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 通信・ネットワークのキラー・アプリケーション──。ビデオ会議システムは,長年にわたって高い期待を集めてきたが,いまだ本格的な普及に至っていない。最近の,光ファイバの浸透によるネットワークの広帯域化や,機器の高性能化・高機能化を背景に,ようやく潮目が変わってきた。

 現在,ビデオ会議システムは二つの方向で急速に進化している。一つはユーザーがシステムを使っていることを忘れてコミュニケーションが取れる“没入感”をもたらす方向。もう一つは端末の多様化と他システムとの連携によって“いつでもどこでも”使える利便性を高める方向である。

 この二つの方向に進化することで,古くからあるビデオ会議は「ビジュアル・コミュニケーション」と呼べるものへと発展する。これまでなかった製品が次々に登場している(図1,表1)。最低でも数千万円するシステムから,ほとんど無料で使える「Skypeビデオ」まで,価格のレンジも広い。まず,高解像度のディスプレイを使い,没入感を追及したシステムから見ていこう。

図1●主なビジュアル・コミュニケーションのシステム
図1●主なビジュアル・コミュニケーションのシステム
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表1●主なビジュアル・コミュニケーションのシステム
4種類のカテゴリに大別できる。
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表1●主なビジュアル・コミュニケーションのシステム

“同じ部屋にいるかのような感覚”を演出

 高い没入感をユーザーに与えられるように進化しているのは,大画面の動画像やステレオ音声を駆使し,会議室の環境までを作り込む「テレプレゼンス」,そして従来のビデオ会議の延長線上にあり,HDの高解像度化が進む「据え置き型」のシステムである。

 テレプレゼンス・システムは,高解像度の映像をベースに,圧倒的な没入感を演出する。没入感は英語のimmersive(イマーシブ)の訳語であり,テレプレゼンスは「イマーシブ・テレプレゼンス」とも呼ばれている。

 現在国内では,米シスコシステムズ,米ヒューレット・パッカード(HP),米ポリコム,ノルウェーのタンバーグがシステムを販売している(表2)。システムが登場した背景には,数M~20Mビット/秒程度の帯域を一般の企業でも利用できるようになったという,ネットワークの広帯域化と低価格化がある。

表2●主なテレプレゼンス・システム
日本国内で入手できるシステムは現時点では4種類ある。
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表2●主なテレプレゼンス・システム

 テレプレゼンスが目指すのは臨場感の共有。遠隔地にいる相手と“まるで同じ部屋にいるかのような感覚”のコミュニケーションである。相手の表情の微妙な変化や細かなボディ・ランゲージをも伝達することより,従来のビデオ会議では作り得なかった密度の高いコミュニケーションを可能にする。これまでのビデオ会議が“遠隔地との映像を使った会話”を目指していたのとは,根本的な違いがある。

 こうした感覚を実現するために,テレプレゼンスはHD映像を表示可能なディスプレイを複数枚使う。話をしている相手の場所をディスプレイの映像と関連付けるため,立体的な音響システムも装備する。さらに,テーブルやイスなどの備品のほか会議室の照明や内装までもシステムとして作り込み,同じ部屋にいるかのような感覚を演出する。

海外に展開した企業から導入始まる

 会議室の設計や構築も専門家が手がける。例えば,HPの「HP Halo Collaboration Studio」(Halo)は,米国の映画会社であるドリームワークスの発案で開発が始まった(写真1)。照明や内装は映像表現のプロであるドリームワークスが手がけた。肌の色や人物の影が不自然に見えないように,照明や壁の色などにも細かな工夫を施している。

写真1●HPの「HP Halo Collaboration Studio」(Halo)
写真1●HPの「HP Halo Collaboration Studio」(Halo)
PDPが実物大の人物を映し,没入感を演出する。照明や壁の色にも工夫をした。

 テーブルの形状や配置でも工夫を凝らす。システムによって多少の違いはあるが,テレプレゼンスのテーブルは一般的にだ円形をしている。そしてディスプレイに映った相手が座るテーブルと,あたかもつながっているかのように配置することで,ディスプレイの中の相手と同じテーブルで話をしている感覚を演出するのである。

 システムによってはイスやテーブル,照明そして“部屋の設計”までを製品に含めるため,テレプレゼンス構築にかかる初期費用は1拠点当たり数千万円という金額となる。その一方で,テレプレゼンスの導入によって海外出張件数の削減や,コミュニケーションの円滑化といった効果を期待できる。海外出張を減らせれば,社員の労働負荷の軽減にもつながる。とりわけ海外に展開している企業であれば,大きな導入効果を挙げられるかもしれない。

 実際,7月時点で世界の約50社がシスコの「Cisco TelePresence」を利用している。HPのHaloも世界の約45カ所に導入済みだ(HP自身の施設を除く)。日本ではキヤノンやAIGがHaloのユーザーである。