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 要件を半分に絞り込むしか、残された手はない――。

 07年初め、郵政公社の間瀬理事と吉本理事、山下理事らIT部門幹部は、こう覚悟を決めた。07年10月に新規稼働させる人事システムのことである。63プロジェクトから成る暫定対応の中で、最も稼働が危ぶまれた。

 「人事部門主導で進めるのは難しいと、あれだけ言ったのに」。3人は憔悴しながら、対応策を練り始めた。

 そもそも郵政公社が人事システム刷新の検討を始めたのは02年から03年にかけてのこと。郵政事業庁の時代までさかのぼる。03年4月に日本郵政公社が誕生するのを機に、人事システムの全面刷新に向けた検討を始めたのだ。郵政民営・分社化の議論が本格化する前である。

 当時、人事関連のシステムは20弱に分かれていた。約28万人(当時)という職員数、逓信省から郵政省、郵政事業庁、郵政公社と省庁再編を繰り返してきた経緯、特定郵便局など独特の組織形態の存在などから、システムは複雑になっていた。

 システムの全面刷新を決めた郵政公社は03年12月、再構築案件の競争入札を公示。04年2月にNTTコムウェアが45億1497万9000円で落札した。この段階で、現在は日本オラクルの製品となったERPパッケージ「People-Soft」の採用が決まった。

 NTTコムウェアは、日本電信電話公社が民営化した際にNTTの人事システムの開発を担当した実績を生かせると考えていた。PeopleSoftを担いだのも、NTTグループの人事システムで導入実績があったからだ。

人事部門がプロジェクトを仕切る

 そうして04年2月から開発が始まった(図1)。稼働予定は06年4月である。

図1●人事システムの開発経緯
図1●人事システムの開発経緯
要件を半分に絞り現行システムを使い続けることで、完成のメドをつけた
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 実は、プロジェクトは当初から人事部門が主導となって進めた。郵政公社は、他の官公庁などと同様に、事業部門ごとの縦割り意識が強い。しかも、一般会計、特別会計など、官庁特有の複雑な人事制度を残しており、詳細な情報が人事部門から出てこなければ、IT部門が手を出すことはできない。

 人事部門がシステム開発を主導するのは容易ではない。案の定、プロジェクトは開始早々つまづく。複雑な人事業務の要件をPeopleSoftに実装するのに手こずったのだ。

 郵政公社の人事部門は、人事業務の要件は分かるがシステム開発プロジェクトには慣れていない。NTTコムウェアの技術者は、PepoleSoftには精通しているが郵政公社の人事要件の詳細は分からない。「人事業務は、組織のカルチャーの影響を特に受けやすい。郵政公社とNTTでは、業務用語1つとっても、表現や意味が大きく違っていた」(プロジェクト関係者)。両者のコミュニケーション・ギャップは、あまりに大きかった。