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 前回ご説明した第三者調査委員会は多くの人が耳にしたことがあると思いますが、今回お話する「社内主体の調査に社外の有識者を加えた調査委員会」は、あまり具体的なイメージが湧かないかもしれません。

 この委員会を設置する状況としては、メディアで大きく取り上げられるような事件ではなく、取り上げられたとしてもベタ記事程度ではあるものの、その事件は氷山の一角に過ぎない可能性があり、これを機会に社内で一斉に見直しを行った方がよいと思われる場合です。そのねらいは社内で原因究明を行い問題解決と再発防止策をつくり出す際に、第三者の目からその内容をチェックしてもらい、客観性や納得性、正当性を生み出すことにあります。要するに、社内主体の調査のお目付役として、社外の有識者に委員会へ加わってもらうわけです。

 具体的な例をご紹介しましょう。ある会社では、現地政府から許認可を必要とする輸出商品を扱っていました。ところが同社では、一時的な認可は得て市場導入したものの、そのあと本来の認可を取ることのないまま、販売活動を行っていたことが判明しました。

 普通であればそんなことはあり得ないのですが、めまぐるしく担当者が変わったことや、関係部署が多すぎた結果、何かの手違いとフォローアップのなさで法令違反状態になっていたようです。さっそく再度、認可をとるべくやり直すことはもちろんのことなのですが、このような例があるということは、すなわち他国においても同じようなことが起こっている可能性があることを意味します。

 まずは内部監査室を中心にこの問題に関連する各国の情報を集めに入りましたが、それだけではちょっと心許ないと感じました。社内ではそういった恥ずかしいものは表に出したくないという意識が働きますから、情報が隠されてしまう恐れがあります。そこで調査委員会を立ち上げて、弁護士や識者の方に委員として参加してもらいました。

 委員の先生からは調査の流れや調査報告についてチェックを受け、内部で出した調査分析や結論が外部からみておかしくないかを見てもらいました。これは調査を遂行する立場にとっては大きな味方になります。このケースではそのようなことはありませんでしたが、一般的に内部統制の実務担当者の方たちは、調査を行っているとサラリーマン的な問題で危機に直面することがあります。いろいろ調べた結果、責任の所在は現在の社長だったり、専務だったりするといったことはよくあります。そんな場合は、調査を行っている人間の立場が危なくなる可能性もあるからです。その点、社外の有識者によって指摘された事項であれば、調査しないわけにいきませんから、大義名分も立ちます。

「なんでその部署に問題があるのに、追加調査を行わないのですか?」
「なんでこの人に懲罰をおこなっているのに、あの人には懲罰を行わないのですか?」

 外部の先生たちにそう指摘していただけば、調査の担当者がつらい思いをせずに済みます。その意味で、社外の有識者を上手に委員会に招きながら調査を行っていくと、実務的にたいへんやりやすくなるでしょう。

 一方、社内だけで完結する「社内調査委員会」は、社外の有識者を加えた調査委員会とやること自体はさして変わらないものの、前述したように調査レポートを書いたり、懲罰を実施するところあたりで、いろいろな横やりが入り問題が隠されてしまうことがままあります。従って、小さな問題であれば社内調査委員会でもよいのですが、問題の深刻度のレベルが上がってきたら、社外の有識者を招くほうが、結果的に会社をよくすることになるのです。

注)当コラムの内容は、執筆者個人の見解であり、所属する団体等の意見を代表するものではありません。


秋山 進 (あきやま すすむ)
ジュリアーニ・コンプライアンス・ジャパン
マネージングディレクター
リクルートにおいて、事業・商品開発、戦略策定などに従事したのち、エンターテイメント、人材関連のトップ企業においてCEO(最高経営責任者)補佐を、日米合弁企業の経営企画担当執行役員として経営戦略の立案と実施を行う。その後、独立コンサルタントとして、企業理念・企業行動指針・個人行動規範などの作成やコンプライアンス教育に従事。産業再生機構の元で再建中であったカネボウ化粧品のCCO(チーフ・コンプライアンス・オフィサー)代行として、コンプライアンス&リスク管理の体制構築・運用を手がける。2006年11月より現職。著書に「社長!それは「法律」問題です」「これって違法ですか?」(ともに中島茂弁護士との共著:日本経済新聞社)など多数。京都大学経済学部卒業