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光ファイバの1分岐貸しの実現に暗雲が立ち込めてきた。9~10月に総務省が実施した「NGN(次世代ネットワーク)の接続ルールのあり方に関する提案募集」で,電力系事業者やCATV事業者などから反対意見が多数寄せられたのだ。総務省はこれらを受け,2008年3月までに結論を出す予定である。

 NTT東西地域会社の加入者系光ファイバは,「PON」(passive optical network)と呼ぶ仕組みを使い,1本の光ファイバをユーザー宅の近くで8本に分岐させる「シェアドアクセス方式」が主流となっている。他事業者がこれを借りる場合は,8分岐単位になる。ソフトバンクやKDDI,イー・アクセスなどは「8分岐のうち実際は1分岐しか使わないことが多く,接続料が割高になる。貸し出し単位を1分岐にすべき」と訴え続けてきた。

 これを受けて総務省の接続委員会は2006年11月から1分岐貸しの導入を検討した。しかしこのときは「NTT東西の設備が共有を想定した構成になっておらず,実現には設備の改修が必要になる。システムの切り替え時にサービスを一度停止しなければならない」(総務省)という理由から,導入を断念した。それならば“新規”に構築するNGNで本格的な導入を検討しようと議論を先送りにした経緯がある。

1分岐貸しは「NTT独占回帰を招く」

 ところが議論に先立って実施した意見募集では,電力系事業者やCATV事業者から反対意見が相次いだ(図1)。

図1●PONの1分岐単位の貸し出しについて総務省に寄せられた意見
図1●PONの1分岐単位の貸し出しについて総務省に寄せられた意見
NTT東西地域会社だけでなく,電力系事業者やCATV事業者も反対の姿勢を示した。
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 1分岐貸しが実現すればソフトバンクやKDDIなどの事業者が光ファイバを借りやすくなり,ユーザーも料金の低下を期待できる。しかし,自ら光ファイバを敷設してNTT東西に対抗してきた電力系やCATV事業者は立場が異なる。1分岐貸しによりNTT東西の光ファイバを利用したサービスが増え,「NTTの独占回帰につながる」と断固反対の姿勢を示したのだ。

 中部テレコミュニケーションや東北インテリジェント通信などは「既に膨大な投資を実施したため対抗値下げの余力はなく,早晩市場退出を余儀なくされる」と危機感を募らせる。ケイ・オプティコムも「総務省が推進する設備競争政策の趣旨に反する」と訴えた。

 NTT東西も1分岐貸しには反対する。「現状でもダークファイバを利用して事業者振り分けスイッチを自前で設置すれば希望する事業者間で設備の共用は可能」,「PONを共有すると,サービス品質の確保や新サービスの提供に支障を来す」との主張だ。

 サービス品質に関してはソフトバンク・グループやKDDIが共同で実証実験を実施し,「PONを共有しても優先制御や帯域制御は技術的に問題なし」という結果を公表した。これについてもNTT東西は「実証実験の方法では,映像配信など帯域の動的な割り当てが必要になるサービスの提供に支障が出る。最低保証帯域の設定や事業者振り分けスイッチの仕様などを,異なるサービス・ポリシーを持つ事業者間で調整するのは困難」と反論している。

 総務省はこれらの意見を踏まえ,接続委員会で具体的な議論を始める。ただ,接続委員会ではNTT東西のNGNについて,規制の対象となる第一種指定電気通信設備の指定範囲や,相互接続した際の接続料なども検討したうえ,商用サービスが始まる2008年3月までに決めなければならない。

 議論の優先順位は第一種指定電気通信設備の指定範囲や接続料の方が高く,光ファイバの1分岐貸しを十分に議論できずに終わる懸念もある。総務省は光ファイバの扱いを巡り難しい舵取りを迫られている。