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村中 直樹 氏
クレッシェンド 代表取締役


 今回は、Excelで構築した「販売業務支援システム」において、Excelファイルのコピーが横行し、システムが管理不能になった問題と対策を取り上げる。

 Excelは、紙の帳票でやり取りしていた業務を電子化するのにとても便利なツールである。だが、気をつけないと紙で運用していたとき以上にやっかいな問題が発生しかねないので注意が必要だ。

販売業務支援システムを構築

 化学メーカーのC社は、取引先とオンラインで業務をやりとりする必要が出てきたのを機に、業務フローを見直した。具体的には、「紙と鉛筆」で処理していた業務をパソコンで処理する方式に変更したのだ。

 紙の帳票と同じ書式をExcelのワークシート上にレイアウトして、担当者がシート上に必要事項を記入。そのファイルを他の担当者や上長に受け渡して業務を進める方式に変更した。従来は、複写式の帳票と添付資料の組み合わせで業務を行っていた。

 伝票の起票者は、マスターとなるExcelファイルをコピーしてワークシート上に発行ナンバーや日付を入力する。その後、次の工程の担当者にファイルを渡す。このとき、同じ場所にファイルを保存するとわかりにくいので、工程ごとにフォルダを作成し、そこにファイルを保存する運用方針を採った。Excelファイルは、ファイル・サーバー上に保存して共有する仕組みである。

コピーが横行しファイルが5000個以上に増殖

 紙の帳票とイメージが似かよっていたことと、入力すべきセルをクリックしてデータを入れるだけ、という手軽さから、Excelシステムの利用は定着した。ある担当者は、ワークシート上のボタンを押すだけで「ファイルの名前を変えて別フォルダにコピーを作成」するExcelマクロを作成するなど、システムの改変も活発に行われていた。

 Excelシステムに慣れるに従い、システムの改変はエスカレートしていった。担当者がめいめいに、「ファイルの特定部分を選択してデータとして出力する」「データを選択して並べ替える」など、数々のマクロをExcelシステムに実装していった。

 改変が横行した結果、マスターとなるExcelシステム(ファイル)をコピーして使う運用は形骸化した。各担当者が使いやすいように“自分専用”のExcelシステムを使うようになっていた。

 ある時、取引先との業務のやり取りの仕組みを変更することとなった。合わせて、Excelで構築した販売業務システムも見直すことにした。そこで問題が顕在化する。各担当者が自分仕様のExcelシステムを持っており、様々なバージョンのファイルが混在していたのだ。

 C社から相談を受けた筆者は、ファイル・サーバーに保存されていたExcelのファイル群を調査した。その結果、途中で利用されなくなったファイルも含め、5000個以上のExcelファイルが存在することが判明した。Excelシステムに修正を加えたくても、どのファイルがマスターであるか判別できない状態だった。

誰でもいじれてしまう実装形態が敗因

 最大の問題は、大量のExcelファイルに埋没して、どれがマスターのExcelシステムか判別不能になっていたことである。マスターとなるExcelシステムは厳密に管理するのが基本だが、C社はパソコンの導入やExcelの活用が初めてだったため、運用中のシステム改善の規定作りまでは気が回らなかった。

 Excelシステムの「機能」と「データ」が一体化している点も問題である。Excelファイルの機能を改変したくても、すでに起票されて仕掛かり中であるExcelファイルについては、個別に機能を組み込まない限り機能変更が反映できない。

 Excelファイルの数が5000個以上に増殖した要因は、途中で不要になったファイルや使い終わったファイルがファイル・サーバー上に残されていたためである。

 筆者は、5000個以上あるファイルの中からマスターとなりうる標準的なファイルを探すことから着手した。

 まず、途中で作業が打ちきりとなったなどの理由で放置されていたExcelファイルを抜き出した。この作業により、ファイル数は50分の1以下(約100個)に減少した。次に、各担当者が改変した機能を整理・分析して、多くの担当者が頻繁に使う機能を絞り込んだ。それら機能をマスターとなるExcelシステムに実装した後、担当者が勝手に手を加えないようにExcelシステムに制限を加えた。勝手に改変すると収拾がつかなくなる旨も担当者に説明した。

ファイル増殖を防ぐ4つのルール

 Excelのファイル数が5000個以上に膨れあがれば、そもそも管理しようという気力が癒えてしまう。業務の効率化に伴うシステム改善は推奨すべきだが、管理不能にならないようにルールを定めておく必要がある。

 C社が直面した問題は、以下の4点に注意すれば防ぐことができる。

使われていないExcelファイルは基準を設けて廃棄する(例えば1カ月以上アクセスされていないファイルは整理フォルダへ移動する)
機能を追加する際は、必ずマスター・ファイルに手を加える
機能追加する場合は、担当者間で協議を重ねるなど一定の基準をクリアした段階でマスター・ファイルに手を加える(一担当者の思いつきで機能を追加しない)
データを本体から分離しておく

 これらのルールを守れば、Excelファイルが増殖することを防げる。


村中 直樹 氏(クレッシェンド 代表取締役)
 金融機関の情報システム部門等でシステム開発に従事。約20年前にExcelと出会って以来、その機能と利便性に惚れ込み、日常の仕事にExcelを活用。2000年に独立してExcel専門の受託開発会社クレッシェンドを設立、今に至る。