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 NTT東西地域会社は2008年1月9日,他の事業者が両社から光ファイバーを借りるときに支払う「加入者系光ファイバー接続料金」の値下げを総務相に申請した。現行の1芯当たりの月額5074円をNTT東日本は月額4713円に,NTT西日本は月額5048円に引き下げるという内容で,総務相の認可を得ることができれば,4月1日より3年間適用する予定である。また今回の申請には,加入者系光ファイバーのコストが当初の見込みよりずれた場合に,その差額を事後に清算する「キャリーオーバー制度」の導入も盛り込まれている。同日にNTT東日本が開催した記者発表で同社の渡邊大樹取締役は,「これまで実際にかかったコストと接続料に大きなかい離があり,他社に回線を貸し出すほど損失が増える現状を改善するため」と,キャリーオーバー制度導入の理由を説明した。しかし肝心のコストの算出方法が明らかになっておらず,出席した記者からキャリーオーバー制度の妥当性に関する質問が相次いだ。

 現行の加入者系光ファイバー接続料(月額5074円)は,NTT東西が「フレッツ光」サービスを始める前の2000年12月に,両社を合わせた加入者系光ファイバー1芯当たりのコストが2001年度の月額1万9421円から2007年度には月額2647円まで低下するという,7年間のコスト予測に基づいて決められた。ところがNTT東西によると,コストの実績値は2001年度こそ1万9585円と予測に近かったものの,その後の下がり方が緩やかで,2007年度にようやく月額7659円になる見込みであるという。この値は当初の予測より月額5000円近くも高く,さらに現行の接続料である月額5074円よりも高い。その結果,これまで加入者系光ファイバーを他の事業者に貸し出すほどNTT東西のコスト負担が大きくなる状態が続いている。今後こうした状態を是正するために,実際のコストとの差額を事後清算で解消するというのがキャリーオーバー制度の趣旨である。NTT東西の案には,仮にコストが予測よりも早く下がりNTT東西に差益が発生した場合は,接続先事業者に対して事後清算で差益分を還元するという内容も含まれている。

 光ファイバーの運用にかかるコストを,回線を利用するNTT東西と他の接続事業者の間で公平に分担するという考え方そのものは,借りる側の事業者も受け入れやすいだろう。ただしその手段として事後清算を行うという点については,借りる側からは事前に清算額が予測できないため事業計画を立てづらく,難色を示す可能性がある。

 記者会見でもコストの算出方法について質問があったが,NTT東日本は「キャリーオーバー制度が承認され,実際に他の事業者と交渉する際に開示する」として制度導入前の公開を否定した。しかしこれでは,キャリーオーバー制度導入の根拠である「加入者系光ファイバーのコストが予測より高い」という主張がどの程度妥当なのか外部からは判断できず,他の事業者による強い反発が予想される。

 また,光ファイバーのコスト計算に関連してもう一つ記者から質問が集中したのが,設備投資の償却の考え方についてだ。今回の値下げに当たり,NTT東西はその原資として光ファイバーの耐用年数をこれまでの税法上の耐用年数である10年から,使用実態を踏まえた13年~21年(敷設方式によって異なる)まで延ばすことで浮く償却費を盛り込んでいる。今回の接続料の値下げ案では,NTT東日本が年間約14億円の減収になる一方,償却方法の見直しで年間約100億円の費用削減効果があるという。NTT西日本の場合は年間約5000万円の減収になる一方,償却費は年間約60億円圧縮され,償却方法の変更によるコストへの影響が非常に大きい。

 仮にこれまでの7年間に対しても13年~21年という設備投資の償却期間を適用した場合,光ファイバーの実績コストはこれまでの計算よりも低下し,当初の予測値により近い値になると考えられる。この結果,当初の予測値との差が許容できるほど小さい場合,キャリーオーバー制度を導入する前提が崩れる可能性がある。この点についてNTT東西は,「償却方法を見直すに足りる合理的なデータが不足している」(NTT東日本),「過去の財務会計をやり直すことになり困難」(NTT西日本)と答えた。

 今回のNTT東西の申請内容は2008年1月の情報通信審議会に諮問され,3月に答申が出る見通しである。