PR

 情報通信審議会が2007年12月18日に開催した「地上デジタル放送推進に関する検討委員会」の議論の中で,地上放送のデジタル化で新たに発生する難視聴地域を対象にした「セーフティネット」の基本方針案が示された。2007年8月に公表した同審議会の第4次中間答申の提言を受けて,全国地上デジタル放送推進協議会(全国協議会)が検討してきたもので,関東広域圏のNHKの2チャンネル(総合テレビと教育テレビ)と民放キー局の5チャンネルの合計7チャンネルを,放送衛星(BS)で再送信する内容だ。画質はSDTV(標準画質テレビ)で,データ放送は提供しない。マルチ編成で放送している場合は,メインチャンネルを再送信する。

 今回全国協議会が示した基本方針案ではセーフティネットを,ケーブルテレビ(CATV)やIP再送信といったほかの補完措置で難視聴を解消できない場合の暫定的,緊急避難的な措置と位置付け,実施期間や利用対象者に厳しい制限を設けた。関東地域向けに制作された在京キー局の番組をBSで再送信して全国の誰もが視聴できてしまうと,放送エリアを都道府県に制限している地上波放送の「県域免許制」との矛盾が生じるためだ。そこで,セーフティネットの対象となる視聴者だけの特別措置として再送信番組を視聴できるようにすることで,県域免許制と整合性をとっているのである。

 基本方針案では,セーフティネットを2009年度中に開始し,運用期間は5年間を基本とした。総務省は,2011年7月のアナログ放送の終了時点でアナログ放送を見ることができていたのにデジタル放送が受信できない世帯が最大で30万~60万世帯になると予測している。対象となる難視聴世帯は,セーフティネットを利用しながら,その運用が停止するまでに地上系のインフラに切り替えることになる。

 セーフティネットはBSの第17チャンネルを使って実施する計画で,受信には市販のBSデジタル放送対応機器を利用する。ただし,番組にはスクランブルがかけられており,難視聴地域の登録ユーザーだけがスクランブルを解除して番組を視聴できる。しかも,セーフティネットの登録ユーザーであってもスクランブルを解除できるのは,その地域で地上デジタル放送の番組を見られなくなったチャンネルの系列となる在京局に限られる。セーフティネットの運用に当たっては,各地域の放送事業者で作る地域協議会があらかじめ,どの地域でどのチャンネルが見られなくなったかのリスト(ホワイトリスト)を作成する。このリストを基に,利用希望申請の受理や,利用者ごとにどのチャンネルのスクランブルを解除するかを決定する。

 こうした基本方針案に対して情通審の検討委員会では,消費者団体の代表や地方公共団体の代表から,視聴者や自治体にセーフティネット運用経費を転嫁しないように要望が出された。情通審の検討委員会は今後,セーフティネットの実施主体や視聴者負担の在り方を含めた経費負担の方法について検討を行い,2008年6月には具体的なアクションプランを作成する予定である。