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 テレパソロジー(遠隔病理診断)とは,tele(遠隔)とpathology(病理学)を組み合わせた言葉。地理的に離れた拠点間で,臓器や細胞の顕微鏡画像をネットワークを使って伝送し,医療や教育,研究を行うことである。そのための技術やシステムを指す場合もある。

 この技術やシステムが必要とされる背景にあるのが病理医の慢性的な不足だ。患者から摘出した組織や細胞から病気を診断したり,腫瘍が悪性か良性かなどを判断する病理医には,高い専門性が求められる。半面,病理医が存在するのは大学の付属病院や地域の大病院に限られ,規模の小さな病院には病理医がいない場合がほとんどだという。

手術中の遠隔病理診断が可能に

 従来の病理診断は,患者から採取した検体を物理的に病理医に送付する必要があったため,タイムラグが発生していた。送り元の病院には診断結果を得られるまでに時間がかかり,病理医側には検体が届くまでの待ち時間などで業務が長時間化するといった弊害が出ていた。

 テレパソロジーは,物理的に検体をやり取りするのではなく,顕微鏡などで拡大した検体の画像をネットワークを使って伝送する。そのため,タイムラグが発生しない。テレパソロジーを活用することで,病理医を取り巻く多くの課題を解消できる(図1)。患者の手術中に,遠隔地の病理医がリアルタイムで病理診断を下せる迅速診断のシステムも実用化されている。

図1●通常の病理診断の課題を解消するテレパソロジー
図1●通常の病理診断の課題を解消するテレパソロジー
テレパソロジーでは検体を物理的に送付する必要がない。患者がいる病院と病理医の間で画像情報をリアルタイムでやり取りし,病理医が診断を下すまでの時間を短縮する。
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 長年にわたりテレパソロジーの実用化に奔走してきた岩手医科大学医学部病理学第一講座の澤井高志教授は「がんを取り除く手術などでは,どこまで臓器を切除するのかが重要。テレパソロジーによって病理医が手術中に診断することで,その部位にがんが残っているかどうかをリアルタイムで判断できる。患者への負担は確実に減らせる」とメリットを強調する。

 テレパソロジーは,複数の病理医に意見を聞くセカンド・オピニオンとしての使い方も可能だ。「セカンド・オピニオンの浸透によって病理医全体のスキルが向上し,医療の平準化につながる」と澤井教授は語る。患者にとっては,より正確な診断を受けられるというメリットにつながる。