PR

 前回は調査委員会の内容が危機レベルの高低によって大きく3つに分類できることをご説明いたしましたが、調査委員会の多様性はそれだけにとどまりません。その守備範囲の観点からもついてもさまざまな多様性がみられます。

 調査委員会で行われることの一連の流れとしては、下記の図にあるように「原因究明」、「対策立案」、「モニタリング」の3つのフェーズがあります。原因究明のフェーズとは、なぜそんな問題が起こってしまったのかきちんと調査分析する段階です。次に責任の所在を明確にし、二度と同じような事件を起こさないためにはどのような対策が必要かを考え立案する対策立案のフェーズがきます。そして立案した対策を取締役会などにリコメンデーションした後、どのような形で実行されているかをチェックするモニタリングのフェーズ。

 これら3つのフェーズが調査委員会の基本的な守備範囲ですが、すべてのフェーズをカバーするようなケースは少なく、一般的な調査委員会は図の原因究明から対策立案の途中までを任務とすることが多いようです。図で対策立案の半分までしか矢印を引いていない理由は、第三者調査委員会がいろいろ調べて提出したアウトプットが、必ずしもその会社の実態に即していない場合があるからです。つまり、第三者調査委員会のアウトプットはどうしても「外部からみたらこういう対策を取るのがよいと思います」というレベルにとどまるので、本当に実行可能なものにするにはさらに会社の中で作り込みを行う必用があるわけです。

 実際に設置された調査委員会の活動内容を見ていくと、いろいろなパターンがあります。例えば不正会計が発覚して設置された日興コーディアルグループの特別調査委員会では、同グループで行われた過去の行為について幅広く分析し、その内容を調査報告書で詳細に公表しています。これはとにかく原因を調べ、問題の所在を明らかにすることに多くのエネルギーを費やしたものです。

 消費期限切れ原材料の使用が大きく報道された不二家のケースでは、並行して2つの調査委員会を走らせていました。まず事件発覚後に設置された「外部から不二家を変える会」。これは弁護士や消費者団体の方など、いろいろな外部の有識者を招いて「まずは不二家に対して言いたいことを言って下さい」と、外から見た不二家について思いを話していただくというものです。

 一方で不二家は「信頼回復対策会議」を立ち上げました。こちらは純粋に期限切れ原料の使用など一連の問題がなぜ起きたのか、その原因の究明と対策についてリコメンデーションしてもらうためのものです。後者の信頼回復対策会議からレポートが出されたところで、これら2つの委員会はいったん終了しました。

 しかし、ここで終わってしまってはまだまだ不二家の信頼を回復することはできません。打ち出された対策が本当に実行されているのか、外部の人によってきちんとモニタリングされていないと信頼を再び獲得することは困難です。そこで外部の有識者を中心に、改めて「不二家の発展を見守る会」がつくられました。以上のような形で不二家では原因究明から対策立案、モニタリングに至る一連の流れを、外部委員会が会社のマネジメントをフォローしています。

 前回は危機レベルの高低で調査委員会の種類をカテゴライズしましたが、今回お話したように、その目的や守備範囲によっても調査委員会はさまざまなバリエーションが存在することを、頭の片隅にでも覚えておいていただければと思います。

注)当コラムの内容は、執筆者個人の見解であり、所属する団体等の意見を代表するものではありません。

**お知らせ**
 このコラムの執筆者、秋山進氏が、2007年10月30日(火)に、東京・港区のトスラブ山王で『「企業理念と社会規範の統合」のためのコンプライアンスプログラム』について講演を行います。 ご興味のある方はぜひ聴講をご検討下さい。
詳細・お申し込みはこちらです。

秋山 進 (あきやま すすむ)
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
マネージングディレクター
リクルートにおいて、事業・商品開発、戦略策定などに従事したのち、エンターテイメント、人材関連のトップ企業においてCEO(最高経営責任者)補佐を、日米合弁企業の経営企画担当執行役員として経営戦略の立案と実施を行う。その後、独立コンサルタントとして、企業理念・企業行動指針・個人行動規範などの作成やコンプライアンス教育に従事。産業再生機構の元で再建中であったカネボウ化粧品のCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)代行として、コンプライアンス&リスク管理の体制構築・運用を手がける。2006年11月より現職。著書に「社長!それは「法律」問題です」「これって違法ですか?」(ともに中島茂弁護士との共著:日本経済新聞社)など多数。京都大学経済学部卒業