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 「ペルソナ」(persona)というマーケティング用語をご存知だろうか。直訳すれば「仮面」「人格」といった意味を持つこの言葉が、にわかにマーケティング担当者の耳目を集めている。

 十数年前からソフトウエアの設計やデザインなどの分野では、「架空のユーザー像」、「顧客像」を意味する言葉として使われてきた。近年、この架空の顧客像を用いたマーケティング分野での活用が増えつつある。記者も今春から「ペルソナ」を、商品やサービスの開発に生かす手法を取材してきた。

 定量的なデータから、会社にとって重要な顧客セグメントを見つけ出し、その中から数人の定性的なデータを、インタビューしたり商品の利用状況を観察したりといった方法で取得する。定量・定性の両方のデータを組み合わせてペルソナを作り、彼(もしくは彼女)が満足するように商品を設計する。これが一般的なペルソナを用いたマーケティングだ。ペルソナを記述するシートには、名前や趣味、価値観を示すエピソードが書き込まれ、ペルソナのイメージに近い写真も張られる。このシートを見てマーケティング担当者が、ペルソナに感情移入することが狙いとなる。

 データマイニングなどCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムを活用したものと異なるのは、具体的な顧客像をイマジネーションを駆使して作り、担当者自らがその顧客像の立場で商品やサービスを検討するというアナログさだ。年齢や収入といった属性や購買履歴といった過去のデータだけにとらわれずに、顧客の価値観や性格、発言を重視したものとなる。

 記者は今年3月に出版された『ペルソナ戦略――マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』(ジョン・S.プルーイット著 ダイヤモンド社)を読んで興味を覚え、取材を始めた。だが、ペルソナを巡る取材は難航した。米国では普及しているらしいが(関連記事)、国内では取材先がなかなか見つからなかった。実践している企業も少なく、現在取り組んでいる企業にとってもペルソナは戦略の核。容易には明かしてくれない。

 それでも興味深い取り組みについて話を聞くことができた。子供向けの情報発信サイトの構築に小学生と保護者、教師のペルソナを作った富士通(関連記事)や、大規模なアンケート調査からインタビュー対象を発掘して4つのペルソナを作り上げた南都銀行(関連記事)などだ。横浜デジタルアーツ専門学校(横浜市)は、生徒ペルソナを基にカリキュラム改善に生かして成果も出している(関連記事)。

 取材は日経情報ストラテジー10月号の「特集1 究極の顧客像を構築せよ『ペルソナ』マーケティング」にまとめたが、書き切れなかったことが2点ある。1つは、ペルソナの正しい作り方、そして使い方だ。間違えたペルソナを作ってしまったらマーケティング戦略は破綻するかもしれない。それにただ作るだけではなく、その後のペルソナを使った戦略も重要になってくる。こうした正しいステップも紹介せねばと思い、日経情報ストラテジーの2008年1月号からは「10分間で学べる業務革新講座」という連載をスタートさせる。ペルソナに詳しい研究者やコンサルタントに筆をふるってもらう。

 もう1つ特集で書き残したのは、「ペルソナ」を使ったマーケティングが実に楽しそうであったこと。自分たちの手で人物像を作り上げる、そしてのその人物の気持ちになって商品やサービスを改めて見直す――。この行為自体が新鮮であるという。あるコンサルタント氏は「和気あいあいと担当者がペルソナを作る過程だけでも十分に価値がある。メンバー全員の消費者に対する理解も進むし、チームワークも深まる」と指摘していた。

 そこで11月9日(金)に「ペルソナ」マーケティングを紹介するセミナーを企画した。実際にペルソナを作り、ビジネスモデルの革新に挑んだ企業の担当者らに、彼らの言葉で語ってもらう。IBMで「ThinkPad」シリーズの開発にペルソナを持ち込んだ山崎和彦・千葉工業大学教授の基調講演にはじまり、カルビー、ビジョンメガネ、内田洋行と続く。カルビーのヒット商品「ジャガビー」開発の裏にもペルソナがあった(関連記事)。お菓子から補聴器まで幅広い業種でのペルソナ事例の講演になる。多くの人に「ペルソナ」マーケティングの楽しさと可能性を知ってもらえたらと思う。