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 先日の「記者の眼」で,企業がシステム開発や業務運用のリソースとして,海外から先端技術や人材を調達する「グローバル・ソーシング」について書きました(「中国とインドに試される日本企業の力」)。この記事の最後で,グローバル・ソーシングをテーマとする専門サイトを立ち上げるとお知らせしましたが,予定通り11月19日にオープンすることができました。アウトソーシング業務に関係している方に限らず,IT業界の大きな動きを眺めるつもりで一度ご覧いただければ幸いです。

 その後,サイトの内容や運営方針について何件かお問い合わせをいただいたのですが,グローバル・ソーシングに関連してITIL(運用管理の考え方や手法を体系化したベストプラクティス集)をベースとしたITサービスマネジメントの重要さに言及したこともあり,あるソフトウエア・ベンダーのマーケティング担当者とシステム運用管理について意見交換をさせていただく機会がありました。

 その方からシステム運用の現場の実態に関する話をお聞きしながら,唸ってしまいました。「多くの企業では今だに,運用は開発よりも一段低く見られています」。「運用担当者が開発担当者に新たな提案をしようとしても,なかなか動いてもらえません・・・」。

 これらは以前からIT業界の課題として指摘され続けてきたことであり,今さら驚くことではないのかもしれません。しかし,運用管理の現場を知り尽くし,そこでビジネスを行っている方から直接お聞きすると,この課題の重さ(というよりも深さ?)を改めて実感させられます。その方の話ぶりからも,自社のビジネスはさておき,こうした状況を何とか変えたいという思いが伝わってきました。

 「一般論として言えば」「以前に比べれば」といった注釈を付ければ,システム運用管理の重要さは徐々に認識されるようになってきたと思います。実際,ITILの普及促進団体「itSMF Japan」で中核的な役割を果たしてきたNECの山口真人氏によれば,「最近ではユーザー企業から『システム運用の責任者を面接したい』という要望をもらうことも増えてきました。運用こそがカギになる,といった発言さえ聞かれます」(「ITILをグローバル展開の共通言語に」)。

 その背景には,証券取引所や各種金融機関,航空会社の基幹業務のように,主要な事業のビジネスプロセスがシステムの運用と直結しているケースが増えていることや,それらの企業で起きた大規模なシステム・トラブルが経営に大きな打撃を与えていること,などがあるでしょう。

 しかし,こうした認識の変化が,多くの企業ではまだ一般論でとどまっていることこそ,問題の本質であり根深さなのかもしれません。言い換えれば,運用管理という業務の重要さを理解することと,その重要な業務を抜本的に改善して現場にインプリメントすることの間に,大きなギャップがあるのではないでしょうか。

 「業務を抜本的に改善して現場にインプリメント」というのは,単にサーバー監視の精度を高めるとか,障害対策を手厚くする,といった意味ではありません。ビジネスの遂行や継続という観点から,「システム運用管理」という業務のあるべきプロセスやサービス・レベルを設計し,そのために調達すべきリソースを計画し,それらに従って業務を確実に実行する,ということを意味しています。

 こうした「ITサービスマネジメント」は本来,システム開発のプロジェクトマネジメントと同等,あるいは,それ以上に,経営に大きな影響を及ぼすものです。当然ですが,その業務の遂行には,真にプロフェッショナルと言える人材が求められるはずです。

 以前の記者のつぶやきで触れたように,ITエンジニアに求められるスキルを体系化した「ITスキル標準」の職種定義で,「オペレーション」が「ITサービスマネジメント」に変更されるといった動きはあるものの,現場への定着はまだまだと言わざるを得ません。システム開発のプロジェクト・マネジャーと同様に,システム運用管理の分野でも早く「ITサービス・マネジャー」という職種が確立され,ITサービス・マネジメントのプロフェッショナルが人材として認知されなければならないのではないでしょうか。

 「運用担当者が開発担当者に新たな提案をしようとしても,なかなか動いてもらえません・・・」といった状況がある以上,現場から声を上げるだけでは限度があります。だとすれば,itSMF Japanに代表される組織的な取り組みに加え,システム運用がビジネスに直結する大手企業のCIO(最高情報責任者)の方々には,社内でITサービスマネジメントの“地位”を確立するためのリーダー役を期待したいところです。

 プロジェクト・マネジャーが「プロマネ」と呼ばれるように,ITサービス・マネジャーが「サビマネ」などと呼ばれるようになれば本物でしょう(語呂?は良くないですが)。決してふざけているわけではありません。そんな略語が使われるくらいに,この仕事が早く認知され,現場に定着してほしいものだと記者は考えます。