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 ピーター・ドラッカーの本を初めて読んだのは今から5年前、2002年12月のことであった。人から薦められて『プロフェッショナルの条件』を買いに書店へ行ったが、あいにく店頭には無く、その代わりに当時の新作であった『ネクスト・ソサエティ』を買って帰った。包装紙の裏に書いたメモを見ると、2002年12月28日夜読了となっている。

 読了当時は大変感銘を受け、「ネクスト・ソサエティを読む」という短文の連載をWebで始めたほどであった。当時は長年在籍した日経コンピュータ編集部を離れた直後で、ITについてまだ関心があり、『ネクスト・ソサエティ』の中でITに関連する箇所を引用して、感想めいたことを記していった。一連の短文は本サイトの「ドラッカーのIT経営論」の中に再掲してある。

 その後、技術経営誌「日経ビズテック」の開発に参画したため、関心事はITというより、経営と技術の関わりへと移った。並行して、ドラッカーの著書を処女作から読む試みを続けたところ、『産業人の未来』や『企業とは何か』、そして最も有名な『現代の経営』など、初期作品群がはるかに面白いことが分かった。こうした経緯から、『ネクスト・ソサエティ』を手にとる機会は減ってしまった。

 ところが、ある理由から『ネクスト・ソサエティ』を2007年12月4日から11日にかけて再読した。丁度5年ぶりで、面白いと思う箇所が変わっており、改めて感想文めいたものを書こうと思い立った。「ネクスト・ソサエティを読む」の続編のつもりである。

 再読したのは、2008年3月に発行する日経コンピュータ第700号の編集を担当することになり、その“種本”として『ネクスト・ソサエティ』を使おうと思いついたからだ。日経コンピュータはITの総合誌であるが、700号ではあえてITから出発せず、「社会」からITを眺めようとしている。社会との関わり抜きに企業経営を語れないように、ITの利活用も社会との関わりが大前提にある。700号の目標は「経営者やビジネスパーソンがそのまま読める日経コンピュータ」である。

 700号のキャッチコピーも考えた。New Contents for Next soCiety produced by Nikkei Computerである。これを略して、「NCの三乗」と表記したいが、ワープロでどう入力するのかが分からない。

 「社会のためのIT」と書くと尤もらしいが、正直に言うと、ITについてあれこれ書いたり、関連記事を編集することにはすっかり飽きており、折角の700号であるから、今までと違うことをやろうと思ったのである。キャッチコピーの中の「新しい編集内容」という所に一番力を入れたい。

 本音を書くことを続けると、新しいコンテンツとして、「新しい挑戦」あるいは「what」を盛り込みたい。要するに、「こういう新しいことに取り組みたい、そのためにITが使えるのではないか」「ITでこんなことができる」と言った前向きな話を書きたい。不遜な物言いだが、あるべき論やハウツーにはもういいのではないかと思っている。

 『ネクスト・ソサエティ』の巻頭に置かれた「日本の読者へ」の中でドラッカーは次のように書いている。


本書は、いかなる国のリーダー、組織の幹部、政治家、公僕、学者、メディアに対しても、何を行うべきかを言おうとするものではない。それらの方々が、何が問題であり、何が脅威であり、何がチャンスであるかを知るうえでお役に立とうとするものである。同じように、若い方々、キャリアの第一歩を踏み出したばかりの方々といま勉強中の方々が、これから生き、働き、活躍し、貢献していくことになる社会を理解するうえで助けになろうとするものである。


 「何を行うべきか」は人から言われるものではなく自分で考えるものだ。当たり前だが難しい。日経コンピュータ700号も、本サイト「経営とIT新潮流」も、自分で考える挑戦をする方々への一助となることを目標に作っていきたい。

(谷島 宣之=経営とITサイト編集長、ドラッカーのIT経営論研究グループ)