PR

体制図上,PMOに対する直接の指揮・命令権限はプロジェクトマネジャにある。とはいえ,PMOはプロジェクトマネジャに絶対服従してしまってもよいのだろうか。ときにプロジェクトマネジャが機能不全に陥ることもある。そんな時,プロジェクトマネジャをいさめ,プロジェクトマネジャに逆らってでも上位組織に「助けてくれ!」と直訴できるのはPMOしかいない。

後藤 年成
マネジメントソリューションズ マネージャー


 体制図から考えるとPMOに対する指揮・命令権限はプロジェクトマネジャが持っています。ですから,PMOはプロジェクトマネジャの方針に従うべき組織です。普段,プロジェクトに何か問題が発生した場合は,プロジェクトマネジャはPMOと共にいろいろな対策を実施します。対策に実現性があり,根本的な原因に対処できているうちは,これでよいでしょう。

 しかし,プロジェクトが危なくなると,次々に現れる問題にその都度対応するといった“モグラ叩き”のような状況になります。そして,モグラ(問題)の数が増えると,プロジェクトをゴールに導くことよりも,モグラを叩くことばかりに目を奪われがちです。さらにモグラが増えて,プロジェクトマネジャ,PMOが制御不能に陥ると,プロジェクトの危機が一気に表面化します。

 ここでPMOは,プロジェクトマネジャの命令だからといって,いつまでもモグラ叩きをしていてもよいのでしょうか。問題や課題を制御できなかったことに関しては,PMOにも責任の一端があります。しかし,その半面,PMOはプロジェクトとプロジェクトマネジャの状況を,冷静な目で判断しなければなりません。

プロジェクトマネジャから「助けてくれ!」とは言い出せない

 皆さんも経験があると思いますが,立場や役職が上がれば上がるほど,ほかの人に助けを求めにくくなります。プロジェクトマネジャともなれば,経験もそれなりに積んできて,プライドもあります。ましてや,自分の評価にもかかわってくるので,プロジェクトマネジャから「助けてくれ!」とはなかなか言い出せません。やっと「助けてくれ!」と言った頃には,すでに時遅し。悲惨な状況になっているケースも多いでしょう。

 PMOはプロジェクトマネジャをサポートする組織ではありますが,プロジェクトが危機に陥ったら,プロジェクトマネジャに代わって「助けてくれ!」と大声で叫ぶ勇気が必要です。プロジェクトマネジャの立場から見ると,PMOに裏切られたように見えるかもしれません。しかし,この勇気は後にプロジェクトマネジャだけでなく,プロジェクト関係者全員を助けることになるのです。

プロジェクトマネジャの暴走を食い止める

 それでは,PMOとして,プロジェクトマネジャの危険信号をどのように見極めればよいでしょうか。筆者の経験上,次の兆候のうち複数があてはまるようだったら要注意です。

(1)プロジェクトメンバーがプロマネの指示に納得していない
(2)指揮系統を無視して,末端の担当者にプロマネが直接指示する
(3)顧客との関係が悪化している
(4)メンバーからプロマネへの不平不満や悪口が噴出している
(5)協力会社に対して無理難題を押し付けている
(6)プロマネが何をしているのか,メンバーが分かっていない
(7)プロマネ一人だけが何日も深夜残業や徹夜をしている

 これらは,プロジェクトマネジャがなんとかプロジェクトを回復させようとして対策を打つものの,周りが見えなくなっていることを示す兆候です。前述したように,プロジェクトマネジャの内面的な問題により,視野が狭くなってしまうと起こります。放置すれば,メンバーのモチベーションの低下やプロジェクトの混乱を招くことは,容易に想像できると思います。

 一方で,プロジェクトの予算超過や品質悪化,スケジュール遅延についても,悪い兆候として見極めるべきだという意見もあるでしょう。当然,これらの事実にも常に目を向けて,随時対策を実施していかなければなりません。

 ただし,それらはプロジェクトが傾いた「結果」の状態です。これらの問題が起こる前に手を打てるなら,それに越したことはありません。早期に手を打つには,プロジェクトマネジャの危険信号を見逃さないことです。

緊急時のホットラインがプロジェクトを救う

 プロジェクトマネジャをサポートする組織としては,プロジェクトマネジャの上位管理者である「プロジェクト責任者」や,「プロジェクト管理室」などと呼ばれる横断的な組織(プログラム・マネジメント・オフィス)を設置している会社もあるでしょう。さて,ここであなたに質問します。もし,プロジェクトマネジャが機能不全に陥ってしまったとしたら,PMOであるあなたは何をすべきでしょうか?

 答えはお分かりですね。PMOの役割は,プロジェクトマネジャに代わって,迅速に上位サポート組織へ助けを求めることです。そのためには,普段から,上位サポート組織へのホットラインを確保しておくことが重要になります。間違っても,「プロジェクトマネジャの代わりに,PMOだけで何とかしてやろう」などと考えないように。


後藤 年成(ごとう としなり)

  大学卒業後,ニッセイコンピュータ(現ニッセイ情報テクノロジー)に入社。システム・エンジニアとしてホスト系からオープン系にいたる幅広いシステム開発を経験した後,2002年から野村総合研究所にてプロジェクトマネジメントに携わる。2007年,マネジメントソリューションズに入社。「知恵作りのマネジメント」を支援するPMOソリューションの開発や各種プロジェクトでPMO業務に従事している。連絡先は info@mgmtsol.co.jp