SQL Server 2008と呼ばれているSQL Serverの次のバージョンは,Windows Server 2008やVisual Studio 2008と同じく,2008年3月に発売される予定である。このタイミングの一致は偶然ではない。これらの製品の完成時期が同時にはならないことはほぼ間違いない。Visual Studio 2008は2007年の終わりまでには完成する予定であり,Windows 2008とSQL 2008は発売イベントが終わるまでは完成しないだろう(これらの中で最後に完成するのはSQL Serverだろう)。
Microsoftがこれらの製品を同時に発売するのは,それぞれが結束して一つの世界,連動するスーパープラットフォームを構成するためである。その中では各製品のコンポーネントが他の製品のコンポーネントに依存し,他の製品のコンポーネントで構成されるのである。
SQL Serverが好調な理由
SQL Server関連事業はMicrosoftの中でも非常に業績が良い。それはほとんどのMicrosoft製品よりもより顧客のスケジュールに沿った,ゆっくりした着実なスケジュールでバージョンアップを行い,拡張性,機能,および信頼性を着実に高めてきた結果である。このコラム執筆時点の最新バージョンであるSQL Server 2005は,発売まで5年の歳月を費やしており,またVisual Studioのメジャーアップグレードと同時に出荷された。それ以降,Microsoftは大きなサービスパックを2度リリースしてこの製品を拡張してきた。その一つはOffice 2007とのデスクトップ・インテグレーションの強化である。その売上は非常に好調である。SQL Serverはデータベース,ビジネス・インテリジェンス(BI),およびデータ・ウエアハウス市場で最も急速に売上を伸ばしたサーバー製品であり,OracleおよびIBMに続いて市場3位のマーケットシェアを持つ製品である。これは主にSQL Serverが比較的低価格であり,しかもより多くの機能が盛り込まれているためである。
確かに,MicrosoftはSQL Serverに新しい機能を追加して出荷する傾向がある。この点は,追加料金が発生する独立した製品として新機能を出荷するOracleやIBMに比べると長所になっている。BIやOLAPのサポートを考慮する必要があるのは標準的な事例においてのみであるからだ。
SQL Serverはまた,パフォーマンスおよび拡張性の面でも大きく進歩しようとしている。SQL Serverは現時点のSAPベンチマークレコードを保持しており,1TB TCP-H(アドホック・クエリ)では最高のパフォーマンスを出しており,3TBでは最も価格面のメリットが大きい。そして,Slammerワームがはびこった2002年の暗黒の日々以降,SQL Serverには重大なセキュリティ面の脆弱性が見つかっていない。これは100以上見つかっているOracleに比べて明らかに有利である。また,Oracleユーザーはこの間,全部で300以上のセキュリティ面の脆弱性に悩まされているが,SQL Serverユーザーはわずか五つの脆弱性に対処するだけで済んだ。これはMicrosoftのセキュリティ・レコードの中でも驚くべき記録である。
拡張性と多様なデータの扱いに期待
前のバージョンと同様,SQL Server 2008も緩やかなテンポで開発されている。Microsoftによればその開発サイクルは24カ月から36カ月であり,これまでのところいくつかのCommunity Technology Preview(CTP)リリースが公式に発表されている。発売までにはあと二つCTPリリースの発表が予想される。SQL Server 2008の最終製品は2008年の第2四半期に完成する予定である。どのようなことが期待されるか,書きたいことはたくさんあるが,ここではスペースの関係から重要な二つを挙げるに留めておく。
一つは拡張性である。1997年のSQL Server 7.0レビューアワークショップで,私はMicrosoftのTerra Serverを見て驚いた。衛星画像を保存した「データの冷蔵庫」とでも呼ぶべき装置が部屋いっぱいに設置されており,カスタムSQL Serverがインストールされ,制御されていたのである。現在のSQL Serverは,テラバイト単位のデータを,以前のバージョンにおけるギガバイト単位のデータのようにシームレスに扱うことができる。
これに貢献しているものの一つとして,ディスク上のストレージの占有領域を縮小するディスク圧縮ルーチンがある。また,増え続けるデータセットに対するクエリをスピードアップする新しいインデックス・メカニズムも開発されている。さらに,複数の回路基盤間でパフォーマンスを向上させる努力が続けられている。例えば,SQL 2008はワークロードの優先度をインテリジェントに設定するため,管理者はサービス品質保証(SLAs)を組織にとって最適な形で構成することができる。したがって,例えば給与処理で給与明細を印刷しようとしているときに,レポート・アプリケーションがサーバーのすべてのリソースを消費できないような構成が可能である。
そしてもう一つ,多様なデータの扱いである。SQL Serverはもともとリレーショナル・データベースと呼ばれるものであるが,長期にわたる堅実な改良の結果,リレーショナル以外のデータも扱うことができるようになっている。これはSQL Server 7.0で多次元OLAPの導入によって可能になり,SQL Server 2005ではXMLサポートで引き続きこれを実現している。SQL Server 2008では,Microsoftはこれらの機能をさらに最もドラマチックな形で拡張しようとしている。
具体的には新しいファイルストリーム・データタイプによる,ファイル・システム内のドキュメントなどの構造化されていないデータのサポートである。これはファイル・システムを置き換えると言うよりは,基礎となるデータを認識できない旧来のBLOBデータタイプを置き換えるものである。Microsoftはこの機能を,データのクエリおよびインデックス作成用のネイティブWindows APIでサポートしようとしている。これはまた,地図を使用した場合と同様にロケーションを空間的に認識できるロケーションデータのコンセプトの具体化である。私はこの機能がカスタムの位置認識アプリケーションの新しい時代を開くきっかけとなることを期待している。
SQL Server 2008について,ここに記載されていない情報に興味があるのなら,この概観にそれらを付け加えた記事をSuperSite for Windowsに掲載しようと思う。もしライセンスに関する情報が必要なら,良いニュースがある。MicrosoftはSQL Server 2008の価格をSQL Server 2005と同等に据え置く予定である。他のデータベース・ベンダーも恐らく準備しており,有償で提供しょうとしている新機能が追加されているにもかかわらず,だ。これは歓迎すべきことだ。この製品ラインに関するMicrosoftのアグレッシブな価値提案が続くことを願いたい。