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 テクノロジー・リーダー向けサイト「Enterprise Platform」は、複数の雑誌やサイトの編集部の協力の下、作られている。本欄では、記者同士あるいは記者と本サイト編集長とのやり取りを公開していく。今回は,Enterprise Platform内のコーナー「Enterprise Office」の編集をてがける中田敦記者(ITpro編集部所属)と谷島宣之の対話を掲載する。

Y 夏休み中にだけ掲載して,そのままになっていた「Enterprise Platform談話室」欄を再開したいと思う。そろそろ2007年も終わりだから,Enterprise Platformに関わりのある記者諸兄に,「今年一番印象に残ったこと」を挙げてもらうと思うのだがどうか。

N 個人的なことでもいいのでしょうか。

Y 構わないが,「Enterprise談話室」だからねえ。最後はエンタープライズ・コンピューティングにこじつけて欲しい。

N ただ「××が印象的でした」というだけで,コラムになりますか。

Y もちろん,もう少し質問がある。「なぜ,それが一番印象的だったのか」と「それは2007年限りのことなのか,2008年も引き続きテーマなのか」について答えて欲しい。

N ははあ,2007年を振り返りつつ,2008年を展望しようという企画なわけですね。11月末にやるのはちょっと早くないですか。

Y 急に寒くなったし,もうやっていいのではないか。

N 僕は,Yさんのあこぎな商売が終わった年だったと思いますね。どういう意味かというと,来年2008年になると,西暦2007年問題でもう騒げないということです。

Y 確かに西暦2007年問題について最初に記事を書いた(関連記事:「ITの西暦2007年問題を再考する」)のは,4年前だったかな。でもそれで商売をしたつもりはないぞ。

N その後,2007年問題についてあれこれ書いていたではないですか(関連記事:「再考2007年問題 解決への道筋」)。自分で騒ぎを起こして,それについて書いていくというのは,記者としてうまい手だと感服しておりました。

Y まったく誉めてもらっている気がしないのだけれど。読者からも色々意見をもらったし(関連記事:「再考2007年問題 私はこう考える」)。自分一人で騒いだわけではない。

N 読者の書き込みに全部回答を書かれたのは立派と思いましたが,それも結局,ご自分がやっているサイトのためですからねえ。やっぱり商売でしょう。

Y 君の言っている「商売」が「仕事」という意味なら確かにそうだ。ただし,あこぎではない。

N だって誰も2007年問題なんて言っていない時に,勝手に言葉を作って大変だ,と記事を書き,不安に思って色々書いた読者の方々のコメントを利用してさらに記事を作っていったわけで。

Y 読者を巻き込みながら,ユニークなコンテンツを作成した,といって欲しい。新しい試みをしている人をつかまえて,あこぎというのは,人の足を引っ張ろうとする弱者の寝言だ。

N 怒らないで下さい。本当に誉めているのですから。ただ,来年はもうできないですね,と申し上げたまでです。こうなったらいっそ毎年「200X年問題」を提起し続けて,「0X年問題」の専門家になられたらいかがですか?

Y 2007年問題は,書こうと思えば来年も書ける。2007年問題の定義は,「情報システムの高度化・肥大化・老朽化・ブラックボックス化とそれを解決できるベテランの減少によって起きる問題」ということ。だからもともと2007年とは関係ない。この問題はかなり前から起きているし,2007年にも起きたし,2008年にも,2009年にも起きる。

N まあそうなのかもしれませんが,そこまで無理をしなくても,ITの世界には色々な「0X年問題」が転がっています。少しご紹介しましょう。一つは,前に取り上げた「Visual Basicの2008年問題」です(関連記事:「Visual Basicの200X年問題を論ず」)。開発ツール「Visual Basic 6」のサポートが2008年に完全に終了するという話題でした。似たような話題で,「PHPの2008年問題」と「Windows XPの2008年問題」があるのです。まず「PHPの2008年問題」から説明しましょう。PHPはご存じですよね。

Y Peace and Happiness through Prosperityの略。

N (無視して続ける)PHPは,ここ数年で爆発的に普及した,簡単かつ低コストにWebシステムを構築できるプログラミング言語とアプリケーション実行環境のことです。いわゆる「LAMP(Linux+Apache+MySQL+Perl,PHP,Python)」の主要コンポーネントです。

Y PHPって何の略なの。

N もともとはPersonal Home Page Toolsの略でしたが,今の正式名称はPHP:Hypertext Preprocessorです。それで2008年問題ですけれども,このPHPで長らく主流だった「PHP 4」に対するセキュリティ修正パッチの提供が2008年8月で終了してしまうことを指します。

Y ええっと2008年8月以降,PHP 4にセキュリティのぜい弱性が見つかったとしても,修正されないということかな。

N そうです。2008年8月以降,PHP 4は完全に無防備な状態になると言えるでしょう。

Y よく知らないのだが,PHPは誰が作っていて,なぜそういう判断をしたわけ。

N いわゆるオープンソースの言語で,何人かのキーになるエンジニアが開発しています。実は2004年7月に,次期バージョンの「PHP 5」がリリースされました。だからPHP4のセキュリティ修正はそろそろ終わりにしようというわけです。ただ,PHP 4がリリースされたのは2000年5月ですから,まだバリバリの現役と言えます。そのサポートが終わるのですから,例えるならWindows 2000のサポートが終了してしまうぐらいのインパクトがあるでしょう。

Y ユーザー企業やシステムインテグレータはどうすればいいのかな。

N PHP 4ベースのアプリケーションは,一刻も早くPHP 5に移行する必要があると思います。今年2007年の夏には,独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が,「セキュアなWebアプリケーションを設計するヒント」として「例えば,PHPを避ける」と述べて,大変な話題になりました。PHPの2008年問題は,もっと知られてしかるべきでしょう。

Y なぜあまり知られていないのかな。

N WindowsやVisual Basicには,サポート期間のことを口やかましく論じるメディアが存在しますが(私のことですが),オープンソースには案外「批判的なメディア」が見あたりません。製品や技術を取り巻くメディアのスタンスにも原因があるのではないでしょうか。

Y なるほど。残る「Windows XPの2008年問題」は,説明してもらわなくても,何となく分かるような気がする。

N ある意味では毎度の話ですからね。Windows XPの販売が2008年6月末で終了するということです。PHP4の件に比べると深刻度は低めでしょうか。ただしユーザーはWindows Vista への移行を強いられる訳ですから,今のVistaの状況を考え合わせると頭の痛い問題の一つであるかもしれません。「Windows Vistaの2008年問題」とも言えるでしょう。

Y  色々あるねえ。ただ,N君が説明してくれた2008年問題はすべて具体的な製品に関することだから,2007年問題とはちょっと違うね。

N 案外,共通点があるのではないですか。それは,「システムも人間も同じように老いる」ということではないかと。VBもPHPもWindowsも,大規模システムも,そしてそれらを開発した人々も,すべて老いるわけです。ところが人間はどうしても老いから目を背けたいから,問題をなるべく見ないようになってくる。すると今度は逆に,「200X年問題に注意」と叫ぶ人が出てくる,という構図かもしれません。老いの問題は私よりもYさんの方が実感されているかもしれませんが。

Y 全然。年をとることはめでたいことだね。書けば書くほど文章は上手くなるし。プログラマも「物書き」だから同じじゃないかなあ。