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 キヤノンやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)はデータの品質維持を徹底するため、データ体系を全世界で統合。これにより個別最適のデータ管理から脱却した。さらにデータ品質の経年劣化を防ぐために、データの「ガバナンス(統治)」体制や教育プログラムに力を注ぐ。全世界に事業を展開するこれら2社は、製品マスターデータのコードを全世界で統合した後も、継続的にデータ品質を維持・向上する取り組みを続けている。

管理ルールをシステムと研修で徹底

 キヤノンにおけるマスターデータの品質維持・改善で、すべての基本になるのがマスターデータの管理ルールである(図1)。

図1●マスターデータの統合後も、継続的にデータ品質を維持・向上していくための取り組みが欠かせない
図1●マスターデータの統合後も、継続的にデータ品質を維持・向上していくための取り組みが欠かせない
キヤノンは製品マスターデータを統一しただけでなく、発番ルールの順守やシステム化などによって、データ品質の維持・向上に努めている
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 具体的には、新しいコードを作成する「発番」の際の、許可申請や具体的な作業内容、コード体系の中身までを定めている。販社や工場を含め、対象となる製品企画事業部門の全社員にこれを徹底させている。

 とはいえ、「ルールを決めるだけでは、データ品質を維持できない。マスターデータを管理するのは人間。担当者が代わっても同様な品質を維持できるように、勝手な発番を許さないような仕掛けが必要だ」。情報通信システム本部の荒木誠 情報システムセンター所長はこう語る。

 キヤノンは、ルールに沿った発番作業や管理作業を実行するための管理システムを構築・運用している。「マーキュリー」と名付けた発番管理システムがそうだ。01年9月のマスターデータ統合プロジェクトで開発したもので、コードの検索や重複チェック、連番の作成などの機能を備える。

 キヤノンはeラーニングによる研修にも力を注いでいる。発番ルールを周知徹底し、マーキュリーの操作法を習得させる。

 eラーニングでは、マスターデータの品質管理がなぜ必要かの説明から始め、具体的なコード体系、発番の作業手順などまでを示す。オンラインのテストで研修内容を確認するだけでなく、最後にデモ環境で発番管理システムの操作を学ぶ。

 すべての研修を修了するには「業務に精通している社員でも、半日はかかる」(菊田裕之 情報通信システム本部情報システムセンターSCM情報システム課長)という。対象となる主要な7つの製品事業部門については、全社員がeラーニングを受講し修了している。

 ルールやシステムを運用していくため、組織面でも対策を講じる。製品事業部門ごとに、マスターデータの品質管理責任者を置いているのだ。部門内で発番したコードの管理や、社員に発番権を付与する際の承認、マーキュリーへのアクセス権を持つ社員の管理などを受け持つ。

データ品質向上で「次のSCM」へ

 キヤノンが管理すべきマスターデータの件数は、増えていく一方だ。現在の数は146万件を超えている。01年に統合した際には20万点だった。

 新商品に加えて、販売を終了した商品や他メーカーから仕入れて販売する商品もある。荒木センター長は「一度、全社で整備したからといって、野放図にコードを作成したり登録したりさせていると、あっという間に整合性が取れなくなってしまう」と話す。

 キヤノンはこのマスターデータを土台に、SCMにさらなる磨きをかけようとしている。インクジェットやカメラといった製品事業部門ごとだけでなく、一般消費者向け製品や企業向けといった単位でも、販売実績や在庫を把握できるようにする。

 「同じインクジェット・プリンタでも、一般消費者用と業務用では、販売チャネルも商品特性も違う。さらに在庫を削減するには、よりきめ細かく在庫の状態を把握する必要がある」(荒木センター所長)。SCM刷新のメドは10年までの中期経営計画の終了時。マスターデータの品質を保つ努力が、これを支える。