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 11月9日に行われたNTTグループの2008年3月期中間決算発表。その場でNTT持ち株会社の三浦惺社長は「現実的に需要予測を行った結果,2010年度にFTTH2000万ユーザーを努力目標とすることにした」と述べた。あっさりとした一言だったが,光アクセス加入者数の,実質的な下方修正宣言である。

 加えてNTT持ち株会社は,グループで構築中のNGN(次世代ネットワーク)を「フレッツ網」と主張。2008年3月の商用化を前に,中期経営戦略の大きな見直しを打ち出した。

 「大きく打ち上げすぎた構想を,現実路線へ引き戻す」──。NTT持ち株会社の方向転換にはこういう意味がある。その結果,2010年に向かうNTTグループを取り巻く不安が強まった形だ。

構想段階を終え顕在化する三つの不安

 不安の種は,大きく三つある。(1)次世代の新インフラとアピールし続けてきたNGNの位置付けが揺れていること,(2)NGN構築を担当するNTT東西のうち,NTT西日本の事業環境が悪化していること,(3)中期経営戦略のビジョンそのものが根底から崩れつつあること──である。

 まず,NTTが「電話の信頼性とインターネットの柔軟性を“いいとこ取り”したインフラ」とアピールしてきたNGNは,実際のサービス提供に当たって,既存のフレッツ網にプラスアルファしたものに位置付けられてしまった。多額の投資を必要とするにもかかわらず,当初のサービスは現行のフレッツと同様で,料金もほぼ同じになる。NGNによって提供するQoS機能が,新たな収益源に化けるのかは未知数だ。両者の違いが分かりにくければ,ユーザーにアピールしにくく,フレッツ網からNGNへの移行も進めにくい。

 しかも,NTT東日本とともに当初のNGNを構築するNTT西日本を取り巻く状況は厳しいものとなっている。NGNではこれまでのフレッツと異なり,NTT東西のサービス名称や仕様を合わせる方針である。ところが,東西の市場環境や財務環境,保有しているネットワークの数などがあまりにも違いすぎるため,「NTT西日本がNGNの展開で,東日本のペースに付いて行けなくなるのではないか」という懸念が,NTTグループ内からも聞こえてくる。

新しいNTT像が見えにくい

 さらに問題なのは,中期経営戦略のビジョンが崩れかかっていることである。

 中期経営戦略の本質は,メタル線から光,交換機網からIP網へとインフラを高度化させ,NGNと光回線を活用したサービスを提供していくところにある。これらにより収益拡大と利益成長路線を作り,新時代のNTT像を確立する狙いだった。

 しかし,NGNをフレッツの後継に位置付けたことや光回線の下方修正で,新時代のNTT像は視野に入りにくくなっている。既存フレッツ網からNGNへの移行が終了する時期が見えないばかりか,加入電話網を乗せ換える見通しも不透明だ。光アクセスを敷設した後の収益構造もいまだ描けない。

 以下ではこれら“不安”の中身を詳細に見ていこう。