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 総合重機・プラント大手のIHIは12月14日,2007年9月の中間決算で連結営業損益が544億1900万円の赤字になると発表した。あわせて,2006年9月中間期と2007年3月期の決算内容についても,さかのぼって下方修正した。この結果,12月19日現在,IHIの株式銘柄は上場廃止の検討対象となる「監理ポスト」に移されている。

 IHIはすでに9月末の時点で,2008年3月期の業績が当初予想を500億円超下回り,170億円の赤字を出すと発表していた。14日の発表では,9月発表からさらなる下方修正となったわけだ。

公開資料から予想できた下方修正

 ITproで公認会計士の高田直芳さんに執筆をお願いしている「ITを経営に役立てるコスト管理入門」では,IHIの9月発表を受けて,過去に発表されたIHIの有価証券報告書から,「戦略なき会計」というタイトルで2回に分けて下方修正の原因を類推している。前編が「予測されたIHIの蹉跌」,後編が「身の丈を超えた受注至上主義の先にあるもの」である。

 前編は,回帰分析を使ってIHIの過去数年分のコストを固定費と変動費に分割。その上で,当初の予想通りに売上高が伸びるのであれば,その分,変動費も増えるはずであり,それを考えると,業績予想の営業利益がそもそも大きすぎることを論じている。

 後編は,IHIと近い業種である川崎重工業と比較しながら,IHIの財務内容を論じている。その中では,両社の2007年3月期決算を四半期ごとに展開している。一見して明らかなのは,IHIの売上高や営業利益が第4四半期に集中していることだ。

 IHIでは2007年3月決算の会計年度において売上高の37.5%,営業利益にいたっては何と84.6%を第4四半期に計上している(ちなみに川崎重工業は,2007会計年度の営業利益の35.5%を第4四半期に計上している)。決算前の駆け込み計上は,どこの企業でも見られる現象かも知れないが,それにしても営業利益の84.6%が第4四半期に集中するというのは,いかにも不自然だ。ましてやIHIが手がけるプラント事業では,工事の進捗状況に合わせて売上を計上する「進行基準」がすでに採用されている。第4四半期だけ工事の進捗が効率化がするわけはないだろう。

 この決算数字からは,IHIは内部のリソースを省みず案件を受注してしまい,その結果,売上原価である人件費や資材費が膨らみやすい体質にあることが予想される。

 12月14日付の日本経済新聞サイト「IHI,プラント不振で最終赤字372億円・9月中間」によると,IHIの赤字の主な原因はプラント事業にあったようだ。同記事には「プラント事業では,海外のセメントプラント案件で工事の欠陥や工期の遅延が発生。人材不足やコスト増につながり,他の海外案件,国内ボイラー工事などに混乱が波及した」とある。だが,コスト増の原因となった「工事の欠陥や工事の遅延」は,そもそも内部リソースを省みずに案件を受注したために発生したと考えられる。

 IHIほど巨額ではなくても,「プロジェクトの遅延」による業績の下方修正はIT業界でも,よく見かけられる。2009年4月以降は受託ソフトウエア開発の売上計上にも「進行基準」が採用される。そうなればIT業界でも,“受注至上主義”による業績下ぶれリスクの大きさを,有価証券報告書でチェックできるようになるはずだ。