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顧客が抱えている真の課題は何か。顧客の現状を多面的にとらえることにより、本当に解決すべき顧客の課題や優先順位が見えてきます。そのために営業パーソンは、さまざまな分析手法を修得し、アカウントプラン作成の際に駆使することが求められます。今回は分析手法の一番手として、SWOT分析について解説します。

 顧客が抱えている課題には、営業パーソンが既に把握しているものあれば、つかみきれていないものもあります。顧客の内部で顕在化しているものもあれば、潜在的な課題もあるでしょう。営業パーソンは日々の営業活動で顧客の課題を発掘し、案件化するのが任務であるといえます。

 そのためには、あらゆる角度から顧客を分析し、仮説を立てて商談に臨むことが重要です。アカウントプランの中で顧客の課題を体系的に整理し、営業活動によって仮説を日々検証するサイクルを回すことが肝心なのです。

 顧客の課題を体系的に把握するためには、二つのステップを踏む必要があります。多面的な角度から顧客の現状を分析して、より多くの課題を抽出するステップと、抽出した課題を体系的に整理・体系化するステップです(図1)。それぞれのステップにおいて活用すべき手法がありますので、本号と次号の2回にわたって解説していくことにします。

図1●顧客の課題の抽出方法
図1●顧客の課題の抽出方法

「強み」「弱み」「機会」「脅威」の視点で分析

 顧客の課題を抽出するためのアプローチとしては、SWOT分析を用いる方法と直接課題分析による方法の二つを考えることができます。SWOT分析とは、顧客の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」、「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」を分析する手法であり、直接課題分析とは顧客の公開情報や営業パーソンがヒアリングによって収集した情報から、顧客の課題を抽出する方法です。

 SWOT分析における顧客の強みと弱みの分析は内部環境分析であり、機会と脅威の分析は外部環境分析と言い換えることができます。つまり顧客の内部環境と外部環境についてそれぞれ二つの要因を分析し、その結果として顧客が解決すべき課題を抽出するのがSWOT分析です(図2)。それでは、SWOT分析の手順に沿って、解説を進めましょう。

図2●SWOT分析の概要
図2●SWOT分析の概要

外部環境分析による顧客課題の抽出

 まずは外部環境分析を見てみましょう。顧客の外部環境については一般環境、業界環境、顧客環境、競争者環境の四つの視点から分析することを4月30日号で述べました。今回はそれぞれの視点について、その詳細について見ていくことにします(図3)。

図3●アカウントプランにおける「外部環境分析」の一例
図3●アカウントプランにおける「外部環境分析」の一例

 一般環境の分析とは、政治・経済・法律・文化などの諸要素から、顧客に与えるインパクトを検討することです。例えば、政治的な要素でいえば、日本社会の IT化を推進するため、2001年に内閣総理大臣を本部長とするIT戦略本部が設置されました。そしてe-Japan戦略が策定され、今日のIT新改革戦略につながっています。

 このことは、読者の皆さんが所属するIT企業にとって、無視することのできない重要な政治的要素といえいますが、アカウントユーザーにとっても重要な政治的要素があるはずです。このほかにも顧客にとって欠かせない政治的要素は何か、その環境要素が顧客にとって機会となるのか、それとも脅威となるのかを一つひとつ分析していきます。

 経済的な要素でいえば、例えば株や為替の動向が顧客にとって大きなインパクト要素になることがあるでしょう。法律的な要素では、新会社法や日本版SOX 法などが最近の動きとして挙げられます。そのほか、顧客が所属する業界にインパクトを与える法制度の変更があるかどうかを検討し、機会と脅威の側面から環境変化を読み取っていきます。

 業界環境の分析では、顧客の業界構造、需要と供給の関係、商品や技術などの諸要素についてインパクトを検討します。業界全体の事業所数の変動や、需要(顧客の顧客のニーズ)の変化から、機会や脅威を検討します。企業合併による業界再編成の動きや、新規参入の度合いも大きな環境要素です。業界にとって大きなインパクトを持つ技術革新があれば、顧客にとって機会にも脅威にもなる出来事としてとらえることができます。業界環境の分析にあたっては、業界紙や業界団体が公開している情報を収集すると便利です。

 顧客環境の分析では、顧客の顧客を明確にすることから始めます。顧客の顧客は法人なのか、一般消費者なのか、市場は拡大傾向にあるのか縮小傾向なのかを確認します。顧客が特定の業界を対象にしたビジネスを展開しているのであれば、その業界動向を把握し、分析する必要があるでしょう。子供など特定の消費者を対象にしたビジネスであれば、少子化のように対象となる消費者の増減は大きなインパクト要素になります。顧客はそもそも何を顧客の顧客に提供しているのか、顧客の顧客が求めているニーズは何かを考察することも大切です。

 競争者環境の分析では、顧客の競争者を分析します。顧客の業界内でのポジションを把握したうえで、実際に競合となる競争者を想定してみます。顧客が実際に競争している相手ばかりではなく、ライバルとして意識している企業や、ベンチマークしているモデル企業を把握しておくことも大切です。この後に紹介する顧客の強み・弱み分析では、いろいろな角度から他社と比較する必要があるからです。

 競争者環境をF(機能)、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)、S(サービス)の側面からとらえ、顧客に及ぼすインパクトを検討することも必要な作業です。また、顧客が所属する業界だけに競争者がいるとは限りません。他業界の思わぬ企業が、競争者として登場してくる可能性はいくらでもあるのです。営業パーソンが顧客の視点に立ち、顧客の競争環境を分析してみることが肝心です。