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 今回は,実際に仮想化環境を運用管理して行く上で有用なツールを紹介していく。ツールには大きく分けて表1のようなタイプがあり,それぞれには以下のような特徴がある。

表1●仮想化環境を運用管理して行く上で有用なツールのタイプと例
表1●仮想化環境を運用管理して行く上で有用なツールのタイプと例
仮想化環境の運用管理では,それぞれのタイプの特性を理解して適切に使うことが重要である。 [画像のクリックで拡大表示]

・仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエア

 仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアは,その名の通り仮想化の基盤部分であるVMM(Virtual Machine Monitor)やハイパーバイザーや仮想マシンなどを管理するためのソフトウエアである。もちろん,これらのソフトウエアは仮想化されていない物理的なサーバーなどを管理できない。また残念ながら,異なったベンダーの仮想化ソフトウエアをまとめて管理することも,オープンソースで開発されているVirtual Machine Manager以外にはできない。ただし同一のベンダーの製品を管理する場合に提供される機能は,後述する他のソフトウエアなどと比較して最も充実しており,多くのケースで仮想環境の運用管理には必須のツールとなっている。

・サーバー管理ソフトウエア

 サーバー管理ソフトウエアは,その名の通りサーバーを管理するソフトウエアである。主要なOSに仮想化機能が標準搭載されていくなかで,サーバー管理ソフトウエアにも仮想化環境の管理機能が追加されていく傾向にある。特に仮想環境型もしくはコンテナ型と呼ばれる仮想化環境を提供するソフトウエアと,この種のツールとの組み合わせは,レンタル仮想サーバーであるVPS(Virtual Private Server)を提供するプロバイダーなどでの利用において効果を発揮している。

・統合運用管理ソフトウエア

 比較的大規模なシステムの運用管理に従来から利用されてきた統合運用管理ソフトウエアには多くの場合,最初から仮想化環境を管理する機能が搭載されるか,または対応のために必要なアドオン・パッケージなどが用意されている。

 統合運用管理ソフトウエアの中には,仮想環境を管理する機能を,仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアと連携することで実現しているものも多い。このタイプの製品は,既存のシステムと組み合わせて仮想化環境を利用する場合などには,とても有用である。

 統合運用管理ソフトウエアの拡張性は非常に高い。仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアには含まれないインシデントや問題の管理データベースや大規模な構成管理データベースなどを搭載している製品が多い。

・自律運用ミドルウエア

 自律運用ミドルウエアは,その名の通り運用管理に自律運用(Autonomic)技術を導入するためのミドルウエアである。新しいカテゴリの製品であるため,導入事例が少ないという問題があるが,今後のシステム運用管理を考える上で導入を検討すべきツールである。また多くの統合運用管理ソフトウエアがその進化の方向として自律運用機能を搭載している。

 仮想化環境の運用管理では,ここに挙げた4つのタイプの管理ツールの特性を理解して適切に使うことが重要である。

仮想インフラ管理ソフトは不可欠

 このように各種ある運用管理ツールを実際にどのように選んで導入していけばよいだろうか。考慮すべき点として,もちろん導入コストが挙げられるのだが,ほかにもいくつかポイントがある。

 まず気をつけたいのは,運用規模が極めて小さい(数台の物理サーバーで構成された環境など)場合でも,可能な限り仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアを導入することだ。仮想化でもたらされるメリットの多くが,このツールなしでは享受できないからである。

 仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアを利用すれば,仮想化に対応した構成・変更・リリース管理が行えるだけではない。加えて,その監視やレポート作成機能を使ってサービス・レベル管理やキャパシティ管理に必要な情報を得ることができる。さらにアドオンなどで提供されている場合もあるが,動的なリソース管理機能やHA機能を搭載している製品では,可用性管理やインシデント管理ができる。

 同じ理由から,統合運用管理ソフトウエアを従来から利用しているのであれば,躊躇せず仮想化に対応したアドオン・パッケージなどを導入すべきである。

ツールの導入ではエージェントに注意

 ツールを選択した後,実際の導入段階では,運用管理ソフトウエアのエージェント・ソフトウエアの利用方法を検討していく必要がある。エージェントは運用管理対象のマシンに導入するモジュールで,監視対象マシンから情報を取得したり,監視対象マシンを遠隔操作したりする機能を提供する。

 エージェントに関して,まず検討すべき事柄に,どこにどの運用管理ソフトウエアのエージェントをインストールすべきかということがある。

 図3に示すように多くの場合,仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアは,仮想環境を提供するソフトウエアの管理OS上に組み込んだエージェントと通信している。また仮想化したサーバー上のOS(以降ゲストOS)の情報は,専用のドライバやエージェントなどをゲストOSにインストールすることで,管理OSにインストールされたエージェント経由で受け取っている。そのため,仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアを使う場合はゲストOS側に,管理OSのエージェントと通信するための専用ドライバやエージェントをインストールする必要がある。

図3●仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエア
図3●仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエア
仮想サーバー上で稼働するOS(ゲストOS)の情報は,管理OSのエージェントと通信するための専用のドライバやエージェントなどをゲストOSにインストールし,管理OSにインストールされたエージェント経由で受け取る。

 一方で統合運用管理ソフトウエアを使う場合は,ゲストOSに統合管理運用ソフトウエアと直接通信するエージェントをインストールすることが多い。なぜなら統合運用管理ソフトウエアには,管理OS側にインストールしてゲストOSを管理できるエージェントを持つ製品は,仮想化環境の運用管理に対応する製品でも少ないためだ。現実には管理OS側から取得する必要がある情報は,仮想インフラストラクチャ管理ソフトウエアと連携することで入手することが多くなる。

 エージェントに関する注意点として,ゲストOS側のエージェントが送るリソース情報に精度や値の問題がある場合があることも挙げられる。

 まず基本的にCPU使用率やストレージやネットワークのI/O使用率の監視に使う時間計測の精度が低い。またメモリーやストレージの残量に関しても,仮想化によってゲストOS側に,メモリーやストレージの搭載量が実際より大きな値を渡されている場合がある。

 こうした問題の対策として,設定で仮想サーバーに割り当てるメモリーやストレージを常に一定量に固定することが考えられるが,仮想化のメリットの1つである柔軟性を失うことになるため,その影響を十分に評価する必要がある。

 ただし,管理OSとゲストOSの両方からリソース情報を得られる構成にしておけば,これらの問題が発生しても対処できる。


日本仮想化技術 伊藤 宏通(いとう ひろみち)
 前職でシステムエンジニアとして幅広い分野でソフトウエアおよびハードウエア開発を行った後,仮想化技術への熱い思いから日本仮想化技術株式会社の設立に加わる。現在は,オープンソース・ソフトウエアを多用した仮想化環境構築基盤の開発などにCTO(最高技術責任者)として従事。