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 前回は,不正アクセスとフィッシング行為の観点から個人情報保護対策について取り上げた。今回は,フィッシング行為につきものの迷惑メールへの対策に焦点を当ててみたい。

急増する携帯電話宛の海外発迷惑メール

 迷惑メールを規制するために施行された「特定電子メール法(正式名称は特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)」は,広告・宣伝メールの送信基準を受信者側の拒否の有無とする。その上で,受信を拒否した者への特定電子メールの再送信を禁止する「オプトアウト方式」による規制を採用している。それでも,迷惑メールは年々増加し続けている。

 筆者の場合も,迷惑メールの数が増えて,ISP(Internet Service Provider)が提供する迷惑メール・フィルタなしには,済ませられないような状態である。複数のメール・アドレスを使い分けていても,いつの間にか同じような迷惑メールが送信されてくることが多い。受信拒否の通知を出すと,今度は別の迷惑メールが送信されるのではないか。筆者と同じように,そうした不安を感じる人も多いのではないだろうか。

 総務省は,「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」を開催し,特定電子メール法施行後の迷惑メールの状況の変化や法制度の在り方,電気通信事業者の取り組みの在り方,利用者への周知啓発等の対応策を検討している。2007年10月30日にその中間とりまとめ案が公表され,11月30日まで意見を募集しているところだ。

 このとりまとめ案で指摘されている傾向としては,海外発迷惑メールの急増がある。パソコン宛の海外発メールは以前から目立っていたが,今年に入ってから携帯電話宛メールの増加が顕著になっているという。携帯電話の受信/拒否設定機能を上手に使いこなしているユーザーは気付かないかもしれないが,移動体通信のキャリアや初心者ユーザーにとっては由々しき問題である。

 中間とりまとめ案では,オプトアウト方式の是非も論点であり,今後の迷惑メール対策法制を左右する問題となっている。欧州では,受信者の同意を得ない広告・宣伝メールの送信を禁止する「オプトイン方式」を採用している国が大半だ。米国は原則としてオプトアウト方式を採用しているが,携帯電話についてはオプトイン方式を採用している。法制の見直しが行われたら,メール・マーケティングへの影響が大きいだけに注意が必要だ。

ユーザーの迷惑メール対策動向も注視せよ

 第69回で,財団法人日本データ通信協会の「迷惑メールに関してのアンケート調査」を紹介したが,2007年9月28日に「平成19年度迷惑メール受信状況についての調査」のアンケート結果が公表されている。一年前と比べて受信する迷惑メールの件数が増えたという回答者が,パソコンユーザーの70%,携帯電話ユーザーの53%を占めている。平成18年度調査結果(パソコンユーザーで79%,携帯電話ユーザーで74%)と比較すると減ったように見えるが,フィルタリングなどの迷惑メール対策機能を無意識のうちに利用しているユーザーも増えているので,一概にそうとは言えない。

 むしろ注目すべきは回答結果に,パソコン,携帯電話とも,複数の機能を組み合わせて迷惑メール対策を行うユーザーの姿が反映している点だ。クライアント・パソコンのセキュリティ・ソフトやメール・ソフトの機能だけでなく,ISPの提供するサービスも利用し,さらにメール・アドレス変更や複数のメール・アドレス使い分けを行っているのである。

 メール・マーケティングに携わる企業の個人情報管理者は,個人情報や迷惑メールに関わる法制度だけでなく,対策を行うユーザーの動向にも注意を払うべきだ。法律上の課題をクリアしても,ユーザーの受信箱まで到達できないプロモーション・メールを作成したのでは意味がない。

 次回は,電子メールをめぐる個人情報漏えい事件を取り上げてみたい。


→「個人情報漏えい事件を斬る」の記事一覧へ

■笹原 英司 (ささはら えいじ)

【略歴】
IDC Japan ITスペンディングリサーチマネージャー。中堅中小企業(SMB)から大企業,公共部門まで,国内のIT市場動向全般をテーマとして取り組んでいる。医薬学博士

【関連URL】
IDC JapanのWebサイトhttp://www.idcjapan.co.jp/