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 日本企業のビジネスがグローバル化するのに伴い,世界中に分散したり大規模化したりする情報システムの運用が大きな課題になりつつある。国や地域によって,使用言語はもちろん,ITリテラシのレベルにも差がある状況で,いかに適切にシステムを運用するか。そのポイントを,ITILの普及促進団体「itSMF Japan」で中核的な役割を果たしてきた,NECの山口真人氏と大畑毅氏に聞いた。(聞き手は福田 崇男=ITpro)

ビジネスのグローバル化が進む中で,日本企業はシステム運用に関して,どのような課題を抱えているのでしょうか。

NEC 山口真人氏(左)と大畑毅氏
NEC 山口真人氏(左)と大畑毅氏
(写真:花井智子)

山口 日本企業のビジネスは世界各国に広がっているが,システム運用をきちんとマネジメントすることに関して,多くの企業は海外まで手がまわっていない。海外拠点における運用ポリシーの確立やビジネスプロセスの見直し,情報漏えい防止をはじめとするセキュリティ対策など,多くの課題を抱えている。

 ベンダーによるサポートもうまく使えていない,という印象がある。現地ベンダーの水準は国や地域によって大きな差があるし,日本のITベンダーから直接サポートを受ける場合でも,様々な制約があるからだ。各国語への対応という言葉のカベに加えて,エンジニアが都度出張して対応しているケースが多いという事情もある。

国内でのシステム運用については,どう考えますか。

山口 やはり課題が多い。特にシステム部員が少人数の企業では,システムの複雑化やマルチベンダー化によって,運用がますます難しくなっている。

 以前,ある企業のシステム担当者に聞いた話だが,わずか30人程度の部員で,大小100社近いITベンダーをマネジメントしなければならないという。このような状況では,システムを適切に運用しろといっても無理があるだろう。

大畑 かつて,企業がシステム部門を子会社化することがブームになったが,様々な弊害に直面し,再び社内のシステム部門に戻す動きが出てきた。しかし,子会社化している間にバラバラと開発されたシステムの全体像を把握することは困難だ。そのような企業は現在,システム運用に苦労している。

なぜ,このような問題が起きるのでしょう。

山口 大きな要因として,システム運用に対する経営トップの理解が,まだ十分ではない,ということが挙げられる。本来であれば,システム運用に必要な体制はトップダウンで構築すべきだが,現状はそうなっていない。

 ITILの普及促進団体「itSMF(ITサービス・マネジメント・フォーラム)」の会合に参加しているメンバーを見ても,マネジメントの責任者より現場の実務担当者のほうがずっと多い。「システム運用のマネジメントは現場で考えてくれ」と考えているトップが多いとすれば問題だ。

大畑 システム運用に比べると,システム開発のプロジェクトマネジメントの重要性は経営トップがよく理解しているようだ。これは,開発プロジェクトの失敗が新サービスの導入遅れや予算超過といった,経営層にとって分かりやすいリスクにつながるからだろう。それに,プロジェクトマネジメントには長い歴史があるが,運用のマネジメントの歴史はまだ浅い。

システム運用に対する認識も変わってきた

とはいえ,運用強化の指針として「ITIL」に注目している企業は増えているという印象があります。システム運用に対する認識も徐々に変わりつつあるのでしょうか。

NEC システム・サービス事業本部長 山口 真人氏
NEC システム・サービス事業本部長 山口 真人氏

山口 確かに,システム運用やITサービスのマネジメントの重要性に気づく企業は徐々に増えていると感じている。ここ数年頻発している大規模システム・トラブルなどを教訓として,システム運用の失敗も企業に大きな打撃を与えるという認識が,経営トップにも定着してきたからだ。

 最近ではユーザー企業から,「システム運用のマネジメントの責任者を面接したい」という要望をいただくことも増えてきた。以前は開発のプロジェクト・マネジャーの面接を求められることはあっても,運用の責任者に会いたいと言われることなど,なかったことだ。

 これは,開発と同様に運用も重要だと考える企業が増えているということだと思う。特に航空会社や証券会社など,システム運用がビジネスに直結している企業の意識は高く,「運用がキーになる」といった発言も聞かれるようになった。こういった運用への関心の高まりが,ITILに注目するきっかけになっていると思う。