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 TCP/IPによる通信スループットの向上技術を「TCP/IP高速化技術」と総称する。こうした技術は「PEP(Performance Enhancing Proxy)」と呼ぶ製品群に搭載されている。PEPの代表は,Webシステムのレスポンス時間を改善する「Web高速化装置」や,WAN経由のファイル共有を実現する「WAFS(Wide Area File Services)装置」など。どちらもこの数年で多くの企業に導入されてきた。

出番は長距離通信だけでない

 TCP/IP高速化技術の活用が進んだ背景にあるのは,サーバー統合やストレージ統合の流れである。例えば,アクサ生命保険は2006年5月,全国の拠点に点在していた300台以上の業務システムやファイル・サーバーをオーストラリアのデータセンターに集約した。日本からオーストラリアのデータセンターまでは,グループ企業のATM(Asynchronous Transfer Mode)網経由で接続するが,遅延は200ミリ秒ほど。この遅延の影響を回避すべくTCP/IP高速化技術を採り入れた。

 米Juniper NetworksのWAN高速化装置「WXC」を,日本側とオーストラリア側に対向で配置した。すると,帯域は45Mビット/秒であるにもかかわらず,実効スループットは2倍の90Mビット/秒を超えた。「LANでアクセスしていたのと遜色ないレスポンスを達成できた」(移行プロジェクトを指揮したアクサテクノロジーサービスジャパン サービスデリバリ テクニカルサービス ヘッド 飯島寛氏)という。

 TCP/IP高速化技術の出番は,長距離通信だけではない。最近主流のベストエフォート型の高速インターネット接続サービスでは,「同一地域内でも10 ミリ~20ミリ秒の遅延が生じることは珍しくない」(リバーベッドテクノロジー 技術部長服部征一氏)からだ。これだけの遅延は,専用線で東京-大阪間を接続したときの遅延に匹敵する。回線品質も低めなので,ノイズなどの影響で「ビット反転→ パケット破棄→再送」が生じやすい。結果的に,スループットが頭打ちになる。TCP/IP高速化技術は,こうした局面を打開するためにも使える。

 現場で活用されるTCP/IP高速化技術を見てみると,2種類に分けられる(表1)。(1)遅延に代表される無駄を省く技術と,(2)送信データ量を削減する技術である。(1)は,TCP/IPの仕組みをほぼそのまま踏襲しながら高速化を図ることが多い。これに対して(2)は,TCP/IPの枠組みにとらわれることなく,ベンダーなどが独自の仕組みを持ち込んでいる。次回以降,両技術について説明する。

表1●TCP/IPのスループットを向上する技術
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表1●TCP/IPのスループットを向上する技術