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 情報システムと担当部門のグローバリゼーションが重要課題になっている。海外でソフトウエアを開発する「オフショア開発」に代わって「グローバル・ソーシング」という言葉が登場した。世界各国と連携し,ソフト開発に限らず,様々な仕事で協力していくことを意味する。逆に,世界各国の現地法人で必要なシステムを現地で開発する仕事も増える。チャイナのIT事情を取材している福田崇男記者(ITpro編集部所属)に,「経営とIT」サイト編集長が聞いた。

Y 2007年を振り返って,一番印象に残っていることは。

F 個人的には日経コンピュータ編集部からITpro編集部に異動したことです。

Y 異動があるのは当たり前でしょう。テーマでは何が。

F 今年3月に取材した,チャイナのIT事情が印象に残っています。チャイナに進出した日本企業の情報システム事情や,それを支援する日本ベンダーに現地取材しました。チャイナに行ったこと自体初めてだったのですが,北京,大連,上海,広州,それから香港とまわってみて,都市ごとに雰囲気がまるで異なることに驚きました。

 取材をしてみて,想像していた以上に,日本とは法律や文化が違うのだと実感しました。日本でシステムを構築・運用するのも大変ですが,チャイナの場合はまた大変さが違います。そのことがとても印象に残っています。

Y 取材結果は,「これがITのチャイナ・リスクだ」というシリーズ記事にまとめていたね。要するに日本とどこか違うわけ。

F 日本の情報システムは,なんだかんだいっても,高いレベルで構築・運用されていますし,程度の差はありますが業務に役立っています。それをさらに改善しようと,ユーザー企業は苦労しているわけです。でもチャイナでは,これからシステムを作ります,といった状況です。だから,使い勝手や精度はさておいて,まずシステムを構築すること,そしてそのシステムをチャイナの法制度や商習慣に合わせること,に苦労されています。

 とりわけ人材育成がすごく難しい。チャイナ人の社員が3年ともたずに転職してしまうことには,日本人の情報システム担当者達は閉口していました。ある企業の日本人担当者は,「一生懸命,色々なことを教えてかわいがっていたチャイナ人若手社員が,あっさり他社に移ってしまった」と寂しそうに話していました。日系ITベンダーも悩んでいます。日本人とは違い,ドライな一面があるようです。

Y ある程度は仕方ないのではないか。日本じゃないのだから。日本人も結構ドライになってきたし。話を聞いていて思い出したが,「中国と本気で付き合う」という原稿を書いてもらったことがある。そこに考え方の違いが書かれていたね。

F セキュリティも事情が違うようです。違法コピー製品が氾濫しているのをみても分かりますが,違法行為に対する感覚が日本人と違います。チャイナ人担当者に任せていたら,いつの間にか社内で違法コピー製品が使われていた。問いただすと,「安いから買ってきた」と答える。そんな人ばかりではないと思いますが,そうしたことが起こりうる,という認識は持っておかなくてはならないわけです。

Y 露骨なコピー製品を買う人はさすがに少ないだろうが,日本でも社内コピーはあるし,いくらダメだと言っても,パソコンにファイル転送ソフトをダウンロードする社員もいる。著作権に関する意識がすごく高いとは言えないのではないか。

F 確かに,どっちの国が上か,という議論にあまり意味はありませんね。とにかく現地の日本人担当者は皆さん,苦労なさっている様子でした。ただ,チャイナで取材をしたあるユーザー企業の担当者は,「ちょうど日本の20年前の状況に近い。あのころの充実した感じがして面白いですよ」と言っていました。海外ならではの大変さを楽しんでいる人もいるようです。

Y 無責任な物言いになってしまうが,そういう姿勢はとても大事だと思う。「大変だ」と言っていると,暗くなるし。日本企業のチャイナにおけるシステム開発は2008年もまだまだ続く話なのかな。

F これからも続くと思います。まず,中堅・中小企業もグローバル化を始めていますから,大企業だけが考えるべきことではなくなるでしょう。また,内部統制のからみもあって,「現地で勝手にやって」では済まなくなると思われます。

 すでに進出している企業も,チャイナにおけるビジネス規模が大きくなれば,それに見合ったシステム投資が必要になってくると思います。生産管理や財務会計だけでなく,CRM(顧客情報管理)とかBI(ビジネス・インテリジェンス)といった領域のシステムが日本並みに必要になってくるでしょう。

 今後企業のグローバル化が進むと,チャイナ以外の国でも,現地に合わせたシステム構築・運用が求められます。情報システム部門もグローバル化しなきゃいけない,ということかと思います。

Y 一方で,事業としては一体なわけだから,グローバルなビジネスの状況を把握する統合システムも必要になるだろう。分散と集中を両方やってのけるような取り組みになるわけで,大きなチャレンジだね。