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Q: SEに転職したいが,心配なことばかりで就職活動が進みません。

私は仕事をして半年ほどで,人間関係によりうつ状態となりました。自分の弱さに自身が持てず,次の職場でも同じことになるのではないかと思い,次の1歩がなかなか踏み出せずにいます。前職は製造だったのですが,次はSEに転職したいと考えています。しかし知識が足りないのではないか,また派遣されるのではないか,と心配なことばかりで就職活動が進みません。どうしたらよいのでしょうか。
(製造業/男性・23歳)

A:分からないことは先輩に聞きまくり,毎日自分の実績をほめろ

 若い方の典型的な悩みですね。

 どんな職場でも仕事に慣れるまでには年数がかかります。特に職人的な色合いの濃いエンジニアの世界では最低5年ぐらい経験しないと一人前にはなれません。自信が持てないのは,「自分の弱さ」のせいではなく,若いから当たり前なのです。

 一般に経験も自信もない「未熟」な状態から,経験も自信もある「本物」の状態まで移行するのには,それなりに時間がかかります(図1)。

図1●経験も自信もない「未熟」な状態から,経験も自信もある「本物」に至るルート
図1●経験も自信もない「未熟」な状態から,経験も自信もある「本物」に至るルート

 あなたの場合,かなり「弱気」の癖があるようなので,「本物」になる前に,経験はあるが自信がない「慎重派」のルートを通るかもしれません(図1参照)。別にそれでもよいのです。

 では,経験値と自信はどうやって増やせばよいのでしょうか。経験値を増やす期間は,たくさんスキルを吸収すれば,短くなります。「若いのだから分からないのは当たり前」と,積極的に先輩に聞きまくったり,自己研さんを積んだりすればよいのです。

 私の体験では,先輩からうるさがられるぐらいに聞きまくるほうが,自分で調べるより,はるかに早いです。前向きに,アグレッシブに聞く。それが一番の薬だと思います。先輩や上司の立場で考えても,積極的に聞いてくる後輩はかわいいものです。要するに「聞き上手」になるのが近道なのです。

 自信を増やすには,実績が一番です。実績を増やすには,ゴールを小さく区切るのが最も良い方法です。小さなゴールを設定して,「ああ,今日はこれができた」と,毎日のように「自分で実績をほめる」のが近道です。それが積み重なって,上司やお客様に認めてもらえるようになったら,かなり大きな自信になります。

 実は,たとえベテランになっても,新しい技術に触れるときは,若者と同様経験はありません。それでもベテランになれば,過去の体験から,新技術に対してもある程度想像がつきます。

 つまり,「未熟」からスタートするのではなく,経験はないのに自信はある「ミエ張り」からスタートできるのです(図1参照)。全く新しいことをするあなたと,ベテランの違いは,その程度のものです。

Q: バブル世代の上司たちの「人を使い育てる能力」に大きな疑問を感じています。

「職人」的な空気の蔓延に悩んでおります。このままだと,5年後10年後に業務が立ち行かなくなりそうで怖いです。自分が悩んでいるのは,35~45歳くらいの上司たちです。バブル崩壊時に一時採用を取りやめた事もあり,部の人員構成は35~45歳ぐらいの集団と,22~27歳の集団に完全に分かれています。

 彼ら(35~45歳の層)はいわゆる「職人」で,自分の仕事をする分にはとても良い仕事をしますが,人を使い育てる能力に関しては大きな疑問を感じます。仕事の振り方はいい加減で,部下にあまりノウハウや情報をくれません。文句を言うと,「自分たちはこういう仕事の振り方をされて育ってきたんだ。こういうものなんだ」と言われます。

 いわゆる「弟子・丁稚」のような使い方をするので,一人前になるために,かなり長い時間を要します。昔はそれで通用したのでしょうが,現代においてはこんなやり方は通用しないと考えます。部内での情報共有を進めるため,グループミーティングなども企画されましたが,積極的に発言しようとする若手に対し,上司のほとんどが消極的な態度なため場が盛り上がらず,いつしか自然消滅してしまいました。

 このままでは効率が悪く,いずれ業務が立ち行かなくなると思っています。私の立場は入社2年目です。目指すべき方針は浮かんでも,実績がないのでなかなか受け入れてもらえません。一番怖いのが,今の若い人たちも「職人」をマネし始め,人を使い育てる意識を持たなくなってしまうことです。アドバイス,ぜひよろしくお願いいたします。
(ネットワークエンジニア/男性・25歳)

A: 本来の人材育成のあり方を,あなた自身が経営層に提言せよ

 2007年問題,あるいは団塊世代の大量退職は,日本全体で問題になっています。なぜかと言えば,その方々が現場における言葉にしづらい「暗黙知」を会得した職人的なベテランであり,暗黙知を次世代に継承する努力を日本全体が怠ってきたからです。

 特に製造業の現場では,この暗黙知こそが日本の競争力の源泉と言われてきました。製造業では現在こぞって,暗黙知の育成・継承と暗黙知の「形式知」化が進められています。

 IT業界も,ベテランの能力はこの暗黙知に依存するところが大です。日本のIT業界ではこれが行き過ぎて,現場ごとに仕事の仕方が異なることで標準化が遅れ,世界的に見て競争力を失っています。幸いなことに,IT業界では技術のほとんどは形式知化されており,日本が最も遅れているプロジェクトマネジメント分野も遅ればせながら標準化が進みつつあります。

 多分,あなたの職場の先輩方は,形式知も暗黙知も混ぜこぜで,「OJT(On the Job Training)」をしてこられたのでしょう。確かに狭く閉じた領域であれば,これも一つの方法ではありますが,汎用性も将来性もありません。形式知として勉強できる部分は会社として教育し,現場でしか学べない部分だけをOJTで教育するのが,これからのやり方です。

 あなたの会社は,現場のプレッシャーが大きく,仕事と育成の両立ができないのかもしれません。これはもう経営的な問題で,経営者が意識して改善しない限り,先は暗いでしょう。

 この場合,経営者がとるべき策は,若手に対しては体系的なスキル項目に基づいた各人のスキル育成支援,先輩に対しては育成責任の明確化とその結果の人事評価への反映です。スキルを体系化する段階で,形式知として学べることと,暗黙知としてOJTで学ぶべきことを,明確に分けるのが大事です。

 経営的に,これまでうまく行っていたからといって,これからもこの調子で行けるとは限りません。このことを経営者が認識できず,今のような状態が続くようであれば,転職を勧めます。

 ただしその前に,私なら上で書いたようなことを,経営者に提言します。経営者の習性として,現場の問題意識はぜひとも知りたいはずですから,話は聞いてくれるはずです。その際,論理的で説得力のある話をできるかどうかで,運命が変わるかもしれません。

 形式知として先輩に教わらなくてもできそうな部分は,自分で勉強しておくことも,お勧めします。あなたに対する先輩たちの見方も一変するかもしれません。グループミーティングが自然消滅したそうですが,それでしたら,若手だけで何か始めるのも,逆に面白いかもしれません。とにかく,あなた自身が動かない限り,この状態はそう簡単には変化しないでしょうから,まずは行動しましょう。