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顧客とのコミュニケーションで重要なことに、いかに「場の空気」を読むかがある。場の空気を良くするには、まず「聞く力」を高めることだ。一方的に話すのではなく、相手を理解しようとする態度が場の空気を和らげる。話を聞かずに主張するだけでは場の空気を悪くする。クレーム処理のときは特に注意が必要だが、真剣な姿勢を示すことで好転する。

 3回目は「場の空気」を良くするにはどうすべきかをテーマに、コミュニケーションのスキルについて解説していく。最近は「場の空気」を読めない人が多い、といわれる。営業活動の場合、特に場の空気は大切な要素の一つである。

 初回の顧客訪問ですぐにソリューションや見積もりの内容を説明しても、相手に受け入れられるわけがない。顧客とのコミュニケーションをスムーズにするための雑談なのに、途中で提案書を見せようとする営業部員もいる。本来なら雑談が終わり、ちょっと間合いを置いてから説明すべきだろう。製品やサービスについて早く説明したい気持ちは理解できるが、顧客のことを考えず一方的に話す態度は、場の空気が読めない典型的な例である。このほか相手の趣味がゴルフなのに野球について延々と話したり、顧客の業務や関心事とは全く関係のないテーマを話し出す営業部員もいる。

 逆に場の空気を読むことを心配するあまり、「雰囲気を壊してしまうのではないか」と、会話することをためらってしまう人もいるだろう。場の空気は相手の心理や状況も関係するだけに難しい。では、どうすればよいのか。

理解しようとする態度が前提に

 場の空気を良くするとは、「互いのコミュニケーションをスムーズにすること」と筆者は考える。コミュニケーションとは「話す」「読む」「書く」「聞く」の項目から成り立つ(図1)。

図1●コミュニケーションは四つの項目から成立する
図1●コミュニケーションは四つの項目から成立する

 コミュニケーションのスキルというと、「どんなことを、どう話すか」など、「話す」ことが一番難しいと感じる人が多い。しかし筆者は本連載の1回目で解説したように、「聞く力」が最も難しいスキルであると考える。コミュニケーションでは相手の話を聞くことが重要だ。相手の話を聞かない人とはコミュニケーションが成立しないので、場の空気が悪くなる。

 例えば相手の話をちょっと聞いただけで、「それは違う」と話をさえぎる人がいる。そして「むしろ、こうなるはずである」と相手に自分の意見や考えを長々と説明し始める。一見すると両者の間にコミュニケーションが成立しているように思われるが、そうではない。相手の話を聞かず、自分の価値観を押し付けているだけである。

 社内でも上司が部下に「まず結論から先に話せ」という言い方をする場合も同様だ。部下から説明も聞かずにいきなり結論だけを聞いても、上司はすぐには理解できないはずだ(もしくは理解していると上司は自分で思い込んでいる)。

 会議でも自分の考えや感情にとらわれて、場の空気に関係なく、一方的な申し立てに終始する人がいる。目の前の相手の気持ちなどに構わず、あるべき論を振りかざして反発を買う場合がある。

顧客を知らずば提案できず

 顧客との会話でも、相手の状況や課題を聞かずに自分の方から一方的に製品やサービスのメリットを説明するようでは、コミュニケーションは成立しない。顧客を知ろうとしない態度は反発を招くだけである。

 こんな例がある。中小企業の顧客に提案するためのプレゼンテーション資料に、高層オフィスや海外のビジネスマンの姿をカットとして掲載していた。それらは中小企業の実情とはかけ離れた写真である。中小企業の担当者は「この営業は、当社のことを理解していない」と考えるはずである。こうなると商談は先に進まない。

 相手が話を聞かず、理解しようとしない態度であれば、顧客は次第に何も言わなくなる。何かを正確かつ効果的に伝えるためには、まず相手の話をしっかり聞いたり、相手のことを調べたりする。そして理解しようとする態度を示す必要がある。このとき自分の価値観を脇に置いて「聞く」には、それだけの修練が必要になる。「この営業は自社のことを理解しようと努力している」と分かってくれれば、顧客はどんどん話す。そして互いのコミュニケーションが高まり、場の空気は次第に良くなる。

 そうした場の空気を読むためのスキルを磨くには、まず1回目で解説した「聞く」ことと、2回目の「伝えたいことを伝えるには」の二つのスキルを備えることが前提条件になる。筆者は聞くことも表現の一つと認識している。受身ではなく積極的な活動である。「あなたの話を聞いていますよ」「あなたのメッセージは受け止めました」という意味になるからだ。

 筆者は、どちらかと言えば場の空気を読むのが苦手な方である。このため営業職に就いて31年間、ずっと続けていることがある。それは近所の方や会社で早朝から掃除をしてくださる方、若手社員などに私から「おはようございます」と積極的にあいさつをすることだ。マンションのエレベータやバス停でよく会う人、バスに乗るときは運転手にもあいさつをしている。あいさつという行為で自分の態度を示すことがコミュニケーションの始まりとなり、さらには場の空気を良くするための第一歩だと思うからだ。もちろん顧客訪問のときも、受付などで元気にあいさつをしている。あいさつを交わすのは、やはり気持ちがいいし、相手も悪い気はしない。

まず顧客のキーパーソンを理解する

 営業活動では顧客のキーパーソンといかに付き合うかが重要である。商談は最終的に互いの信頼関係の上で決定するからだ。それだけに場の空気を読んで、相手を理解しようとする態度が受注へのステップにつながる。ただし、このキーパーソンは一人だけではなく、商談内容によっても変わってくることが多い。顧客のあらゆる階層の方がキーパーソンになりうるだけに注意が必要だ(図2)。

図2●顧客のキーパーソンは場面によって異なり、一人ではないことに注意したい
図2●顧客のキーパーソンは場面によって異なり、一人ではないことに注意したい
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 例えば顧客のシステム部門長は経営に対する窓口であり、部門としての予算調整やITベンダー選定の方針案を決定するなど最も重要な相手である。システム部門の現場担当者も、システム化案件に基づいて最初の情報収集や分析、つまり一次評価を行う決定者になる。

 さらに課長クラスもシステム化案件について実際にりん議を起案したり、内容を評価する立場にある。顧客の事業全体にかかわるシステム化案件では、経営企画室や総合企画室などの担当者がキーパーソンになる。企業によっては経営トップが自らシステム化案件を担当することもあるだろう。

 このように商談ごとに決定者は変わるので、過去の商談記録などがあれば事前によく調べておく。もちろん年齢や趣味、出身地などの情報を、さりげなく聞いておくことも必要だ。

 キーパーソンとのやり取りで大切なことは、コミュニケーションを絶やさないこと。相手がどうしても参加できなかったミーティングの内容は、後日改めて報告を行うなど与えられた「宿題」は翌日には回答する。回答が遅くなる場合は進ちょく状況だけでも連絡を入れるようにする。重要な点は、相手を理解しようとする態度を示すことだ。「特別な対応」を取っていることを相手に意識させるようにして、場の空気を良い方向へ進める。