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図1

 地球温暖化が進んでいる。ところが実際のところ温暖化がどのような影響をもたらすかは細部にわたってはわかっていない。南極の氷が溶け出すことにより(北極は海だから海面に変化を与えないが),海面が上昇し,それによって水没する陸地が登場することだけは間違いないのだが,世に出回っている危機への警告には実際のところガセネタも多い。しかも温暖化がもたらす恩恵もあるらしい。温暖化ではなく温暖期に入っているのだという意見も強い。

 実は,人類は過去に温暖化に類似した現象を経験しており,その先に氷河期が到来したことが明らかになっている。そうした過去がいかなる形で記録されているか述べてみたい。

 過去200万年のうちでは,圧倒的に氷河期が長く,温暖であったのは25万年にすぎないと言われているが,12万年前は今よりも2度温度が高かったらしい。

 こうした気温の変動を記録したのは,歴史書ではなく「神話」である。神話が創作されるぐらいだから文明が成立していたとみてもよいだろう。世界各地の神話は単なる想像の世界だけでなく,ある種の出来事を神話に託して記録したものもあるという。従って,神話の分析は過去の解析につながっている。

 温暖期が進行すると陸地に堆積していた氷河が溶けだし,海の水かさが増えていく。各地に残る洪水伝説がそれに該当する。例えば,古代中国の建国神話「夏の禹王の治水」伝説では「海が天にまでとどいた」と記されている。有名な「ノアの箱船」伝説も気候変動などからの分析が進み,最近では黒海の水があふれ出したという説が出されている。

 同時に現在は赤道付近にしか見られないような動物が世界中に存在可能であった。例えば,ギリシャ神話。ローマ帝国にまで受け継がれたその神話は,植生豊かな温暖期に見られがちなアニミズムの世界を描いているが,今ではアフリカにしか見られない動物が欧州にも生息していたことを記録している。

 ギリシャ神話中第1の勇者ヘラクレスの12の難業の1つ「ネメアの森の人食い獅子退治」は,当時のペロポネソス半島にライオンが住んでいたことを意味している。現在,中国の揚子江(長江)にワニが見られるのは温暖期の名残で,寒くなってその地域に取り残されたワニが冬眠という“テクニック”を身につけることで温帯に適応したものである。