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 数年前のIT不況がウソのように、ITサービス会社の業績は絶好調。受注残もどんどん積み上がっているから、ITサービス会社の営業担当者はさぞや我が世の春を謳歌しているだろうと思ったら、さにあらず。少し前に会った中堅企業の営業部長は浮かぬ顔で、「営業の存在意義が問われているんだよ」とぼやいていた。

 なんせ新規が取れない。競合に負けて失注という話ではない。自社内で、既存顧客の案件を優先したがる開発部門の“選別受注の論理”に負けるのだ。勝手知ったる既存顧客の仕事はいくらでもある。そうでなくても技術者の確保が難しいから、営業担当者が掘り出してきた新規案件なんぞには手を出したくない。こうして、せっかくの千載一遇のチャンスも、「リスクが高い」などの理由で葬り去られてしまう。

 営業担当者が新規案件にチャレンジできないのは辛い。既存顧客の案件では、顧客側の担当者が「この仕事が終わったら、お願いしたい別件があるんだ」と、ITサービス会社の技術者に直接頼むケースが多いから、営業担当者の仕事は料金交渉だけといったことになりかねない。しかも料金アップに気軽に応じる顧客などいないから、技術者からは「営業なんていらないんじゃないの」という“暴論”まで飛び出す始末。

 既存顧客の案件でもリソースが確保できず、商談を辞退せざるを得ない時もある。もちろん、断るのは営業担当者の仕事だ。「以前、『当社の良きパートナーとなるべく努力する』とおっしゃっていたのは何だったんですかねぇ」と顧客の担当者に嫌味を言われても、ひたすら頭を下げるしかない。ある独立系ITサービス会社の営業部長は、今年上半期だけで10件以上の仕事を断ったそうだ。

 SIなどのITサービス業の営業は、ある意味、因果な商売かもしれない。不景気の時、辛いのは皆同じだが、ソフトウエアも含めプロダクト営業なら好況時には、行け行けどんどん。自分の能力・才覚を最大限に生かして、売りまくればよい。一方、ITサービスの営業はSIなどソリューションを売る以上、どうしても人的リソースの上限で頭を押さえられてしまう。

 こういう状況の中でITサービス会社の営業部長クラスにとって「営業の存在意義が問われる」こと以上に、困った事態が生まれつつある。若手の営業担当者を中心に「案件はいくらでもある」との意識からか、淡白な営業しかやらない人が増えているというのだ。顧客とのやり取りを何でもメールで済まそうとする。顧客の話を表面的にしか聞かない。このままでは本物の営業スキルが身に付かず、顧客との信頼関係を築けるようにならない恐れがある。

 ITサービスの営業は、いわゆるソリューション営業である。顧客とのリレーション(信頼関係)を構築し、課題を聞き出し、ソリューション(解決策)を組み立て、提案できなければならない。特に、互いに本音で話ができるリレーションを構築し、発展させることは、営業担当者の最も重要な役割、営業の存在意義そのものと言っても過言ではない。

 今は絶好調と言っても、これから2年もすれば歯車は逆回転を始めるだろう。それまでに営業として顧客との“信頼の橋”を築き、強固にしておかなければならない。IT市場が冷え込んだ時、既存顧客から相手にされず、新規の顧客開拓で門前払いばかりでは、それこそ営業の存在意義が問われてしまう。

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