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アカウントプランの中に描く営業プランは、顧客本位のものでなければなりません。つまり、営業パーソンが目標を達成するために、顧客に対してどのような営業活動を行うのかという視点ばかりではなく、顧客が抱えている課題を解決するために、どのような提案活動を推進するのかという視点から立案する必要があるのです。

 アカウントプランに盛り込む内容には、前回ご紹介した「アカウントの概要」のほかに、「営業活動についてのプラン」が挙げられます。営業パーソンにとって営業プランといえば、見込み案件に対する受注までの活動計画や、毎回の商談プランを思い浮かべることが多いでしょう。しかし、アカウントプランに描く営業活動についてのプランとは、もっと大局的で長期的な視点から顧客へのソリューション提案活動をとらえた内容でなければなりません。

 しかも、「自分の業績を上げるためにどうするか」という提供者側の論理ではなく、「(顧客の)課題を解決するためにどうするか」という顧客側の論理に基づいたプランであることが肝心です。それでは、「提供者側の論理から脱却して、顧客側の論理でプランを立案するにはどうすべきなのか」を軸に、営業活動についてのプランの作り方を解説していきましょう。

自社の方針に基づくことが営業戦略策定の前提

 営業活動についてのプランは、顧客の状況や顧客が抱えている課題を前提とした顧客本意のプランであることが重要とはいえ、それが営業パーソンの会社の方針に反したものであっては、せっかくのプランも実行することはできません。つまり、営業活動のプランを考えるにあたっては、会社の方針や営業パーソンが所属する部門の方針を踏まえておく必要があるのです。

 例えば、会社の方針として「利益率の向上」が掲げられ、利益の確保が最優先課題であると仮定します。営業パーソンはアカウントプランを作成する際に、利益率の向上を大前提として、営業戦略を立案することが必須条件になります。ところが、実際にアカウントプランを作成しようとする場合、次のような考え方に陥ってしまうことが容易に想定できるのです。

 「この顧客との取引金額は他の顧客に比べて圧倒的に大きいのだから、利益率は他の顧客より低くても、利益貢献度では大きなものがある。利益率の向上という会社方針をこの顧客に当てはめて考える必要はない」「新規に取引を開始したばかりの顧客であり、実績を作ることが何よりも大切な時期である。今は少しくらい利益率が低くても、長い目で帳尻を合わせればよいだろう」などといった具合です。

 しかし、こうした考え方は間違いです。営業パーソンは、会社方針や部門方針の実現と顧客の課題解決を同時に達成させることが求められます。顧客本位のプランを立てるに当たっても、会社の方針を理解したうえで顧客の課題解決を考えることが求められるのです。

営業戦略をチームアカウントの羅針盤に

 アカウントプランに描く営業活動についてのプランでは、に示したように対象顧客に対する「営業戦略」を明確にすることから始めます。まず、上記した「会社・部門の方針」を明記します。そのうえで、当該年度における顧客への営業活動を行う上で、どのような考え方に基づいて活動していこうとするのか、目指す方向は何かを「顧客に対する営業方針」として示します。次に、当該年度の「目標」として、受注・売り上げ・利益などの目標や、顧客のIT予算に対する自社のシェア目標などを設定します。

図● アカウントプランに盛り込む「営業活動についてのプラン」の一例
図● アカウントプランに盛り込む「営業活動についてのプラン」の一例
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 大切なことは、顧客が何に取り組もうとしているのかという経営課題に基づき、ソリューションを想定したうえで数値目標を設定するということです。つまり、顧客の視点から解決すべき課題を明確にし、その解決策を提供するためにどのくらいの受注・売り上げの可能性があるのかという、顧客の課題から発想した 目標を設定するのです。そして、既に案件化しているものだけを目標設定の根拠とするのではなく、案件化していない仮説レベルの課題を数多く抽出したうえ で、総合的な観点から目標を設定します。

 顧客に対する営業方針・目標を設定したならば、それを達成するための「戦略課題」を明確にします。この場合の戦略課題とは、顧客の課題ではなく営業パーソン側の課題であることは言うまでもありません。つまり、営業方針を実現し目標を達成するために、営業活動を進めるうえでどのような課題に取り組む必要があるのかを明確にするのです。

 顧客に対する営業方針・目標・戦略課題を明確にすることは、営業パーソン個人にとって必要というだけではありません。営業パーソンが顧客に働きかける際のよりどころとなることはもちろんですが、その重要性は個人レベルにとどまるものではありません。

 顧客へのソリューション提案活動では、技術者をはじめとして顧客にかかわりを持つ“協力者”は数多くいるはずです。ビッグユーザーを対象にする場合には、複数の営業パーソンが同一顧客をアカウントすることも少なくありません。このような場合には、個々バラバラに営業活動をするのではなく、統一方針に基 づいて営業活動を推進することが重要になります。その際に重要な役割を果たすのがアカウントプランであり、「営業戦略」の項目なのです。

 従って、特にビッグユーザーのアカウントプランを作成する際には、営業パーソンが一人で考えるのではなく、同じ顧客をアカウントする営業パーソンが集まり、技術者も巻き込みながら衆知を結集することが大切です。このプロセスを踏むことで、社内のコンセンサスを得ることが可能になり、営業活動を円滑に推進するための体制作りにもつながるのです。チームアカウントを推進する際の羅針盤として、「営業戦略」は大きな役割を果たすことになります。