。取締役会で杉村氏への株式譲渡を拒否したほか,竹内社長が杉村会長に辞任を要求するなど内紛状態に陥った。最終的に,森トラストによる筆頭株主の“強権発動”で経営陣から反対勢力を一掃。新体制発足直後の取締役会で,杉村氏への株式の異動を承認した。

依然と残る多数の難題

 ただアイピーモバイルを取り巻く環境は厳しい。総務省が免許交付時に,2007年11月9日までにサービスを開始しないと,免許返上という条件を付けていたからだ。サービス開始前には,事業継続の裏付けを含む開設計画の変更を総務省に申請する必要もある。

 アイピーモバイルが設置済みの基地局数はわずか7局。端末の調達もごく一部が済んでいるだけだ。この状態でサービスを開始しても,事業として継続できるか疑問符が付く。

 資金不足から事業継続が危ぶまれるとの判断を総務省から下される可能性もある。「森トラストからもネクストウェーブからも資金面の援助はなかった」(竹内前社長)ため,同社の手持ちの資金は4月時点から増えていないことになる。杉村新社長は早急に資金のめどを付ける必要がある。

 サービス開始期限の延長を総務省に申し出る手もあるが,総務省は「期限の延長には自然災害の被害などの正当な理由が必要」とのスタンス。インフラ整備と資金調達の遅れが正当な理由に当たるとするのは,やや無理がある。経営体制は落ち着いたものの,事業的に八方ふさがりになりかねない懸念がある。