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 従来のCRM(顧客関係管理)は、企業側の視点に立って「顧客がどの商品を買ったか」を管理する。一方、CEM(顧客経験管理)では、顧客側の視点に立って「顧客が商品を買う過程でどう感じたか」を管理する。全く異なる視点で顧客を見つめ直すためのプロセスを解説する。

野村総合研究所 田中 達雄


 前回は、ITを利用して顧客経験価値をいかに高め、成果を上げてきたかを示す事例を解説してきた。今回は視点を1つ上げて、「顧客経験価値を高めるためには何をすべきか」という実践面について解説する。

 顧客経験価値を高めるには、基本的に5つの要素が必要となる(図1)。それは、(1)顧客をより深く知るための「モニタリング」、(2)モニタリングした結果から、顧客に対して最適な顧客経験価値を導き出す「分析」、(3)分析結果に基づき顧客経験価値を設計・創造する「計画」、(4)計画にて設計・創造された顧客経験価値を実際に行う「実行」、(5)最後に上記4つの要素をプロセスとして管理する「顧客経験管理(Customer Experience Management、CEM)」である。

図1●顧客経験価値の向上に必要な要素
図1●顧客経験価値の向上に必要な要素

顧客の視点で「どう感じたか」をマネジメントする

 顧客経験管理とは、広義の意味では「顧客」「商品/サービス」「企業」の3つの関係全体を、「顧客側」からの視点で戦略的にマネジメントするプロセスのことである。

 類似の用語に顧客関係管理(Customer Relationship Management、CRM)があるが、CEMとCRMとは基本的なスタンスが異なる。従来のCRMが「企業側の視点」に立って顧客の属性や履歴を管理していたのに対し、CEMは「顧客側の視点」に立って顧客の経験価値を管理する。

 例えば、CRMでは顧客が「どの商品を買ったか」を管理する。一方のCEMでは、顧客が商品を買う過程で「どう感じたか」を管理する。ただし、CEMは“本来のCRM”が持つべき要素の1つと捉えることもできるため、概念的な区別はあまり明確ではない。提唱者によって捉え方がさまざまで、まだ定まっていないのである。

 概念的な定義はさておき、CEMの台頭が示す重要な変化は、これまで購買履歴などの「表面化した顧客情報」を企業視点で管理していただけであったのに対し、CEMでは「顧客の内面的な情報(印象や価値観など)」を顧客視点でいかに管理していくか、といった方向に進み出した点にある。