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CO2冷媒の圧縮と膨張で大気との温度差を生み出し、大気中の熱を取り込んで水を温めるエコキュート。電気を使った新しい給湯器として関心を集め、2007年9月に累計販売台数が100万台を突破した
CO2冷媒の圧縮と膨張で大気との温度差を生み出し、大気中の熱を取り込んで水を温めるエコキュート。電気を使った新しい給湯器として関心を集め、2007年9月に累計販売台数が100万台を突破した

 家庭用給湯器を巡るガスvs.電力の競争が激しくなってきた。台風の目は、電力陣営が力を入れるCO2を冷媒に使ったヒートポンプ給湯器「エコキュート」。オール電化への切り替えを促す切り札でもある。

 国際連合大学の安井至副学長は、「家を新築する際、以前なら給湯器はガス給湯器と相場が決まっていたが、エコキュートの登場で選択に迷う人も多かろう。家庭で消費するエネルギーの実に3分の1以上が給湯用。何を選べばいいか指針を示したい」と、今回のテーマに選んだ。

 1年前にエコキュートを導入した調査員Aは、使い勝手でまずまずの合格点を出した後、「従来型の給湯器の中で、環境性能に秀でているのは言うまでもない」と言う。

 調査員Aが指摘するのは、エコキュートのエネルギー利用効率の高さ。エコキュートは、電気でCO2冷媒を膨張・圧縮させながら大気の熱を取り込み、湯を沸かす仕組みだ。消費電力量当たりの加熱能力を示す「COP」は、最新のエコキュートなら4以上。1の電気を使って大気中から3以上の熱を奪い、合計4以上の熱で湯を沸かすという。

 ただ、電気は石炭などの燃料(1次エネルギー)を燃やして発電する時に熱を放出し、さらに、家庭への送電中も熱を放出するので、1次エネルギーの熱量のうち家庭で利用できる熱量は約40%とされる。つまり、エコキュートを使うと、1次エネルギーの約160%に相当する熱を、湯沸しに使うことになる。

 「ガス給湯器は、1次エネルギーであるガスを燃やして発生する熱で湯を沸かすが、一部の熱は大気中に逃げてしまうので1次エネルギーの熱量のうち湯沸しに使える熱は約80%。省エネ性は比べるまでもない」というのが調査員Aの主張だ。

現時点でエコキュートに軍配

 一方、調査員Cは「ガス側がエコキュートの対抗馬として売り込む家庭用コージェネレーション(熱電併給)システムも検討すべき」と話題を振った。ガス会社が普及に注力するのは、ガスエンジンで発電して排熱を給湯などに使う「エコウィル」。ガスエンジンの代わりに燃料電池を使った「ライフエル」も、一部の家庭で試験的な利用が始まっている。

 安井副学長は、「今回は給湯器に何を選ぶかがテーマ。風呂1回分に必要な1次エネルギー消費量を比較する。発電に使われる1次エネルギーは差し引こう」と作業を指示した。

 早速、パソコンを取り出し、表計算ソフトを立ち上げたのは調査員A。「まずは風呂に湯を満たすのに必要な熱量を導き出すのが第1ステップ。後は給湯器ごとに、性能を加味して1次エネルギーの消費量を算出する」と計算式を打ち込み始めた。

 計算では、10℃の水200ℓを42℃に温めて風呂1回分の湯を作るシナリオを想定した。この場合、必要な熱量は6400kcal。調査員たちは、電力会社やガス会社、機器メーカーの資料からデータを調べ上げて表計算ソフトに入力し、この熱を作るためにどれだけの1次エネルギーを消費するかをはじき出した(下図)。

図●各種給湯器で浴槽に湯を張るのに必要なエネルギーとコスト
図●各種給湯器で浴槽に湯を張るのに必要なエネルギーとコスト
10℃の水200ℓを42℃の湯にして給湯するケースを想定。「コスト」は電力またはガス料金で、電力価格を1kWh当たり25円、深夜電力価格を同10円とし、ガス価格を1m3当たり150円として試算した。この結果を見た安井副学長は「エコウィルとライフエルで発電した電力は、電力会社が買うべきだろう。そうすれば、両者のコスト差は縮まるのだが」と注文を付けた

 調査員Cは、「燃料電池を使うライフエルは開発途上の技術。ガス給湯器に代わる現実的な選択肢は、やはりエコキュートとエコウィルだろう」と寸評を加える。

                 
  安井至・主席調査員   安井至・主席調査員
国連大学副学長。LCAの視点で環境問題の常識・非常識を解き明かし、広く情報発信する
  調査員A   調査員A
さまざまな製品分野の生産技術に詳しく、LCA評価手法の向上にも熱心に取り組む
 
                 
  調査員B   調査員B
国内外のエネルギー政策を中心に、環境配慮の視点から経済活動のあり方を読み解く
  調査員C   調査員C
東大安井研究室のOG。LCAのインパクト分析が専門で、重金属や情報技術に精通する
 
                 
構成/建野友保 イラスト/斉藤よしのぶ