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 仮想化環境を導入しても,バックアップが運用管理の中で特に重要であることは同じだ。今回は,仮想化環境のバックアップについて解説していこう。

 まず仮想化環境のバックアップに使うソフトウエアを選択する必要がある。仮想化環境のバックアップでも,既存のバックアップ・ソフトウエアは多くの場合そのまま利用できる。その場合,バックアップ・ソフトウエアのエージェントは仮想化したゲストOS上にインストールし,ゲストOSを物理マシン環境と同じように扱えるという特徴がある。

 最近では,エージェント・ソフトウエアを管理OS上に導入することをサポートしたバックアップ・ソフトウエアも増えている。ただし,管理OSからは物理サーバーに接続したテープ・デバイスやテープ・ライブラリをほとんどの場合に操作できない。よって現状ではバックアップ・ソフトウエアのサーバー側モジュールは,仮想化していない物理サーバーにインストールすることが多い。

 次はバックアップ先を含めたバックアップ・システムを考える。図4に示すように仮想化環境のバックアップには5つの方式がある。

図4●バックアップ・システムのタイプ
図4●バックアップ・システムのタイプ
仮想化環境のバックアップには5つの方式がある。最近よく利用されているのはタイプBとタイプC。 [画像のクリックで拡大表示]

 このうち,最近よく利用されているのは,テープ装置を備えたバックアップ・サーバーを設置してネットワークで接続するタイプBと,テープ装置やバックアップ・サーバーをSAN(Storage Area Network)で接続するタイプCである。非常に大規模であったり,コストをかけられたりすれば,ストレージ装置やストレージ仮想化装置が持つバックアップ機能を利用するタイプDやタイプEも検討すべきである。

・システム全体レベルのバックアップ

 仮想化環境では,従来に比べてシステム全体のバックアップを取ることが容易である。今までであればサービスをいったんすべて停止したり高価なストレージ装置のスナップショット機能を利用したりする必要があった。一方,多くの仮想化ソフトウエアはシステム全体のスナップショットを,仮想サーバーをほとんど停止させないで取得できる。

 このスナップショットを管理OS上のエージェントやSAN上に接続されたバックアップ専用機のエージェントを経由してバックアップ・サーバー・ソフトウエアに渡すことでシステム全体をバックアップ可能だ。

 特に図5で示したSAN上を経由するバックアップは,LANフリー・バックアップと呼ばれ,ネットワークや仮想化環境にかかる負荷が抑えられるので仮想化環境のバックアップ方法として推奨されている。

図5●LANフリー・バックアップの概要
図5●LANフリー・バックアップの概要
ネットワークや仮想化環境にかかる負荷が抑えられるので仮想化環境のバックアップ方法として推奨されている。

 残念ながら,システム全体のバックアップにおいて,差分バックアップに対応している仮想化ソフトウエアは,記事執筆の時点では確認できなかった。原理的には可能である。

・ファイル・レベルのバックアップ

 全体バックアップに比べて,個別ファイルを対象にしたバックアップとその差分バックアップには,いくつか注意すべき点がある。

 まず管理OS上やSANを経由する仕組みの場合,ファイル・レベルのバックアップに対応した仮想化ソフトウエアは少ない。それを使う場合もたいていは,ゲストOS上にエージェントをインストールする必要があり,バックアップ時にネットワークや仮想環境に許容できない大きな負荷がかかりがちだ。

 またリストアの際にかかる手間がシステム全体のバックアップと比較して大きくなる。もちろん利点として,差分バックアップが容易であることや,リストアの際に細かな操作が可能であることがある。よって,ファイル・レベルとシステム全体のバックアップを状況によって組み合わせて運用するべきである。

・ストレージ・レベルのバックアップ

 ストレージ装置やストレージ仮想化装置の持つバックアップ機能を利用すると,管理OSも含めた仮想化ソフトウエア全体のバックアップが比較的簡単に行える。ただし,装置が高額であったり,製品によっては仮想化環境のバックアップに対応していなかったりするものがあるので注意する必要がある。

・チェックポイントを含むバックアップ

 仮想化ソフトウエアによってはチェックポイントと呼ばれる特定の時点での仮想サーバーの状態を,CPUやメモリー,ストレージ,ネットワークなどの広い範囲にわたり保存する機能を持つものがある。この保存されたチェックポイントを含むバックアップを行うことで,インシデントや問題管理,さらにセキュリティ管理に役立つ場合がある。