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 最近,「日経コミュニケーション」誌の仕事で世界主要都市の通信環境を調べていて驚いたことがある。W-CDMAの高速パケット通信規格である「HSDPA」(High Speed Downlink Packet Access)が急速に広まっているのである。

 HSDPAはNTTドコモの「FOMAハイスピード」やソフトバンクモバイルの「3Gハイスピード」,そしてイー・モバイルのサービスが採用する移動体通信技術で,仕様上の通信速度は下り最大14.4Mビット/秒。もっとも,各社とも実際のサービスでは下り最大3.6M~7.2Mビット/秒に抑えている。いずれにせよ,先進的な技術であることに変わりはない。

 この1年ほど,海外の通信事情をしっかりとウォッチしていなかったこともあり,HSDPAの商用サービスが存在するのは,移動体通信の先進エリアである日本と韓国と香港,そしてヨーロッパの主要都市くらいだろうと思い込んでいた。しかし,調べてみると,実に多くの国でHSDPAが提供されていることが分かった。

 業界団体のGSM AssociationのWebサイトを見れば,その詳細を閲覧できる。

 同サイトによると,現時点では70カ国に144の商用HSDPAサービスが存在する。いずれも2006年以降のサービス開始だ。計画中・敷設中を含めると94カ国213サービスに及ぶ。かつて「日本以外ではW-CDMAの普及が遅れている。だから,日本製のW-CDMA機器が売れない」と嘆かれていた。だがHSDPAに関しては,元々W-CDMA陣営が弱い北米でこそサービス数が少ないものの(北米でHSDPAを提供するのは現在2事業者のみ),世界各国でほぼ同時にサービスがスタートしたと言ってよい。調査会社のワイヤレス・インテリジェンスは2008年末までにHSDPAのユーザーは世界で4000万と予測する。

 ちなみに,サービスが提供されている70カ国には,先進国ではない国も含まれる。電話線や光ファイバといった固定通信のインフラ整備が遅れている国は,インフラ敷設が低コストで済む無線通信に積極的である。HSDPAではないが,モンゴルではWiMAXのサービスが始まっている。

 GSM AssociationのWebサイトを見ると,どのようなHSDPA端末が販売されているかも分かる。HSDPA関連の機器は401個だが,携帯電話端末/スマートフォン/PDAに絞ると175機種。このうちメーカー別では,韓国サムスン電子が46機種で圧倒的に多く,以下,台湾HTCの22機種,韓国LG電子の17機種(NTTドコモ・ブランドの「L705iX」を含む)と続く。

 日本メーカーのHSDPA端末は,NECや富士通などが開発したドコモ・ブランドの製品やシャープの「EM・ONE」などを合わせると26機種(L705iX除く)。さらに,“半分”日本メーカーであるソニー・エリクソンの8機種(ドコモ・ブランドの製品除く)もある。この数字は決して少なくない。

 HSDPAが世界的に普及しつつある状況は,携帯電話の世界シェア低迷に悩む日本メーカーにとって,チャンスが訪れていることを意味するのではないだろうか。国内市場に近いハイエンドのHSDPA携帯電話市場が拡大していることは,ハイエンド端末を得意とする日本メーカーに有利だ。

 しかも,先日発売されたドコモの「905iシリーズ」のように,最近は国内の多くの端末が国際ローミングのためにGSMを搭載している。GSMとHSDPAのデュアル端末であれば,ある程度の改変は必要だとしても,国内販売用の製品を海外向けに転用しやすいだろう。

 世界の携帯電話市場はハイエンド化している。こうした中で,日本の携帯電話メーカーが世界市場で再びシェアを拡大させることを願っている。